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第185話 帝都からの返信について


「どう? 連絡は来たかしら」

「はい。私宛てにクラウジウス公爵様から状況確認のメールが頂きました。それとホロメッセージでミチェイエル様から連絡を寄越すようにと」

「クラウスね。相も変わらず慎重ね。メールだけでは信用できなかったかしら。ホロメッセージを寄越せと言うことは、こちらの居場所を特定させるためね。小賢しいことをするわ。それで内容は?」

「ベルンハルド少将の艦隊を派遣してくれるそうです」

「彼ですか。そうね、彼なら安心ね。では、集合宙域をメールで教えてあげて。くれぐれも一度では来ないように。時間をずらして少しづつ集まるようにと。できれば途中で見つからないように来て貰えると助かるのだけど、無理かしら?」

「小型船と違い戦艦ですから、それは無理かと」

「そうなると時間との勝負になるかしらね。発見されて、ドラギニス軍が戻って来るまでに惑星を奪還させないといけないわね。休む暇なしで作戦開始かしら。作戦は革命軍で用意しますので、そのように伝えて下さい」

「わかりました。そのように返信しておきます」

「それと、こちらからも向かいの船を出しましょう」

「ウリウスを出すのですか?」

「状況がわかる人が居た方が良いでしょ? それと例のAIから、この惑星に居ない方が良いと進言されたので、出すことにしました」

「居ない方が良い?」


私は頷いた。


「理由は教えてくれなかったけど、この惑星に居ると迷惑が掛かるそうですよ」

「はぁ、言っている意味がわかりませんが」

「私もわからないわよ。でも、AIがそう言うのであればそうなんでしょう。信じるしかないわね」


AIの考えていること何てわかるわけないでしょ。

我々と思考が全然違うのですから。


「それよりも彼らはどうしているの? もう惑星に下りているわよね?」


彼らとはダブニース号のこと。

あれから6日も経っているのですから、何かしら行動を起こしているはず。

私のことを知られるわけにはいかないので、姿を隠し、あれから基地からは一歩も出ていない。姿を隠すなら基地の方が安全だし、簡単に誰でも入れるような場所ではないからね。

直ぐに見つかることはないでしょう。


「近くの基地に下りた後は、船をそこに預け、惑星内を観光しなからが歩き回っています。誰かを探しているとか、そういった素振りは見せていません」

「監視は付けているのね。それで、何しに来たのかは聞いたのかしら?」

「はい。一応、観光という名目にしていますね。ミチェイエル様の名前は出されていません」

「まあ、そうでしょうね。あからさまに人捜しなどしていては怪しまれますし、私のことが他の人に知られてしまいます。慎重に調べるでしょう。この後は、革命軍についても調べると思うので、私の身代わりでも用意しておいて下さい。いざという時は、その人が私に成り済まして会えば疑いも晴れるでしょうから。私のことを知っている彼らなら、ミチェイエルが私だとすぐに感づくと思いますので」


私の性格を知っていれば、リーダーが私だと気が付くでしょう。そういうのが好きだと知っているから。だからこちらから偽の情報を流し、時間を稼ぐしかない。

この戦争が終わるまで帰るわけには行きませんので。

これからが面白くなるのですから。


「しかし、観光ね……フフフ、そんな嘘、通用するわけないのね」


渡航制限が掛かっている星系なのに観光は無理な話。

もう少し怪しまれないような理由を考えてこないと駄目よ。

嘘だと直ぐにバレちゃうから。


「報告の方はどうしましょう? 公爵様はミチェール様から貰いたいようなことを言っていましたが」


ミチェールとは私、皇太后としての名前。ミチェイエルは私が用意した偽の身分証の名前。皇太后の名で活動するわけにはいかないので偽の身分証を用意させた。

もちろん経歴も本物らしく偽装した。調べられてもすぐにボロが出ない程度には。


「もちろん、連絡はしないわ。今まで隠してきたことが無になるし。いい? ここにミチェールという人物はいなかった。それが全てよ。ミチェールという名前で送られてきた物は全て無視して。決して私の本名は出さないように」

「ですが、ミチェール様の名前で帝国軍の要請をしましたが」

「でも、私が革命軍に居ることは教えていないわよね? それなら問題ないわ。私が最初から関与していることが知られるのが問題なの。本来であれば内政干渉にあたるから」


皇族が内戦に参加することは内政干渉に当たる。だから私は居ないことにしなければならない。


「軍の派遣はよろしいのですか?」

「それは、この惑星がドラギニス軍に侵略された後の話。帝国領から離れたことになったから軍が出せるのよ。その前は駄目。ベルカジーニ伯爵の物だから」

「そうなると、彼らに見つかると面倒ですね」

「それは違うわ。彼らに見つかる分には問題ないのよ。連れ帰されるだけだから。問題は、私がここに居たことが他の貴族に知られること。そっちの方が問題なのよ。後で陛下にクレームが行くわ。そうなると貴族派の連中が五月蠅いだけ。だから内緒にしておく必要があるのよ」


貴族派は我々皇族を必要としていない。というか、私たちは邪魔な存在。

理由は簡単。皇帝陛下がいなくなれば好き勝手なことができるから。

こういった不祥事は、中立派を貴族派に引き込む切っ掛けになり、国が乱れる発端にも繋がる。

なので本来は関わってはいけないのですが、今回の場合は仕方がないわ。

私も巻き込まれたようなものだから。

関わるつもりはなかったのですけどね。あの事件がなければ……。


「それなら少しは大人しくされていたらどうですか? 迷惑を掛けているという自覚があるのでしたら」

「あら? 私に説教? グランバーも偉くなったね。私に意見が言えるなんて」

「そんなことはありません。恐らくですが、皆様が思っていることを代弁しただけですから」


真面目な顔をして宰相と同じことを言う。

これだから頭が固い人は。

私が関わったおかげで今までやってこられたのよ。逆に褒めても良いと思うけどね。


「フフフ、冗談ですよ。それとベルンハルド少将とは会ったことはあるわよね?」

「はい。向こうで待機しているときに会いました。その時にこの惑星が落ちたと教えて貰いました」

「それなら顔見せは必要ないわね。あなたがウリウスで迎えに行くように」

「彼を連れてですか?」

「そうね、そうなると思うわ。彼の言うことしか聞かないし。でも、それは関係ないような気がするけど……」


なぜか建前のような気がするのよね。好き勝手にやっている気がするし、とても彼の許可を取っているようには見えない。

惑星に居ない方が良いという話だって、彼は知らないと思うわ。

やれやれね、また彼を呼んで説明しないといけないのかしら。

今度はどんな手を使って彼を行かせるのか。

もう、こちらとしては残っている手がないのよね……。


「近いうちに彼を呼ぶわ。その時はよろしくね。エミリーやロズルトは使えないから。町中を歩かれて探しに来ている彼らと遭遇なんて洒落にもならないし。あなたに動いて貰うわよ」

「それは構わないですが……」


何か言いたそうな顔して、溜息をついていた。


「何か不満そうですね」

「いや、まぁ……いつまで彼に頼るのか。我々だけでも良いのではないかと思いまして」

「できればそれでも良いですよ。ですが迎えに行く宇宙船はどうします? 彼なしで動かせますか? 数が少ないとはいえ、外で星系軍が待ち構えていると思います。それを突破し、迎えに行くことはできますか? 他の船でできるのであれば、私からは何も言いません」

「む……」


今の革命軍に星系軍と戦う船はない。ウリウス以外は。

なので使うしかないのですが、彼が乗っていなければ命令を聞くことはないでしょう。

それに、勝手に暴れ回れても困る。そういう意味で、彼は必要。最低限の言うことは聞くと思うし。

グランパーはムスッとしているが、ロズルトといい、AIというのがどうしても信じられないようね。

私も信用はしていないけど、その代わり人とは違い裏切るようなことはないので、付き合いやすさはあるわ。

AIの利点は嘘をつけないこと。

こちらの質問には答えないが、騙すようなことはしない。その点では信用できるとも言える。使い方を間違わなければね。


「わかったなら連絡をお願いね。後は到着予定時間も教えて貰うと助かる旨を伝えて。ウリウスで向かいに行かせるからと」

「わかりました」


納得いかない顔で返事をしているグランバーを見て、私は小さな溜息を吐いた。


「時には嫌な者でも使わないといけない。あなたも上に立ったことがあれば、そういう人は居たでしょう? 優秀だけど性格に問題がある人とか。そういうのを上手く使って戦うのがトップの務めです。あなたも彼らを上手く使うことです。感情を抜きにして。悪いことだけではないわ」


諭すように言って優しく微笑む。

決して頭が悪いわけではない。ただ、信用できない者を近くに置いておきたくないだけ。

部下を預かる身としては当然の反応。だから強くは責められない。


「わかりました。努力します」

「フフフ、別に友達になりなさいと言っているわけではないのよ。使える物は使いなさい。ただ、それだけよ。いい?」

「はい」


ばつが悪そうな顔して頷いていた。

彼もわかっているはず。そんなことは言われなくても。

だからそれ以上は言わなかった。


「艦隊が来ればこの戦争も終わります。もう少しの辛抱です。焦らずに安全にやりましょう。誰も失うことがないようにね」


グランバーは頷いてから部屋を出て行った。



彼が部屋を出て行くと私は溜息を吐いた。もう少し頭が柔らかければと。

確かにあのAIを信用しろとは言わない。しかし、現状では使わざる得ない。あれに替われる物はないのだから。

それならそれで上手く使えば良いだけの話。方法はいくらでもあるのだから難しく考える必要はない。彼という弱点もあることだし。


「フフフ、彼には働いて貰いましょう。彼が船に乗っていれば、その指示には従うようだし。しかし、彼をどうやって船に乗せるか、そっちを考える方が面倒ね。依頼をすると嫌がるし。他に彼が欲しがる報酬があるかしら。貸しも貯まっているし難しいわね……」


身分証の作成に指名手配の取り消し。後は彼が望む物と言えば宇宙船?

商人でもしながら旅をしたいようなことを言っていたようだし、それなら私でも用意できる。というかあの船を上げるしかないのかしら?

言うことを聞かない船を、我々が持っていても使い道がなさそうだし。

とは言って、危険な戦艦をあげるというのも問題になりそう。

それなら一層のこと、武装解除して渡すとか。輸送船に換装してから渡せば大丈夫かしら?

そうすれば船をあげるには問題ない。戦艦でなければ良いのだから。


「戦争が終われば武装解除かしらね……」


どのみち、危険な船をあのままというわけにはいかないでしょう。帝国軍が調べたらわかることだし。解体するという手もあるけど、危険なのよね、あのAI。何を仕出かすかわからないわ。平気でクラッキングしているし、反抗して、昔の戦争が勃発しても困る。

AIと人間の戦争。

それだけは避けないといけないでしょう。私のせいでそうなったら帝国は終わり。各国から非難を浴びせられるわね。

戦後の処理を考えるにはまだ早いけど、それでも準備だけはしておいたほうがよいでしょう。

情報端末機を立ち上げて、整備班に指示を出した。




ご覧いただきありがとうございます。


時間がなくて毎日アップはできないと思いますが、気長に付き合って下さると嬉しいです。

毎日ぽつぽつと書いています。

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