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第178話 宇宙港での戦闘②

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「指示に従うと伝えろ! だから撃つなと」


そう返答すると、メインモニターに星系軍の部隊が映し出された。

シールドを張ってこちらを警戒している。

当然と言えば当然か。こっちの船の性能を知っていればそうなるだろう。

いっぱい沈めてきたし。


「お前も余計なことをするなよ。こっちには人質がいるのだからな」


エミリーを人質として釘を刺す。

そんなことは言われなくてもわかっているつもりだが。


「その件だが、そろそろエミリーを解放して貰えないか。もうここまで来たのだから人質はいらないだろ?」


解放されたらいつでも逃げることができる。しかし、宇宙だと逃げる場所がないな。それも考えないといけない。どうするか……。

逃げることまでは考えていなかった。

地上ならいくらでも逃げ切る自信はあるのだが。


「ふん、まだ駄目だ。私たちの安全が確保できるまではな」


そう言うと携帯端末を弄りだした。

メールかメッセージでも送っているのだろう。

電話を掛けないのは警戒しているからか?


「今、確認のメッセージを送った。もう少しすれば女の写真が届くだろう。無事だと良いがな。フッフッフ」


嫌らしい浮かべながら言うよな。どこかの悪徳代官か。

本当にこいつ商会の会長なのか?

下品で仕方が無いのだが。


「まあ、エミリーの件は置いといて、俺の話をしよう」

「置いておく!?」


軽く言う俺にギョッとして驚いているが、何だか面倒臭くなってきたのだ。

ここまでしたのだからもう良いだろう。義理は十分果たしたし、何かあっても許してくれるはずだ。

殺されてもね。


「俺はこの後どうなるのだ? 向こうに着いたら解放してくれるのか?」


今はエミリーよりも自分の身の安全だよね。まだ、死にたくはないので。


「そんなことは知らん。星系軍が決めるだろう」

「おいおい、ここまで連れてきて身の安全は保証してくれないのか?」

「何で私がそんなことをしないといけない。船が動けばお前は用無しだ。私の知ったことではない」


無責任というか冷たいね。

しかし、俺はおまけのような物。

そういう扱いになっても仕方がないか。


「それじゃ、自分の身は自分で守らせて貰うとするかな……」

「……おい、何をする気だ?」

「逃げるだけだよ。捕まる前にね」

「そんなことしたら人質の女がどうなってもしらんぞ!」

「好きにすれば?」

「!?」


俺の言葉を聞いて驚いている。

俺のウイークポイントだと思っていたようだが、そんなことはない。

会長さんが勝手にそう思っているだけだ。


「それに、もう救出は終わったのだろ?」


メインモニターに向かって問いかけると、女性士官が映った。

まるでタイミングを見計らっていたかのように。


『エミリー様の救出は終わっています。怪我はないそうです』

「だってさ」


やはり終わっていたか。

態とゆっくり飛んでいたのに、それが急に速度を上げたのだから何かあったと思うのが自然だろ。

この場合は、救出が終わった、という合図だな。

それを見越しての行動だ。見捨てたわけではない。


「場所が分かるはずがないだろ!」


会長さんは携帯端末を取り出して電話をかけ始めた。

しかし、誰も出ない。

メッセージの返答もなかったようだ。


「こ、こんな短時間で……」


信じられない、という顔で携帯端末を見つめている。

ダンジョンコアが勝手に何かやったのだろう。

いつものことなので気にしないことにした。


「さて、そういうことで……縮地」


一瞬でレーザー銃を持っている傭兵の背後に回り、意識を刈り取る。

首をトン。

あれ? ひとりの顔が上を向いたまま戻らない。力加減を間違えたか?

首トンは難しい。2分の1の確率で失敗する。いや、もっとか?

でも、人に銃を向けたらこうなる覚悟はあるはずだ。それに傭兵だし、死んだところで心は痛まない。

こんな仕事に手を貸すぐらいだから、それなりに前科もあると思うし。


「貴様! 何をやっている!」


倒れている傭兵を見て会長さんが激怒していた。

俺はすまし顔で答えてやった。


「……排除? 邪魔なので」


ブリッジ内にいる商会の部下達が、倒れて死んでいる傭兵を見て言葉を失っていた。

自分もこうなると思っているのかもしれない。


「コア、ブリッジを閉鎖。誰も入れないように。それと操縦は任せたぞ。何か考えがあるのだろ?」

『もちろんです。後は私にお任せ下さい。それと私は欠陥品でありません。訂正を』


女性士官が笑顔で怒っていた。

会長さんが言った言葉を気にしていたらしい。

でも、あながち間違っていないと思うぞ。人の命令に従わないAIなど欠陥品と変わらないと思うから。


「君たちも何もしないようにね。見ての通り、首トンは力加減が難しくてね。失敗すると死ぬことになる。それ以外だと顔面を殴るしかないのだが、高確率で顔の形か変わるぞ。お勧めはできない」


勇者の力があれば武器を持っていない素人など簡単に倒せる。

全員で襲われても脅威でも何でもない。


「こんなことをして許されると思っているのか!」

「別に許して貰おうとは思っていない。それに誰に許して貰うのだ? 俺は誰の味方でもない。許して貰う必要なんてないのさ」

「グググ……」

「さて、後はどうするのか。見てからのお楽しみと言うことで」


俺がニコッと微笑んでそう言うと、部下達が騒ぎ始めた。


「会長! 船のコントロールを奪われました!」

「こっちもコントロールできません」

「なに! 今すぐ取り戻せ!」


操縦している部下がレバーを動かして何かしているが、反応がなく焦っていた。

他の連中もボタンを押したり色々としているみたいだが、何もできず諦めてモニターを見つめている。

ダンジョンコアがコントロールを奪ったのだ。


「お前が何とかしろ!」


今度は俺に向かって命令する。

そんなことを言われても知らん。

それになぜ協力しないといけない。

俺は無視をした。


「おい! 直ぐに星系軍と連絡を取れ!」

「駄目です。通信もできません」

「通路の隔壁ハッチが作動中。通路が閉鎖されました。移動できません」

「全てのドアがロックされました。部屋からも出られません」


これで誰もブリッジに来ることができなくなった。

応援も呼べないということだ。


「おい! 何をする気だ!」

「知らん。俺にもわからない。俺は何していないのでね」


手を上げ、WHYのポーズをする。何も知らないのだから。


「では、誰がやっているのだ?」

「この船のAIだ。だから最初に言っただろ、俺にでもわからないと」

「しかし、お前の言うことは聞くのだろ? 直ぐに船のコントロールを返すように命令しろ」

「え? 何で俺が? それに協力する義務も何もないが。それとも力ずくでやるか? 俺はそれでも一向に構わないが」

「グッ……」


会長さんは床に倒れて傭兵の姿を見て、それ以上言うのを止めた。

力で勝てないとわかっているからだ。


「それに自分で言っていたではないか、信用できないAIは外すべきだと。外しておけばよかったのだ。そうすればこうもならなかったのに」


そうすれば俺も呼ばれることがなかったはず。

コアを外せば、普通に動くはずだから。


「そんなのは最初にやったわ! 新しいAIボックスと交換した。しかし、船は動かなかった。博士が言っていたが他にもAIボックスがあると。それを探していたが時間がなかったのだ。だから仕方なくお前を呼んで出航したのだ。時間があれば外しておったわ!」


半ギレで言い返された。

俺が悪いみたいに。


気が付くと宇宙港のゲート前まで来ていた。

宇宙港は巨大なゲートがあり、更に中に進むと細分化されたドックが無数にある。一般に蜂の巣型とも呼ばれているそうだ。

ゲートを潜り、更に指定されたドックに向かう。そこで後ろに付いてきていた戦艦が停止した。これ以上は先に入れない。ドックは戦艦1隻しか入れないからだ。

ここまで来たが後はどうするのか。俺にもコアの作戦がわからなかった。



ドックに入り巨大なハッチが閉じると、ドック内に酸素が注入される。

そして十分に満たされると、多くの兵士がレーザー銃を待って突入してきた。

大歓迎である。

これを見て会長さんが嬉しそうに微笑む。終わった、と一瞬思ったのだ。ここまで来ればもう安心だと。

しかし、ここからが地獄の始まりだった。

いくら何でもそんなことはしないだろう、ということを平気でしでかすのが、ダンジョンコアだ。

まさか、そんな暴挙に出るとは。


「か、会長! ジェネレーターの出力が急激に上昇してます!」

「武装のロック解除を確認。しゅ、主砲が動きます!」


突然の戦闘準備に、ブリッジ内はパニックになっていた。


「こ、こんなところで発砲だと!? 止めるんだ!」


会長さんが大声で叫ぶが止まることはなく、主砲が、閉じたドックのハッチへ向かって発砲された。

大きな穴が無数に開く。

ハッチの向こう側は、先ほどまで監視していた戦艦が待機していた。


「星系軍の戦艦に命中!」

「ドックの外壁破損! 空気が外に漏れます」


突入してきた兵士がパニックになり逃げ回る。

そして、穴に向かって兵士が吸い寄せられていった。

阿鼻叫喚、地獄絵図だ。

宇宙服を着ていれば助かるかも知れないが、何も着ていなければ助からないだろう。

助けるを求めるが声がドック内に響くが、ハッチに穴を開けられたら塞ぎようがない。

酸素が無くなるまで吸い出される。もう、助けることは不可能だ。


「な、何てことを……」


その光景を見ていた会長さんは青い顔で呟いた。

ブリッジ内にいる部下達も呆然と見つめている。人が宇宙空間に放り出される様を。


「はぁ、やってくれたな。まさかドック内から攻撃とは……」


何かしでかすかと思っていたが、予想の斜め上をいっていた。

これがコアの作戦だったようだ。



その後も、こっちはお構いなしで攻撃を続けていた。

ドック内から射程が届く船に、容赦なく撃ち続いている。

向こうは宇宙港を気にしているのか、攻撃してこない。いや、この場合、宇宙港を盾にしていると言った方が良いか。

こちらに攻撃をしたら、宇宙港を破壊してしまう。ドックだけは済まないだろう。恐ろしい作戦を考えたものだ。

宇宙ステーションを盾にするとは誰も思っていないはずだ。


「お、おい、お前! 宇宙ステーションを破壊する気か! 協定違反だ! 犯罪だぞ!」


宇宙ステーションは破壊していけないらしい。

俺に向かって怒鳴られても知らんよ。俺が命令を出しているわけではないのだから。


「協定違反と言われても、この船は今は盗難船だし、どこにも所属していないことになっているから海賊船と同じ扱いになるのでは? 詳しくは知らんけど。だから責任があるとすれば……」


そう言って会長さんを見る。

奪われた船で攻撃しているわけだから、軍とは関係なく、海賊船と同じ扱いになるのではないだろうか?

だから協定とか持ち出されても関係なく、責任があるとすれば、会長さんの責任になると思う。

それにたとえ違っても、相手は裏切った星系軍だし、そのぐらいは大目に見てくるだろう。戦争だしね。


「わ、私はそんな命令は出していない。お前が命令しているのだろ!」

「おや、俺がいつ命令した? 俺が命令したのを聞いていたのか? 俺はそんなことは一言も言っていないぞ」


コアが勝手にやっていること。だから俺を責めるのは御門違い。

文句はコアに言ってくれ。


「それなら止めるよう言ってくれ。これでは俺が捕まるだろ!」


泣きながら俺に訴えてくるが、コアがそんなことで止めるはずがない。というか、船を盗んだ時点で捕まると思うが。それに星系軍にも追われると思うし。裏切ったようなものだから。

会長さんの未来は明るくない。


「ジェネレーターの出力が100パーセントに到達です」


100パーまで上げたということは、ここで星系軍を壊滅させる気だ。やる気満満ということだ。

こうなったら止められないだろう。全てが終わるまでは。


「な、何でこんなことに……」


両手両膝をついて項垂れている。

死にそうな顔で何かブツブツ言っているが、周りが騒がしくて聞こえなかった。どうせ泣き言でも言っているのだろう。無視をした。


「戦艦から高エネルギー反応。攻撃が来ます!」

「本艦、シールド展開を確認」


ハッチを貫通し、外からレーザー砲が飛んできた。しかし、船には当たらず、その奥にあるハッチを貫通する。奥は物流の搬送エリアになっていて、他のドックと繋がっているはずだ。


「撃ってきたぞ!」


部下達が驚いていた。まさか反撃するとは思っていなかったからだ。

宇宙ステーションをごと沈める気か?

他のドックまで被害が出始め、至る所で、警報が鳴り響いていた。




ご覧いただきありがとうございます。


時間がなくて毎日アップはできないと思いますが、気長に付き合って下さると嬉しいです。

毎日ぽつぽつと書いています。

ついでに評価もしてくれると嬉しいです。

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