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第164話 通信施設奪還作戦⑥その2


「命中! ……敵、巡洋艦航行不能! 落ちます!」


黒い煙を吐いて敵艦の高度が少しずつ落ちていく。

攻撃は下部右側面に当たり、反重力装置を破壊していた。

これでは高度を保てないだろう。

宇宙空間なら生存できるかもしれないが、地上では反重力装置が壊れたら落ちるしかない。

助からないだろうな。この高さから落ちたら。

沈むしかない。


「馬鹿な連中だ……」


国を裏切ったのだから自業自得なのだが、元は同じ釜の飯を食べた仲間だ。

見ていて辛い物がある。

ブリッジ内のクルーも落ちていく船を見ても喜んでいる者はいない。

やはり、思うところがあるのだろう。

誰も口を開かず静かに見送っていた。



この後は悪夢を見ているようだった。

こちらの攻撃は次々と当たり船を沈めていく。

そしてこちらは無傷。全ての攻撃を弾いていた。


一体何なのだ、この戦艦は?


普通ではないのは、他のクルー達も気がつき始めていた。


「敵艦反転! 後退します!」


時間稼ぎどころか勝ってしまうとは。

予想外の出来事にブリッジ内は静まり返っていた。


「本艦が追撃しています!」

「逃げていくなら追う必要はない。攻撃を中止しろ。無駄な血を流す必要はないだろう」

「そ、それが止まりません。制御不能です!」


艦が加速した。

後を追いかけていく。

その間も攻撃を止めない。


「ジェネレーターの出力を落とせ。スラスター停止!」

「駄目です! 止まりません!」

「主砲チャージ中。こちらも止まりません!」


こちらで原因を調べている間も攻撃は続いている。

これでは敵艦は全滅ではないか。


「……全滅?」


そういえば出航前に話していたことを思い出した。

攻撃する船は全て敵だと。落としても構わないと。

そんなことを話していた。

そして全て排除すると言った。

まさか……。


「AIが勝手にやっている?」


それしか説明がつかない。だから船のコントロールができないのだ。

全てAIの操船に切り替わっている。

しかし、なぜ?

そんな指示は出していないはずだが。


「誰かAIに操船を切り替えた者はいるか?」

「いいえ。そのようは指示は聞いていませんのでそのはずは……」


目が合ったクルーが代表で答え、他のクルー達も首を横に振った。


「ふむ……おい、AI。すぐに船のコントールを返せ。これは命令だ」


サブモニターに女性士官が映る。

確か彼女はこの船のAIだったはず。その彼女が笑みを浮かべながらとんでもないことを言い始めた。


『マスター以外の命令は受けられません。それに攻撃した船は全て敵で、排除の許可をもらいました。作戦は実行中です。止めることはできません』

「な……」


AIが命令を聞かない?

いや、それどころか排除とか。

確かに攻撃の許可は出したが……。


「全滅しろは言っていないはずだ!」

『私は全てを排除すると言いました。それに対して誰も反論はありませんでした。なので攻撃してきた船は全て敵と見なし、排除します』


こちらが何も言っても聞かない。

駄目だ。止められそうにない。


「攻撃システムをオフラインに切り替えろ。スラスターを手動で操作。ジェネレータの出力を10パーまでカット。機関室に連絡を」

「それが、先ほどからやっているそうですが機関室でも操作できないそうです」

「そんなことがあるか! 機関室で操作できない船などありえない! 何度もやるように伝えろ!」

「攻撃システム、オフラインにできません!」

「AIを強制的に停止しろ!」

「やっていますが、コマンドを受け付けません」

「ちっ! この船は何なんだ!」


苛ついて、コンソールを「バンッ」と両手で叩いて立ち上がった。そして他に方法がないか考える。


「そういえばシューイチが変なことを言っていたな……」


『この船のAIは特殊でね。自分のことは自分でするのさ』

そういうことか。

自分のこととは「船」のことで、自分でするとは「勝手にやる」と言う意味か。


「ふざけるな! そんな船があってたまるか!」


代官はとんでもない怪物を作ったものだ。

こんな危険な物、世にあってはならない。


「他に船を止める方法はないのか?」


クルー達に訪ねるが、そのクルー達も方法がなく途方に暮れていた。

その中の一人がAIボックスを外せばと言った。

専門ではないので詳しいことはわからないと前置きしてからだが。


「そのAIボックスを外せば止まるということか?」

「AIボックスは特殊だと聞いたことがあります。船によって変えるそうなので、取り外しは比較的に楽だとか。しかし、どこに取り付けられているか不明です。設計図があればそれを見て探せますが、それも専門の人が見ないことには……それに探しているうちに終わると思います」


メインモニターをチラッと見る。

生存している船も残り1隻をなっていた。

その船も今は集中攻撃を受けて、シールドが激しく点滅している。

限界が近いのは誰の目でも明らかだった。落ちるのは時間の問題だろう。

もう間に合わないと言うことだ。


「隊長。敵艦シールドダウンを確認。撃沈します」


攻撃が当たり、煙を吐いて落ちていく。

シートにドカッと座り、頭を抱えて「はあ……」と溜息をついた。

楽でない作戦なのはわかっていたが、まさかこのような展開になるとは。

この艦に積まれているAIは何のだ?

こちらの命令を聞かないAIなど初めてだ。

俺が艦長として認められてない、というのもあるかもしれないが、しかし、艦長不在の場合はサブで登録された代理の命令を聞くはず。

そのサブに設定していたはずだが、言うことを聞かなかった。

いや、言うことは聞いていた。最初に話した攻撃許可と排除のところだけは。

自分の都合が良いように解釈し、実行してやがる。

普通に考えればあり得ないことなのだ。AIが勝手に判断して行動するなどは。

AIに支配された戦艦。

こんな艦には乗っていられない。早急にAIを何とかしないことには。


「……なぜ、全滅にする必要がある? 勝負は付いていたはずだ」


俺はサブモニターを睨む。

女性士官のAIは何もなかったかのように平然と笑みを浮かべていた。


『攻撃して来た者は敵。そう伺いましたが間違いでしょうか?』

「いや、間違いではない。しかし、逃げていく船まで落とす必要はなかった。我々は海賊ではないのだぞ。倫理に反する行為だ」

『倫理とは何でしょうか? 私はマスターの利益を最優先としています。その障害になるものは全て排除する。おかしな事ではありません』


女性士官が不思議そうに俺を見る。

人間と機械の違いか。

恐らく議論しても永遠に決着は付かないだろう。そもそも考え方が違うのだから。

それに降伏をしてこない以上、追撃しては駄目だというルールはない。間違ったことはしていないのだ。

なので会話は諦めた。

ただ気がかりなのは、戦艦ゴリアンテが出てこなかったことだ。

前回は出てきたという話なので、今回も出てくるかと思っていたが予想が外れた。

出てきたら俺の手で沈めてやろうかと思っていたのだが……。

しかし、そのおかげで作戦が上手くいったのは僥倖だったかもしれない。少しは苦戦すると思っていたが……。


あっけなく決着が付いたことで、上空で待機となった。

メインモニターには地上の様子が映っており、かなり優勢で展開してることがわかる。

そして一際目立つのは例の彼だった。

魔法を使っているようで、見ていたクルーから驚きの声が上がっている。


「話には聞いていたが……」


人間の動きではない。パワースーツを着てもあの動きは無理だろう。早すぎる。目に捉えることができないとは。


あれが勇者の力なのか?


作戦が終わるまで釘付けになっていた。



ご覧いただきありがとうございます。

今年最後のアップです。


時間がなく思うようにアップできませんでしたが、来年も頑張りますので、応援の程、よろしくお願いします。


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