第162話 通信施設奪還作戦⑤その3
「星系軍にはジェラート少尉みたいのは多いのか?」
「はい。自分はあえてこちらを選びましたが、中には家の問題でこちらに入れられた人もいるとか。全員が納得してこちらに配属されているわけではありません」
ふむ、星系軍は左遷先の一つということになっているのか。
あまりよくないな。だから司令官みたいな人ができあがるのだ。
そういった考えを改めないことにはこの先同じようなことが続くだろう。
いや、改めたところで封建制度である限り変わらないか。
彼らは、そういう思想なのだから。
「なるほどね。そういう連中が司令官に協力しているのか」
「この国に居ても先がない人や居場所がない人は協力するでしょう。特に爵位を継げない人は。ドラギニス公国に行けばチャンスはありますから」
起こるべきして起こったという感じか。
不平不満を解消せず、見て見ぬふりをしてきた国が悪いのだろう。
星系軍を無くし帝国軍に統一すればよいのに。
しかし、それも結局は辺境の星系に配属されたら同じか。
格差や差別は永遠になくならないということだ。
「夢を見て謀叛に参加したのだな」
「そういう人もいるでしょうね……」
とはいえ同情はできないけどね。
関係ない市民を巻き込んでいるのだから。
「剣を貸してくれないか。使わないのであれば今は俺が使う。俺も武器があったほうが戦いやすいのでね」
「しかし、貸し出すのは軍規違反で……」
「だが、今は軍人ではないのだろ? それなら大丈夫だ。黙っていれば分かるまい」
「うーん……」
渋い顔をしながらも悩んだ末に貸してくれた。自分が持っていても使えないからと。剣術は得意ではないそうだ。
貸して貰ったレーザーソードは柄の部分だけで、ボタンを押すとレーザーが飛び出すという単純な仕組みになっている。想像した通りの物で、それほど珍しい物ではなかった。有名なSF映画や玩具とかでも見たことあるし。
「ふむ、思っていたよりも軽いな。1キロもないか……」
レーザーを出して2,3回軽く振ってみた。
何か玩具を振っているみたいでしっくりこない。軽すぎるからか?
さらに数回振って感触を確かめた。
「難しいな。剣が軽い分、振り下ろすときは力が必要だ。力強く握った方が良いかもしれない」
全体的な重量が軽いため振り下ろすスピードが速くなる。
しっかり握っていないとすっぽ抜けて飛んで行ってしまいそうだ。
逆に力強く握ると体が硬くなり柔軟性に欠ける。
その加減が難しい。
「そんなに力を入れて振らなくても大丈夫です。実物の剣と違って体に触れただけ焼き切れますから。簡単に切ることができますよ」
俺が剣を振っているのを見てアドバイスをくれた。
「レーザーだから切るのではなく焼くという感じになるのか……」
レーザーで触れたところは黒く焼ける。炭化すると言った方が良いか。
だから力は必要なく、振り抜く感じで良いと。
「それなら速く振ることを重視した方がよいな。強く握りすぎないように注意しないと」
この後は時間まで振り続けたが、感触としては今ひとつだった。
重さや長さが違うせいで、やはり聖剣と違い扱いづらい。
とはいえ、普通に振る分には大丈夫だろう。剣技さえ使わなければ。
「稼働時間15分ほどです。それ以上になるとバッテリーが切れて落ちますので使えなくなります。注意を」
レーザーソードにバッテリー表示があり、目盛りが一つ減り、今は4つだけ点灯していた。
「わかった。意外と短いのだな」
「その大きさですから仕方がないです。バッテリーを大きくすればそのぶん重くなって使いづらくなりますから」
実物の剣とは違い機械だから仕方がないか。
聖剣なら魔力が続く限り使えるのだが。
「予備のバッテリーは?」
「使う予定がなかったので持ってきていないです。ですから切れたら終わりです」
「了解した」
レーザーソードのスイッチを切ってベルトに差す。
刃がない分、持ち運びは楽だ。
その代わり精密機械なので、扱いには注意を払わないといけないが。
「もう間もなく作戦開始の時刻です。我々も入場ゲートの近くまで移動しましょう。気づかれないように」
他のメンバー達に声を掛けると移動を始めた。
さすが軍人。足並みも揃っており、一言もは発せず静かに歩いて行く。
俺も遅れないように後を付いていった。
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