第161話 通信施設奪還作戦⑤その2
「銃なんて使ったことがないのでね。慣れない物を持つと碌な事にならない。そういうのがあるので使わないのだ。それに俺には魔法があるのでね。それで何とかするよ」
「魔法……ですか?」
「魔法があれば大抵のことはできると思うぞ。それで戦ったこともあるし」
「ああ、例の映像ですね」
「見たのか?」
「はい、見ました。ですが、あれは本当に魔法なのでしょうか? 革命軍で新しく開発された新兵器ではないかと噂になっていましたが」
「兵器ではない。魔法だよ、あれは」
疑われても仕方がないか。
兵器でも同じような物を作れるらしいから。
「こういうのは実際に見た方が早いが、まあ、この場所ではね。機会があればそのうちに、といういことで」
「そうですね。それは後ほど見せて貰います。それよりもシールドバックは装備しないのですか? せめて自身の防衛ぐらいはしておいた方が良いかと。レーザーに当たれば簡単に死にますよ。予備のシールドバックを持参していますし、お貸ししましょうか?」
「うーん、シールドバックねえ……」
確かに身の安全を考えれば装備した方が良いのだが、しかし動きが制限されるんだよね。俺はどちらかというと素早さ重視なので、装備は極力付けないようにしている。重くなると動きが鈍るのでね。
だから付けたくはないのだが……。
「それよりもこの世界では剣は使わないのか? 俺は銃よりも剣で戦いたいのだが」
「剣……ですか? 鉄の剣は使いませんがレーザーソードならあります。レーザーを剣の形に模したも物ですが、戦闘ではあまり役に立たないので使う人は少ないですね。限られた人以外は」
「役に立たないのか?」
「レーザーソードで戦うよりもレーザー銃で撃った方が早いですから。一瞬で勝負がつきますよ」
やはり剣では銃に勝てないか。
光速で撃ち出されるレーザーを躱すことはできない。
剣で打ち落とせればよいが、そんな動体視力を持った人間などいないだろう。光速を目で捉えられるわけがない。
しかし、それは予想していたこと。当たらなければ問題ない。的を絞らせなければ良いだけの話だから。
問題はシールドを切れるかどうかだが、レーザーソードで切れなければ意味が無い。弾かれた時点でこちらが死ぬからだ。
「レーザーソードでシールドは切れるのか?」
「切れる、という表現はあっているか分からないですが、飽和させることは可能です。レーザーソードは高出力でレーザーを放出しているので、当たればその部分は一瞬で飽和します。そこから裂くことは可能です」
ふむ、レーザーソードで切れるということか。
レーザー銃でちまちま削るよりは一瞬で懐に入り、レーザーソードでぶった切った方が早い。
まさしく俺向きの武器という感じだ。
「切れるのであればレーザーソードの方が良いな。しかし、それならどうして装備しないのだ? シールドが切れるのであれば楽に戦えると思うが」
「それは、そこまで近寄れたらの話です。大抵はその前に撃たれて死んでしまいます。レーザーソードを使うときは自分のシールドは張れませんので」
なんでもシールドを張っているとシールド同士がぶつかり合い、相手に近寄れないそうだ。だから使うときは、シールドを張らない状態で無いと駄目らしい。
命知らずで無いと使えない武器ということだ。
「間合いの関係か……」
「シールド同士がぶつかり合うと反発し合うので、相手にレーザーソードが届きません。なのでシールドバックを切る必要があるのです。レーザー銃を構えている相手にその行為は無謀かと。だから使う人がいないのです」
「なるほどね。命を掛けてまで使う人はいないということか」
でも、俺には関係ないこと。
シールドバックを装備するわけではないので気にする必要はない。
「そのレーザーソードは持っていないのか?」
「話を聞いていたのですか? とても使える物ではないですよ」
俺を心配してなのか、ちょっとあきれる感じで返してきた。
「構わない。そもそもシールドバックを装備するつもりはないのでね。何の障害にもならない」
「そうは言っても……」
「俺は元勇者だ。銃で戦うよりも剣で戦う方を得意としている。だから気にする必要はない。持っているのだろ?」
「持ってはいますが、ですがお貸しすることはできません。レーザーソードは購入制限が掛かっている1級禁制品なので」
「は?」
「使用か許可されているのは、王族と貴族と特別に許可を貰った者だけです。一般市民の帯剣は許可されていません。ですので、お貸しすることはできません」
「どうしてだ? たかがレーザーソードだろ? 銃に勝てないのだから制限するような物ではないだろ?」
「暗殺に使用されるからです。正面からでは勝てませんが背後から近寄り、ブスッと刺せば簡単にシールドを突破することが可能です。ですので、一般に販売は許可されていないのです」
過去に要人が演説しているときに、背後から襲われて死亡したそうだ。
シールドを張って備えていたそうだが、役に立たなかったとかで、それ以来、レーザーソードは制限が掛かるようになり誰でも持てる物ではなくなった。
そういった経緯があり、この国では、一般に所有は許可されていない。
自衛が必要な王族や貴族など、特別に許される人だけとなった。
「暗殺に使われから駄目と?」
「はい。要人を守るのにシールドは不可欠ですが、至近距離からだと防ぎようがありません。なので流通させていないのです。我々兵士も正面から戦うのであれば、レーザー銃があれば必要ありません。ですので、要人を守る必要がある人や自衛が必要な高貴な方などが帯剣を許されているのです」
「でも、ジェラート少尉は持っているのだろ?」
「父が子爵なので帯剣を許されているだけで、自分はそれほど偉くはないです。庶子ですし」
庶子なので継承順位は低いそうだ。だから帝国軍には入らず、あえて星系軍を選んだとか。
帝国軍に入ると兄弟で揉めることになるからと。
「自分は家を継ぎたいとかないので、争いとは無縁なこちらを選びました。家族と関わりになりたくはなかったので。できれば貴族の籍を抜きたいのですが、母のこともあり、そうもいかなくて……でも、こちらで良かったです。自分を特別扱いする人がいなくて。貴族として扱われるとやりづらいので」
照れ臭そうに笑顔で話す。
みんな暖かく迎えてくれているとかで楽しくやっていたという話だ。
謀叛が起きるまでは。
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