第160話 通信施設奪還作戦⑤その1
長くなったのでいくつかに分けました。
街から少し離れた場所に通信施設は建っていた。
周りを塀で囲み、至る所に監視カメラが見える。
俺たちは少し離れた場所からドローンを飛ばし、施設の状況を確認していた。
ドローンはステルス機能が搭載されており、手の平サイズでほぼ無音だった。それを一緒に行動している通信技術者が操作し、その映像をみんなで見ていた。
「多いな。かなりの兵士がいる。この中を突っ込まないといけないのか?」
至るところに兵士の姿を確認できた。キャタピラが付いたロボットまでいる。
警備用ロボットということで、両腕にはレーザー銃が取り付けられていた。あれで連射されたら躱すのはほぼ不可能。蜂の巣にされるだろう。
「一度襲撃しましたからね。失敗したとはいえまた襲ってこないとも限らない。それで兵士を増員したのでしょう。前回よりも厳重になったそうです」
副官のジェラート少尉が教えてくれる。
ジェラート少尉は俺と同じかそれよりも若いかもしれない。
金髪でスラッとした体格をしている。好青年と言った方が合っているか。口調とか穏やかで、軍人にしては人当たりが柔らかかった。どちらかと言うと文官タイプなのかもしれない。
「失敗した理由は?」
「交戦中、敵艦が上空に現れ攻撃されたそうです。対抗する手段がなく、そのまま撤退したという話です。戦艦から撃たれたら小型のシールドでは防ぎきれませんからね。それもやむを得なしかと」
空からの攻撃か。
それを防ぐためにこちらも戦艦で対抗しようということだな。
しかし、周りを見て仲間の人数を確認すると、ちょっと心許ない感じがするが……。
「この作戦にどれかの人を集めたのだ?」
「約100人ほどです」
「その人数だと多いのか少ないのか分からないな。どうなんだ? やれそうなのか?」
「こちらで調べた限りですと敵兵の人数は80人ほどです。ですが、警備用ロボットも配備されていますので、人数でこちらが勝っていても不利だと思って頂いた方が良いかと。苦戦すると思われます」
「それが分かっているのであれば、もっと人を集めても良かったのではないのか?」
「我々の部隊だけではこの人数が精一杯です。戦艦にも乗っていますし。それに反対派の兵士も少なからずいますので。これでも集まった方でないかと」
「反対派?」
「はい。今の我々は革命軍と協力関係にあります。それに納得いかない一部の兵士が反対派としている、ということです」
敵対してたレジスタンスと協力はできないという話だ。
軍人としてのプライドが許さなかったのだろう。それに信用できないというのもあるのかもしれない。
全ての兵士が、クリフト・ベルマン大尉に従っているわけではないということだ。
「それで俺をこっちに回したのか……」
「今の我々は軍籍を剥奪されていますので強制はできません。なので、それに納得した者だけが集まって作戦に参加しているのです。反対派は参加しません」
なるほど。それでこの人数ということか。
俺をこっちに回した理由は人数が少ないからと。
もうちょっと楽な任務だと思ったがそうは行かないようだ。
貧乏くじを引いたみたいだな。はぁ、やれやれだ。
「しかし、協力関係か。軍籍が無ければ一般人と同じ。レジスタンスと代わらないもんなあ。同じ仲間ということか」
周りで話を聞いていた何人がムッとした表情を浮かべた。
レジスタンスになったつもりはないのだろう。
彼らは今でも軍人だと思っているのだ。
「フフ、まぁそう思って頂いても構いませんよ。武器も消耗品も全て革命軍から供給されていますのでね」
苦笑を浮かながらジェラート少尉が答えた。
嫌みに聞こえたみたいで周りの空気が悪くなった。
余計なこと言う物ではないね。
これから作戦が始まるというのに。
「軍からは貰えないのか?」
「貰えるわけないですよ。追われているのですから」
「まあ、そうだよな。しかし、そんなに物資に余裕があるのか、レジスタンスは。どこから調達してくるのだ?」
「わかりません。その点については私も疑問に思っています。一体どれだけの物資を持っているのか疑問に思います。空港は閉鎖されていたはずなのにどうやって集めたのか。それにその資金も気になります。シューイチ殿は何か知っていますか?」
「俺が知るわけないだろ。レジスタンスではないのだから」
「え!? 革命軍ではないのですか!?」
初めて聞いたみたいで驚いていた。
そう言えば俺も説明していないし、一緒に居ればそう思われても仕方がない。
クリフト・ベルマン大尉にも説明していなかった。
「そうだよ。これでも俺は一般人だ。レジスタンスではない」
「ですが、こうして参加しているのではないですか?」
「それは報酬を貰ったのでね。それで協力しているだけさ。俺の立ち位置は中立でレジスタンスでも何でもない。手違いがあって軍と揉めてしまったが、本当は戦うつもりはなかった。それで追われる身になったのでレジスタンスに匿って貰っていた。その恩のつもりで手を貸しているだけで、指名手配がなくなれば一緒にいる必要がなくなる。それまでの間だけ、報酬を貰って協力している。ようは傭兵みたいなものだと思って頂ければそれでよい。深い意味はない」
「そうですか……」
ジェラート少尉が顎に手を当て考えている。
何か思うところでもあるようだ。
「そういえばシューイチ殿は武器を使わないのですか?」
俺が手ぶらなのが気になったようだ。
他の兵士は背中にシールドバックを装備しレーザー銃を持っている。そしておそろいの軍服。星系軍の軍服ではなく、レジスタンスが新しく用意した物のようだ。
黒を基調とした派手さのない目立たない服。しかし、これだ多くの人が同じ格好をすれば目立つというもの。あまり意味はなさそうだ。
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