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第147話 帰還②


「壊滅した部隊の救助は?」

「向かいました、ザイラ司令官。もうまもなく追撃部隊が出港する予定です」


副官が持ってき資料を見ながら答える。

まさか討伐に向かった部隊が壊滅するとは。

戦艦1隻と高をくくって1部隊だけで行かせたのが間違いだった。

だが、あの戦艦の性能は巡洋艦よりも劣ると聞いている。

それなのになぜ?

そういえば艦を奪われた後、追跡した巡洋艦がやられたと聞いた。それに惑星を出るときも何隻かやられたという。

偶然ではなかったということか。

このままではドラギニス軍に何て言い訳をすればよいか。

たった1隻の戦艦も沈められないとは、叙爵どころか我々を認めてはくれないはず。話しも無かったことになりかねない。まさかこんな所で躓くとは。

早急に対応が必要だった。


「追撃部隊は2艦隊として割り振り、監視衛星が破壊された宙域を重点に探索させる予定です」

「隠れるとしたらそこら辺だろうな」


そのために破壊していったのだ。それしか考えられない。


「しかし、なぜ戻ってきたのでしょうか? 既にドラギニス軍によって星系は支配されているのに」

「あの戦艦に乗っている人員の大半はここの出身だ。家族が心配とかで調べに来たのだろう。通信設備は全て押さえてあるので安否の確認もできない。まぁ、家族愛とかいうやつだな」

「それはなんて無謀なことを。戦艦1隻では何もできないのに」

「いや。彼らにしては無謀ではなかったのだ。現にこちらの艦が何隻もやられている。勝てると思っていたから来たのだ。我々も舐められたものだな。戦艦1隻に」


勝算もなしに来るとは思えない。

対処できると思ったから来たのだろう。それだけの性能があの戦艦にはあるということだ。


「しかし、あの戦艦はどうなっているのだ? 戦闘データを見たが普通ではない。一撃で撃沈とは」

「解析班で調べましたがわかりません。外観や外装に多少手を加えてありましたが、武装に変わりがないので我々が建造したもので間違いはないでしょう。ですが、あれ程の性能はなかったはず。何か改造でもされているのでしょうか?」

「改造してもあれ程の戦闘力は出ない。それに全弾当てるなど、最新のAIでもそれ程の演算はできないはず。他になにか理由があるはずだ」


開発中のAIボックスの話しは聞いていたが、演算能力が20パーセント向上しただけで全弾当てるなど不可能に近い。それにあの戦艦に使われているAIボックスはドラギニス軍が提供したものだという話しだ。そこまでの性能はないはず。

そうなると革命軍で新たに開発したAIボックスということになるが……。

いくら優秀な開発者でも無理だろう。設備もなしでAIボックスを作るのは。

精々、中のプログラムを書き換えることぐらいだ。

だが、書き換えたところで演算能力が爆発的に伸びるわけがない。それであの性能をだすのは、どう考えても無理がある。

全てがあり得ないことだった。


「そういえば、あの母体となった船は古代船と聞いていますが、それが原因ではないでしょうか?」

「それはない。古代船を改造した船を見たことがあるが、あれはとても使い物にならない物だった。まともに稼働させることもできない。だから解体されて、研究者や技術者の玩具にされていた。あれを持ってきて船を作らせたと聞いた時は呆れるほどだったぞ。金の無駄遣いだと。だからあの船をレジスタンスの連中にやったのだ。作戦のために」


そのおかげでこちらの作戦は成功した。

こうしてドラギニス公国で叙爵できるのだから。


「ですが、それしか理由が思い付きません。それに古代船には未知なる力があるとか。今回はそれが発動したのではないでしょうか」

「発動? 馬鹿馬鹿しい。変なことを言うな。古代船がまともに動いたなど聞いたことがない。それこそ御伽噺の世界だけだ。昔、古代船1隻で艦隊を全滅させたとか。あるはずがない」

「ですが、そのようなデータが残っていますが」

「確かにあるが、その後、その船はどうなった? どこにも存在しないではないか。もしあるのであれば、どこかの博物館にでも飾られているだろう。それがないということは誰かの作り話と言うことだ」


それだけのことをした船が残っていないのはおかしなことなのだ。

貴重な船なら王族や貴族などで管理され、どこかで展示されていてもおかしくはない。それにそれだけの性能があれば、誰かが乗っていて、有名になっているはずだ。だが、そのような話しも聞かない。

誰かが作り上げた嘘のデータということだ。

きっと、古代船というボロ船を高く買わせるために造船会社が作った噂話だ。

実物がないのに信じることなどできない。


「確かに戦闘データはありますが、その船の画像データはありませんね。実在していないからですか」

「そういうことだ。変な噂に騙されるな。それだけで士官失格だぞ」

「はい」


叱られたことで副官は苦笑を浮かべた。


「では、あの強さは何でしょうか? 古代船が関係ないとするとその原因が思い付きませんが」

「革命軍が何かしたのだろう。だが、それも撃沈すればわかること。その後、船を回収し調査すればいいのだ。お前は沈めることだけを考えろ。このままではドラギニス軍に笑われるぞ」

「了解しました」

「ところでこちらには何部隊残っている? ドラギニス軍を含めてだ」

「救助に2部隊、追撃部隊で8部隊を出しました。残りは2部隊でドラギニス軍の方は宇宙ステーションに1部隊ほど待機しています。後は惑星に1部隊ほど監視で駐留していますが」

「宇宙には1部隊しかいないのか。合わせて3部隊か……。ドラギニス軍の艦隊は第3惑星に向かったのだな?」

「はい。かなりの数を集めたようです。殆どの部隊が第3惑星に向かいました」

「この戦いに勝てば、しばらくは奪還しに来ないだろう。正念場ということで集めたのだな。負けるわけにはいかないからな」


しかし、殆どの部隊を連れ行くとは。

これでは何かあったとき対応できないだろう。

そのために我々を惑星に残したのか?

どうも考えていることがわからない。

せっかく手に入れた惑星なのに、無防備にするとは。


「……少ないですか?」

「いや、そういうことでは無いのだが……惑星周辺の監視衛星に変化は?」

「ありません。あれから破壊された監視衛星もありません。急に鳴りを潜めたみたいに静かです」

「こちらの追撃を恐れているのだろう。位置を知られないようにして隠れているのだ。それでもしらみつぶしで探せば見つかるはずだ。だが、念のため警戒は怠るなよ。何かわかればすぐに報告をよこせ」

「はっ」


敬礼をして部屋を出ていくと、もう一度渡された資料に目を通した。


「古代船か、あれだけの戦闘力を見せられるとそう思っても仕方がないか……」


資料を読むとこちらの攻撃は全て弾かれ、向こうの攻撃は全弾命中している。

これでは相手にならない。確かにこんなデータを見せられたら古代船の力と勘違いしても仕方がない。

しかし、これと戦うとなると厄介だ。

こちらの攻撃が効かないのだから。

何か対策を考えておいた方が良いだろう。


「ドラギニス軍から貰ったアレを使うか。だが、あれは威力があり過ぎる。一発で都市を壊滅できるからな。当たれば跡形もなく蒸発するだろう」


超高熱反応弾。

当たれば疑似太陽を作り出せるほどの高熱を作り出すとか。

一瞬でシールドが飽和すると聞いている。そんなものがあるのかと。

ドラギニス軍の技術力は帝国を凌駕している。ただ、貴重な鉱石を使うとかで数は作れないらしいが、秘密兵器としては役に立つだろう。

しかし、戦艦1隻に使うのは勿体ない。それでも沈めることができないのであれば、それも止むを得なしか。


この後すぐに戦艦がこちらに向かっているという報告があった。

やはりか、と思い、こちらも迎撃準備をさせる。

入れ違いになり残っている部隊は少ないが、なんとかするしかない。

そのために残されているようなものだからな。



ご覧いただきありがとうございます。


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