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第146話 帰還①


この後、3時間おきに送られているのがわかった。

新たに送られてきた星系図を見ると、星系軍が1カ所に集まっていることがわかる。

それと、先程の宙域に向かう船も多数確認できた。救助に向かう部隊だと思うが数が多い。3部隊ぐらいはいるか。戦闘になったときのために護衛を沢山付けたようだ。


「やはり警戒されたな。この先、楽な戦闘はできないだろう」


だが、これで面白いことになった。

惑星付近にいる部隊が殆どいなくなったのだ。

救助に向かう部隊と、恐らくだがこちらを追撃する部隊とで分かれ、惑星の回りには数部隊が残るだけ。

無防備に近い感じになった。


「後は宇宙ステーションに何隻残っているかだが……」


それも数が多いとは思えない。第3惑星に艦隊を集めているので、動ける船はそっちに回しているはずだ。

何かをするのであれば、今がチャンスだということだ。


艦長室にエミリーとロズルトを呼ぶ。

俺の独断でやってもよいのだが、やはりこの場合は相談した方が良い。それにクルー達の心情も知っておきたい。今の現状をどう思っているか。

軍隊ならそんなことを気にしないのだが、やはり一般人、民間兵扱いとなるとそうはいかない。彼らの意思も確認しないと艦内で暴動が起きる。

そこが難しいところだ。



2人が艦長室に入ってくると、大まかだが現状を説明した。

そして今後について話すと共に、今の惑星の状況も説明した。


「かなり危険になると思うが惑星に行けるのではないかと思っている」

「このままここに居ても、ということか?」

「そうだ」

「惑星か……」

「でも、惑星にもまだ部隊が残っているのではないの?」


エミリがー心配そうに言うが、


「第3惑星に集結しているという話しだし、残っていても1部隊か2部隊ぐらいだろう。今は向こうの方に戦力を割くはずだ」

「そのぐらいならこの艦でも勝てるということか……」

「できれば戦闘は避けたいが、場合によってはそれもやむを得ないと思っている」

「うーん……」


残りの戦力がハッキリしないので悩んでいるのだ。


「やはりみんな帰りたがっているか?」

「ええ、そうね。ここまで来たのだから帰りたいと思っている人は多いわ。特に若い人はそう思っているわよ」

「エミリーもか?」

「私は急いではいないけど帰りたいわ。ミチェイエルのことが心配だし……」


やはり帰りたがっているクルーは多い。

我々は軍隊ではないので仕方がないことだった。


「第3惑星の戦闘でどうなるかわからないが、ドラギニス軍が戻って来たらもう二度とチャンスはない。惑星に帰るのであれば今がチャンスだ」


俺の言葉が効いたのか、2人とも頷いた。


「なにもせず戻るよりは良いだろう」

「そうね。このままここに留まっていても仕方がないし」


2人とも納得したようだ。

そこでどうやって行くか談義し、部隊がいる惑星の反対側までワープ、そこから地上へ降りる作戦となった。

当然、監視衛星があるのでバレずに近づくのは不可能だ。

だが、集まってくる前に降りてしまおう、ということで極力戦闘は避ける方向でいく。

普段なら惑星を中心にいくつもの部隊が配置されているが、その部隊は第3惑星に移動していない。部隊が少ないので全域をサポートするのは不可能。その隙を突いて行こう、ということになる。


「もうじき新しい星系図が送られてくるはずだ。それを見てワープの座標を決めよう。決まり次第、すぐに出航だ」


作戦は決まった。

そのことをブリッジのクルーに伝え、ワープの準備をさせる。

惑星に帰りたがっていたクルー達からは喜ぶ声が聞こえてきた。家族の安否が気になるし、ここまで来て帰れないというのは辛い物があったのだろう。感情が高ぶり、涙を流している若者までいる。

それを見ると、最後まで彼らを生きて届けるのが俺の仕事だと改めて思う。

この作戦が終われば俺の仕事は終わる。

長かったが、ようやく終わりが見えたことで心が軽くなるのを感じた。




新しい星系図が送られてくると早速座標を決め、入力を指示する。

今回はAIが何もしないようなので、こちらで全てやることになった。

古代船のAIは気まぐれだ。

こちらの状況がわかっていても何も言ってこない。こちらから呼びかけたが応答がなかった。やはり彼でないと駄目なようで、こちらからでは無視されている。


「困ったな。どうする? シューイチを呼ぶか?」


ロズルトが聞いてくるが俺は首を横に振った。


「いや、いいだろう。AIに任せると何をするかわからん。俺たちだけでやろう」

「わかった。でもジェネレーターの方はどうする? こちらで制御できないぞ」

「ふーむ……博士、ジェネレーターの方はどうだ?」

「ジェネレーターか? ふむ、安定しておるぞ。出力も70パーほど出ておる。ワープ程度なら余裕じゃよ」


博士がモニターを見ながら答えてくれた。

何やら機嫌が良い。古代船のAIと話せたせいか、益々研究に熱が入っているようだ。


「敵の星系軍がこちらに向かっているみたいだな。どうする?」

「無視だな。相手にする必要はないだろう」


入れ違うようにして惑星へ向かうことになる。

送られてきた星系図には、こちらに向かっている部隊が確認できた。

といっても方向がズレているので一直線ではないのだが、いずれはこの宙域にも来るだろう。だからその前に移動する。惑星へと。

戦うことはしない。


「敵の位置がわかると助かる。裏をかくことができる。だが、これが本物ならの話しだが」

「なんだ、偽の情報かと疑っているのか?」

「あまりにも都合が良くてな」


惑星から部隊がいなくなる。

これではいつでも来てくれと言っているようなものだ。しかもドラギニス軍までいないとは。偶然にしては出来過ぎだろ。

疑うのも仕方がない。


「ドラギニス軍が罠に嵌めるためにこのような情報を流していると? 考えすぎではないのか。それに惑星から直接送信されているのだろ? こんな手の込んだことをするとは思えないけどな」

「そうなんだが、あまりにも上手く行き過ぎてな。さっきの戦闘が部隊をこちらへ呼ぶためにやっているように思える。すべて計算されていたのではないかと」

「あの戦闘が? 勝手にAIが始めた奴だろ?」

「ああ。その結果、惑星に残っている部隊がこちらへ向かってくる。手薄になったということだ。これが偶然だと思うか?」

「いやいや、それこそ考えすぎだ。偶々そうなっただけで、そこまで計算していないと思うぞ」

「そうか、それならよいのだが……」


手の平の上で踊らされている。

そんな感じがして仕方がない。

だが、そんなことを気にしたところでどうにかなるわけでもなく、今は惑星に向かうだけだ。ここまで来て中止にはできない。


「チャージOK。ワープの準備ができたぞ」


リュックの報告で視線が俺に集まる。

俺は1回頷くとエミリーに指示を出した。


「艦内放送を。3分後にワープを始めると」


メインモニターには惑星までの宙域が表示され、到着予定宙域が点滅している。

惑星のすぐ近くで、そこからは巡航速度での移動となる。

敵が攻撃してくるとなるとそのタイミングだろう。

何も無ければ良いが、向こうも簡単に通すとは思えない。

最後にもう一波乱ありそうだ。

星系図を睨みながら、いつでも戦闘態勢に入れるよう準備だけはさせることにした。



ご覧いただきありがとうございます。


時間がなくて毎日アップはできないと思いますが、気長に付き合って下さると嬉しいです。

毎日ぽつぽつと書いています。

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