第142話 第2惑星へ②
「お、おい!」
ロズルトが焦っている。いや、ブリッジにいる全員が慌てふためいている。
船のコントロールを奪われたのだ。
「操縦桿が動かない!」
ダミアンが操縦桿を動かそうとしているがビクともしない。
それなのに船は方向を変えていた。
「主砲の発射準備がされています!」
ミディアがモニターを見て、既にチャージされていると伝える。
「向こうの射程距離に入ったわよ!」
ブリッジの窓から外を見ると、遠くで光りが無数に点滅した。
それと同時にシールドも白く光った。
「敵の攻撃が命中。こちらの被害は……ありません」
ミディアの報告を聞いて全員が安堵の表情を浮かべていた。
『反撃します』
全主砲が動きだし、そのまま発射した。
そして直ぐに大きく赤く光った。
「ぜ、全弾命中! 駆逐艦1隻大破!」
メインモニターには命中した駆逐艦が映っており、船体に大きな穴ができていた。
「ぜ、全弾命中!?」
それを聞いてダミアンが驚いてた。
離れている相手に全弾当てるのは難しい。いや、不可能に近い。それを簡単にやってのけたのだ。
「どうなっているんだ? こんなことはありえないだろ……」
ロズルトも驚いていた。
「お、おかしい。このAIはわしが用意した物では無い。誰じゃ、お主?」
博士がサブモニターに映っている女性士官を見ながら話しかけている。
まあ、これだけのことをしたら疑うよね。普通ではないと。
「博士、今はそれどころではない。ジェネレーターの方はどうなっている?」
グランバーが話しを逸らした。
確かに今はAIのことを話している場合ではない。
先にこっちを終わらせないことには始まらない。
「星系軍の攻撃がきます」
いくつもの攻撃が当たり、その都度シールドが白く光るが被害は皆無だった。
「シールドの損耗率28パーセント。まだまだ余裕だな」
ローズが少し笑みを浮かべて話す。
今までの戦闘ではかなりギリギリで戦っていた。だから今の状況が嘘のようで楽しいのだ。
「ジェネレーターの出力は89パーじゃ。かなり高いがいけるぞ」
博士も状況を理解しそれ以上は追及してこなかった。今は戦闘中なんでね。
『次弾、発射します』
「おい、嘘だろ……」
誰かがチャージが早いと言っている。主砲は連発できないと。
だが、そんなことはお構いなしで次々と主砲が撃たれ、そして同時に向こうも赤く光った。命中した証拠だ。
「全弾一度に当てれば一瞬でシールドが飽和する。駆逐艦クラスでは耐えられない」
グランバーの言うとおり、また1隻、駆逐艦が大破した。
どうやらシールドが弱い駆逐艦を重点に狙って攻撃しているようだ。
「す、凄いわ。ジェネレーターの出力が高いとこういうことも簡単にできるのね」
エミリーも大破した駆逐艦を見ながら驚いてた。
これだけ攻撃を受けていればシールドにエネルギーを持っていかれ、主砲の大型レーザー砲には残りのエネルギーしか回せない。だからチャージに時間がかかり連発はできないのだ。
だが、この船は連発してた。
それでクルーが驚いていたのだ。
「いや、それだけではない。動いている船に全弾を当てるのは難しいし、何よりも電磁波の影響を受けて多少は照準が狂うものだ。それを予測して全弾当てている。かなり高い演算能力を持っている」
褒められていることがわかっているのか、次々を駆逐艦を撃沈していった。
気が付けば巡洋艦も2隻大破しており、星系軍が反転して逃げて行った。
残されたのは大破した駆逐艦や巡洋艦が彷徨っているだけで、大勝と言っても良いぐらいの成果を上げていた。
そういえば誰かが言っていたな。古代船を制御できれば1個部隊など相手にならないと。
その言葉を思い出していた。
この結果を見れば、古代船を改造してでも使いたくなる気持ちが分からないでもない。
チートすぎるからだ。
「艦のコントロールが戻ったぞ!」
操縦桿を握っていたダミアンが、艦が自由に動くことに気が付いた。
「こっちもじゃ。出力調整できるようになったぞ」
博士からもモニターを見ながら報告してきた。
「正常に戻ったということか」
勝ったとはいえ、グランバーの表情は曇っていた。
やはり勝手にやったことが気に入らないようだ。
「俺に文句を言うなよ」
睨んでいるグランバーに言い返した。
俺にはどうしようもできないからだ。
「ところでこのAIは何なんじゃ? わしが付けたAIボックスでは無いのう。勝手に動くようなプログラムは入っておらんはずじゃ」
博士がサブモニターに映っている女性士官をマジマジと見ている。
こうなっては本当の事を話すしか無さそうだ。
「ここに映っているAIは博士が付けた物ではないです。この船本来のAIなんですよ」
と嘘をつく。ダンジョンコアのことは話せないのでね。
みんなと同じでそれで誤魔化した。
「ほほー、この船本来のAIとは……ん? 今なんと言った? 古代船のAIと聞こえたんじゃが」
「古代船のAIで合っていますよ」
博士の顔がキョトンとしている。理解するのに時間がかかっているようだ。
「……な、な、なんじゃと!! こ、古代船にAIがあるのか!!」
大声で叫ぶとサブモニターにかぶりついた。
かなり衝撃だったようで、顔が真っ赤になっている。
一瞬頭の血管が切れるのではないかと、心配になったほどだ。
「博士、詳しい話しは後ほど。それよりもグランバー、この後はどうするのだ? このままここにいるわけにはいかないだろ?」
恐らくは大破した駆逐艦から救助信号が出ているはずだ。ここに救助部隊が集まってくるだろう。
移動した方が良い。
「そうだな。エミリー、隠れられる宙域はあるか?」
「そうね……監視衛星を大分破壊したから、少し離れた宙域に行けば分からないと思うけど……」
空白地帯ができたから簡単には見つからない。
広い宇宙で船を1隻探し出すのは難しい。監視衛星を破壊して回ったことが功を奏したようだ。
「リュック、この宙域からでる。監視衛星がない宙域で頼む」
「了解した。5つ先の宙域へワープする。」
ワープと言っても距離が短いのでショートジャンプと言った方が良いか。
少し離れた場所へ移動した。
ご覧いただきありがとうございます。
過去の話を見直して一部修正などしていました。
ストーリー自体に変更はありませんので気になさらず。
それで少し更新が遅れています。
少しずつ書いてはいますので、気長に付き合って下さると嬉しいです。
ついでに評価もしてくれると嬉しいです。