第141話 第2惑星へ①
入管ステーションを出港して第2惑星まで1日の距離まで来た。
これ以上先に行くと、惑星の警備が強化され、住んでいる住民にどんな影響があるかわからないので、この辺りで監視衛星を破壊して行くことになった。
「もうすぐワープアウトする。準備は良いか?」
グランバーの言葉でクルーの表情が引き締まる。
今の艦内は第1戦闘配置中で、俺もブリッジでサブシートに座りモニターを見ていた。そこには女性士官に扮しているダンジョンコアが映っている。
「お前は余計なことをするなよな」
『私は皆様に喜んで頂ける提案をしているだけです。決して余計なことはしていません』
これだよ。俺の言うことは聞きやしない。
魔力を与えず、眠らせておけば良かったよ。
「レーダーにドラギニス軍の反応はなし。問題ないわ」
エミリーの報告を皮切りに次々と報告が上がってくる。それをグランバーが無言で聞いて頷いていた。
「博士、ジェネレーターの方は?」
「こちらも問題なし。全て正常じゃ。機嫌が良さそうで高い出力をだしておるぞ。こんな事は初めてのことじゃな。何か理由があるかもしれんのう」
ジェネレーターはAIが管理している。
理由を知っているロズルトが苦笑いを浮かべているが、それ以外の2人は知らん顔をしていた。タイミング的にそれどころではなく忙しいからね。聞こえていなかっただけかもしれないが。
「ワープアウトするぞ! 10秒前……4.3.2.1.ワープアウト!」
ダミアンが大きな声で言うと、高速で流れていた光点がゆっくりとなりやがて停止した。
「各計器をチェック。異常がないか確認を」
「監視衛星を発見。目の前にあるわ」
窓から外を見るとすぐ目の前に衛星が見えた。
細長い円筒形で、パラボナアンテナが上下で無数に付いている。その中心にある腹巻きみたいのが高速で回っていた。キラキラと光っているところを見るとソーラーパネルにもなっているようだ。
『破壊します』
おい、勝手なことをするな!
と、言おうとする前に既にレーザー砲が発射され、クルーが見ている前で爆散した。
本来であれば、監視衛星を破壊しただけ重犯罪者となるが、この星系はドラギニス軍に占拠されているので罪には問われない。だから問題ないのだが、実は、AIが勝手にやっていることの方が問題だった。
AIは指示が無ければ発砲することはない。
それを知っているクルー達が引いていた。
「か、勝手には撃ちおったぞ……」
博士も引いているなか、コアは何もなかったかのように平然としていた。
『破壊を確認しました。次の場所に移動します』
「ちょ、ちょっと待て。エミリー、ドラギニス軍は?」
グランバーが慌てて止めた。そして状況確認をしている。
勝手に話しを進めるので少し焦っていた。
「反応はなし。ここには来ないみたいね」
「これで我々の位置はバレたはずだ。今後はドラギニス軍が待ち構えている可能性がある。慎重に行動しよう」
全員が真面目な表情で頷くなか、コアが化けた女性士官だけがニコニコしている。
何を考えているのやら。
「よし、次の場所に向かう。ワープの準備を。座標を……」
『座標入力は終わっています。いつでもワープは可能です』
おいおい、クルー達の目が点になっているぞ。
今はコアが船を完全に制御している。いや、掌握していると言った方が良いか。
こちらは言われた通り動いているだけだ。
どっちが艦長でAIか分からなくなってきた。
「艦内に異常なし。いつでもいけます」
サポートで入っているミディアが報告をする。
彼女は艦内の制御を任されている。生命維持装置や重力制御装置、空調など。今までエミリーがやっていた一部の仕事を肩代わりしているのだ。
「ワープ開始!」
『ワープを始めます』
こんな感じでワープを繰り返し、監視衛星を破壊して行った。
*****
「おかしいな……これだけ派手に壊し回っているのにドラギニス軍が出てこない」
すでに6カ所の監視衛星を破壊していた。
これだけ監視衛星を破壊していれば、向こうも何か対抗策を取ってきても良さそうだが、そういったことはない。
部隊が動いてる痕跡や気配がないのだ。
「こちらに回せるほど艦に余裕がないのかもな」
第3惑星で星系軍と睨み合いをしている。
そっちに艦隊を回しているのかもしれないとロズルトが言う。
「何か情報はないのか?」
エミリーに問いかけたが首を横に振っただけだった。
やはり何も傍受できない。
時々、ドラギニス軍と思われる通信がある程度で、その内容が解析できずに困っていた。
「どうするのだ? このまま惑星に向かうのか?」
俺はグランバーに問いかける。
「こちらに来ないということは惑星で待ち構えている可能性が高い。下手をすると敵陣の中に飛び込むことになるぞ」
「ふーむ……」
話を聞いてロズルトが難しい顔して考えている。
確かにその可能性もあるので、それ以上は何も言わなかった。
「グランバー! レーダーに反応が!」
メインモニターに切り替えてレーダーを見ると、青い光点が複数近づいて来る。
識別信号だと星系軍とでているが。
「こんな場所に星系軍が?」
ダミアンが首を傾げている。
ドラギニス軍の監視下に置かれている宙域で、星系軍が単独で活動しているのはおかしい。
疑問に思うのも不思議ではない。
「やはり見逃してはくれなかったか」
このタイミングで出てきたということは、近くで待ち構えていたのかもしれない。
「ローズ、シールドを展開。攻撃に備えろ。他の者は戦闘準備を」
グランバーの指示で、すぐに第1戦闘配置のアナウンスが流れた。
「やはり敵か?」
「多分な。向こうに寝返った星系軍だろ。艦の識別コードだけでは敵か味方かわからないからな。用心に越したことはない」
ニルブルク星系軍は壊滅したという話しだが、どこの部隊が寝返ったまでは把握できてないと言う。それにやられた部隊もわかっていない。
だから、この宙域で星系軍を見かけたら注意が必要ということだ。
「もうすぐ向こうの射程距離だわ、どうするの?」
エミリーがグランバーの方を見る。
戦うのか逃げるのか指示を煽っているのだ。
「星系軍の数は?」
「戦艦2に巡洋艦5、それと駆逐艦が8隻だわ」
「1部隊まるまるか。全部で15隻。どうする?」
今度はロズルトが聞いてきた。
グランバーの判断待ちだ。
「ふむ、予定通りに逃げる。ワープの準備を」
『いいえ、ここは逃げず戦いましょう』
サブモニターに女性士官が映った。
「無理だ。数が多すぎる」
直ぐさまグランバーは反論するが、
『あのぐらいなら問題ありません。私にお任せ下さい』
と言い、勝手に船が動き出した。
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