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第13話 ショッピングモール②


正面の大きな入口から中へ入ると、1階は広場になっていた。

沢山のテーブルや椅子が並び、その周りには飲食店が営業している。どうやら1階はフードコートのようだ。

中央部分は吹き抜けになっており、天井まで見ることができた。そこから明るい光りが差し込み、広場を照らしている。

こうしてみると普通のショッピングモールだな。2階以降はテナントになっていた。


「結構広いな。お店に逃げ込めば、すぐに見つかることはなさそうだ」


案内板を見付け、目的のショップへ。

3階にあるそうなので、エレベータらしき物に乗ってその店に向かった。

エレベータらしき物とは、筒状の中に入ると足下が光り、そのまま浮き上がるというやつ。

待たずして乗れるので便利といえば便利だが、慣れないとちょっと怖い。

筒は透明で周りに摑まる物とかなく、光りの上に乗っているだけ。高所が苦手な人は無理かもしれない。


お店には入って最初に目に付いたのは、何台も並ぶスマホたち。いや、正確には携帯情報端末機というらしいが、見た目はスマホそのものだ。

ここは、俺が来たかった携帯ショップだ。

買い物するには必須だからね。真っ先に購入したかった。

探知魔法で軍の行動を確認すると、直ぐに入ってくる気配はなさそうなので少しはゆっくりできる。入口付近を行ったり来たりしてるので、指示待ちでもしているみたいだ。

ここには一般市民もいることだし慎重になっているのだろう。市民を人質にしているみたいで感じは悪いが、そうでもしないと動けないので仕方がない。

軍が馬鹿でないことを祈ろう。


携帯情報端末機を見ていると多種多様、ピンからキリまである。

タブレットサイズから手の平サイズまで。自分の好みに合わせて選べるようだ。そこは日本の携帯ショップと同じだ。デザインだが、殆ど同じ。というから、一面液晶で、全てタッチパネル。サイドにボタンなどない。SIMカードとかメモリーカードとかも入れるところがないのだ。だから、デザインを弄るところもなく、後は色や性能や大きさで選ぶしかない。それと金額と。2万ニルから50万ニルと書かれている物まであった。


「この値段の差はなんだ?」


性能らしきものが横に書かれているが、それが良いのか悪いのかわからならい。

使われているチップも聞いたことがないものばかり。

まるで参考にならなかった。


俺が商品の前で悩んでいると、いつの間にか店員さんが俺の後ろに立っていた。


「何かお探しでしょうか?」


一瞬、ビクッとした。

俺が気がつかず接近を許すとは……何者?

探知魔法に反応がなかった。


「えーっと……」


俺が言い淀んでいると、お姉さんがニコッと微笑んだ。背筋がゾクッとした。良い意味ではなく悪い意味でだ。

よく見ると、蒼い髪のショートカットで短めのスカートを穿いている美人なお姉さんだが、何かが違う。雰囲気か?

普通なら喜んで話すのだが、思わず一歩後ろに下がってしまった。

顔には出さないが、ちょっとだけ警戒した。


「携帯端末が壊れて新しいの買おうと思って。それで聞きたいのだが、どうして値段に差があるのだ。2万から50万の差ってなんだ?」

「それはですね、最新で性能もさることながら対応している惑星が多いという点ですね。値段が安いのはこの国でしか使えませんが、値段が高い物は他国でも使用できるようになっています」


国によって通信方式が違うので、それに対応できる物が高いという。

国際通信に対応、ということらしいが、よくわからない。

それ以外にも、チャージしてあるお金をその国の通貨に両替してくれる機能もあるらしく、態々、両替所に行く必要もないという。

国を跨いで商売する商人には必須のアイテムらしい。


「確かに便利だが……」


他の惑星に行くのであれば高額な携帯を買った方が良いが、でもちょっと気になったことがある。

それはセキュリティーだ。

携帯端末を使ったことで居場所が分かるようでは困る。これから逃げないといけないのだから。


「個人情報はどうなっているのだ?」

「OSは最新のものになっておりますので、個人情報が盗まれることはありません」

「例えば、俺がチャージしたお金を使った場合、どこで使ったか後でバレたりするのか?」

「ああ、人には言えないような店で買った場合ですね」


ニヤッと笑うお姉さん。「男性ですものね」と言ってひとりで納得して頷いていた。


「いやいや、そういうのじゃないんだが」

「フフフ、大丈夫ですよ。わかっていますから」


俺の話も聞かず、説明を始めた。


「チャージしたお金を使った場合、個人情報は相手に伝わりません。お金のやり取りだけですので。ただし、電子カードでしたら別です。カード会社に情報が送られますので誰が何を買ったか分かってしまいます。バレないようにするには難しいですね」


ふむふむ、電子カードを使うのは駄目ということか。

といってもカードは持っていないから関係ないけどね。


「端末情報から漏れる心配は?」


携帯端末にそれぞれ個別IDがあるはずだ。それを調べたら俺に辿り着くことは可能なはず。その情報が伝わってしまえば意味がない。それを懸念した。


「携帯端末には識別番号が振られていますので、そこから調べることは可能です。ですが、識別番号と個人情報が紐付けされていなければ個人情報は漏れません。お客様が端末に、お名前やカード番号など個人情報を登録しなければ識別番号から調べることは不可能です。分かるのは「いつ、どこで、その端末が使用され、何を買ったか」だけになりますね」

「識別番号から使った場所は特定できるわけだな?」

「個人情報は漏れませんが、使ったお店は分かるでしょう」


ということは、ここでも俺が携帯端末を購入しても、識別番号が軍に漏れてしまえば、どこで使ったかバレてしまう。

逃亡先で使えないということだ。


「無理か。できれば一つ欲しかったんだが……」


俺が真剣に悩んでいると、お姉さんが俺の耳元でボソッと囁いた。


「識別番号を書き換える裏技がありますよ」


思わずお姉さんの顔を凝視してしまった。

そんな裏技あるのか?

もう少し詳しく聞いてみた。


「あるアプリを入れると、識別番号を自由に変更できるんですよ。ただし、変えてしまうとそれまでチャージしていたお金は消えてしまいますが」


チャージしたお金は大手銀行で管理されており、入出金の情報は端末の識別番号でしているそうだ。だから番号を変えると、今までの情報が使えなくなり、当然、チャージしたお金も消えるということだ。簡単に言えば、口座番号を変えるようなものだと言う。


「識別番号には個人情報は入っていませんので、紐付けされていなければ変えても誰か分かりません。自由に変更できるんですよ。ただし、違法になるのでこっそりと使って下さいね」

「そのアプリはどこで落とせるのだ?」

「それは購入したらのお話ですね」


営業スマイルでニコニコしなが言う。

商売上手だな。お手上げだ。




ご覧いただきありがとうございます。

ストックがある間は、小まめにアップしたいと思います。

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