第135話 ニルブルク星系①
それから全ての検査が終わり、正式なIDを取得したのは10日後のことだった。
ここで少し休めたことはクルーに取っても良かったのか、入港時と比べて顔色も良くなり少し落ち着いている感じがする。
時間が解決したというところかな。
その間も情報収集は続けたが、これといった情報は手に入らず、星系軍の艦隊がニルブルク星系に向けて出港したぐらいだ。
俺たちも後を追うように出港したが、向こうは亜空間ハイウェーが使えるので追いつけるわけがなく倍以上の時間をかけてニルブルク星系に到着した。
既に星系軍はおらず、星系外で帝国軍が待機しているだけだった。
「星系内に入った。エミリー、情報収集を頼む」
「もうやっているわ」
それを聞いてグランパーが頷いた。
ちょっとブリッジ内がバタバタしているが、帰ってきたことで活気付いてる。
嬉しそうに笑っている者や、まだ状況がわからないので不安げな表情を浮かべている者もいる。
その中で冷静なのはグランパーだけだった。
彼だけがモニターを見ながら的確な指示を出している。
「本艦は入管ステーションへ向かう。リュック、進路の入力を頼む」
「了解」
「レーダーに反応は? ミディア」
「反応はありません」
今回はミディアにもブリッジに入って貰ったようだ。
俺は初めて会うが、普段はサブブリッジで情報収集のサポートをしているそうで、エミリーよりも若い女性だった。金髪のポニーテールでちょっとぽっちゃりタイプ。美人と言うよりはかわいい系と言う感じかな。これまたモテそうな容姿だった。
「時間がかかったがここまで来たな。いや、帰ってきたと言うべきか」
ロズルトがサブシートに座り、グランバーと疲れた表情で会話している。
みんなの表情は明るいが、やはり残された家族が心配な者もいるようで、黙々と仕事に集中している者もいた。
「そうだな。でも、まだ終わりじゃない。これからが大変なんだぞ」
「わかっているよ、そんなこと。でも、ここまでくれば情報は集まるのだろ?」
「たぶんな。ある程度のことは掴めるだろう。後はその結果次第だ」
グランバーの表情が少し強張っている。これからが本番だとわかっているからだ。
「博士。艦の方は?」
「前の入管ステーションで整備したので問題ないぞ。ジェネレーターの方はわからんがのう」
検査を受けるにあたりドックで整備した。
ただ、ジェネレーター回りだけは謎のままなので整備はできていない。
それを心配しているのだろう。
俺からしてみれば気にしなくても良いのだが。
「それに関しては大丈夫だ。気にせず他の管理を頼む」
そう言ってチラッと俺の方を見る。ジェネレーターの管理はダンジョンコアがしていることを知っているからだ。
俺は肩をすくめて知らん顔をした。
理由を説明するつもりはないからだ。
「それで、なにか情報は集まったのか?」
俺はグランバーに尋ねるが首を横に小さく振るだけだった。
着いたばっかりだし直ぐには集まらないだろう。
しばらくはブリッジで待つことにした。
「そう言えば誰から聞いたのか忘れたが、亜空間通信用の施設は簡単には作れないものなのか? 沢山あれば通信に困ることもないと思ったんだが」
ついでなので魔道具の情報収集をする。
コアにも頼んであるが聞いた方が早い場合もある。なので時間があるので尋ねてみた。
あれだけの物だから色んな事を知っているだろう。
調べるより早いかもしれない。
「あれは簡単には作れる物では無い。建造するのに必要な資材が足りないらしく、どこの国も困っているらしいぞ」
ロズルトが教えてくれた。
「必要な資材?」
「ああ、何でも特別な石だとか。それが無いと起動すらしないらしい」
特別な石? 魔石のことか?
でも、あれだけの物を動かしているんだから魔石はあると思っていたのだが……違うのか?
別な方法で起動しているということか。
いや、魔力を与えるだけであれば鉱石だけでもいけるか。
魔素の濃い鉱山から取れる魔鉱石で。
特別な石とは魔道具に嵌める魔石のことを言っているのだろう。それがないから起動できないと言っているのだ。
だが、魔石か……。
あれは魔物から取れる物だからな。
この世界に魔物がいなければ無理だろう。絶対に集まらない。
「亜空間関係の核の部分はブラックボックスになっていると聞いたが、みんな知っているんだな」
「仕組みや製造方法までは公開されていないが、必要な資材情報は公開されているよ。集める必要があるからな」
「その石は自分達で作ることができないのか?」
「よく分からないが、そんな単純な物ではないことはわかっている。いくら解析してもよく分からない物質で、たまに辺境宙域の未開発惑星で見つかることがあるそうだが、殆どが砕けていて使い物にならないとか。俺が知っているのはそんなところだぞ」
グランバーも黙って聞いている。
何も言わないということは、それ以上のことは知らないということだ。
「うーん……」
やはり魔石のことか。
砕けて使い物にならないと言うことはそうだろうと思う。
だが、魔鉱石から魔石は作れないのか?
前の異世界では普通に作っていたようだが……あれは錬金術師が魔石に作り変えていたんだっけ?
魔鉱石を削って作るだけではだめで、何か魔道具に入れて魔力を注いで魔石に換えていたような……。
うーん、思い出せないな。
その魔道具が残っていれば作れたかもしれないが。
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