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第132話 入管ステーション④


入管ステーションに入港し1週間が過ぎた。

ドックで検査を受けて船検書を発行してもらっている最中だが、思いのほか難航している。

その原因は、この船が古代船だからだ。

他の船と構造が違うので、その検査に時間がかかっていた。

正規品を使っていればデータはあるのでそれほど時間はかからないらしいが、何もないとなると調べるのに時間がかかる。特に古代船のジェネレーターは一点ものなのでデータがない。安全基準を満たしているか検査が必要なんだとか。

博士も協力して検査をしているが、もう少し時間がかかるそうだ。



やることもなく暇つぶしにブリッジに上がると、エミリーがシートに座り、ひとり何やら忙しそうにキーを叩いていた。

背後に回りモニターを見るとマップやらメールやら開いており、今も検索サイトみたいなもので調べていた。

入港してから休む暇もなく情報収集を続けている。彼女にしてみれば珍しく少し焦っているように見えた。


「何か動きはあったのか?」


彼女が振り返り俺を見ると、元気なく微笑んだ。

疲れているのかな?

根を詰めすぎなければよいが。


「ここの星系軍の偵察部隊がニルブルク星系に向けて出港したわ。亜空間ハイウェーを使ったみたいで早ければ明日明後日には向こうに着くかしら」


ブリッジにはエミリーしか残っておらず、他のクルーは休暇となっていた。

出港まではこのステーションで自由に過ごしてよいことになっており、初めて宇宙ステーションに来た者は物珍しさに出掛けていた。


「帝国軍は?」

「星系外に集まっているのは確認したわ。かなりの数が集まったみたい。もしかしたら奪還作戦でも始めるかもしれないわね。それぐらいかしら」

「奪還作戦か。向こうでやってくれるのであれば俺たちの出番はないな」

「そうね。やってくれるのであれば私たちは結果を待つだけで良いけれど、でも、強行とかされて都市が壊滅とかは止めて欲しいわ。惑星を抑えているということは人質を取っているようなものだから」


全惑星市民が人質か。

惑星を占拠するということはそういう意味でもあるのか。

そうなると迂闊に手は出せなくなる。

膠着状態になるかもしれないな。


「市民を避難させないと攻撃もできないということか」

「避難させると言っても(そら)から攻撃されたら逃げる場所もないわ。山の中とか森の中ぐらいかしら。都市に居れば巻き込まれて死ぬだけね」


戦艦の大型レーザー砲を食らえばシェルターなど意味が無いと言う。

一瞬で蒸発して骨も残らないとか。


「手も足も出ないということか……」

「領主殿が市民の命を第1と考えてくれていれば良いけど、奪還だけを目的としたらかなり危ないと思うの。報復として市民を攻撃するかも。それだけは避けて貰いたいんだけど……」


心配そうに話すが、そればかりは俺たちでは何とも……。

伯爵にお願いするしかない。


「それで、惑星の情報はどうなんだ? 何かわかったか?」

「何もわからないわ。情報規制されているのかも知れないわね。それか通信施設が抑えられて何も発信できないとか。どちらかというと後者のほうかもね。何も聞こえてこないのは不自然だから」


通信設備が生きていれば何かしらの発信があってもよさそうだが、そういった物が何もないと言う。だから故意に止められているのではないかと。

そうなると何もわからないということだ。


「困ったな。そうなると惑星まで行った方がよいのか?」

「ドラギニス軍の動きがわからないと何とも言えないわね。見つかったらタダでは済まないだろうし見逃してくれるとは思えないわ。こっちは戦艦だからね」


そうだよなあ。

小型の宇宙船なら見逃してくれるかも知れないが、戦艦を見逃すほど甘くはないだろう。

攻めに来ていると思い攻撃してくるはず。

見つかり次第撃沈だな。


「見つからず行く方法はないのか?」

「監視衛星が死んでいれば近くまではいけると思うけど、ドラギニス軍が復旧させて利用しているかも。そうなると近寄ることもできないわね。待ち構えていることになるから」


星系内には至る所に監視衛星があり、近くを通ると通報されるそうだ。

それを避けて通るのは難しいと言う。


「そうなると調べる方法は無いと言うことか……」

「後は星系軍の通信を調べるしかないわね。丁度偵察部隊が向かったことだし、その通信を傍受すればある程度はわかるかも」

「でも、それって違法だろ?」

「そうね。軍の通信を傍受して解析することは違法だわ。でも、見つかればの話しだけど」


そう言ってニコッと微笑む。

やる気満々のようだ。


「そんなこともできるのか?」

「それはこの艦のAIに解析して貰うしかないけれど……できるかしら? できなければ自分達でやるしかないんだけど……」


それだと時間がかかるのでやりたくはないそうだ。

そういうのは情報部の仕事なので、得意ではないという話しだ。


「AIってこの古代船のAIのことか?」

「そう、できるかしら?」

「さあ? 聞いてみないことにはわからない。そんなに優秀だとは思えないが」


そういうえば前に帝国軍の通信を傍受していたな。

可能か不可能かと聞かれたら可能だと思うが、でも、あまり表には出てきて欲しくはないんだよね。みんなには内緒にしてあるんだから。


「後で聞いてみるよ。それよりも少し休んだらどうだ? 働き詰めだろ?」

「大丈夫。夜はきちんと寝ているから。それよりもシューイチはどうなの? こんなところに居なくても遊びに行けば。みんなステーションに行っているみたいよ」

「俺はいいかな。前回行ったし、騒がしいところは好きではないのでね」


宇宙ステーションには遊ぶところもちゃんとある。

大人の歓楽街でストレスを発散させる所だ。こういう所は金持ちが集まるので良い稼ぎになるとか。

溜まっている連中は行っているみたいだが、気分が乗らない連中は食事や飲みに行っているだけとか。

状況が状況だけに、楽しんでいる余裕がない者も多いようだ。


「ところで博士はまだ調査を?」

「ええ、ここのドックの人達とジェネレーターを調べているわ。見たことがない物だがらここのドックの人達も興味津々で調べていたわよ。博士のお仲間が増えたみたいにね」

「またそれは厄介な。出港が遅れなければよいけど」

「そうね。みんな早く向かいたいみたいだし、予定通りに終わらせてくれると助かるんだけど……」


エミリーが眉間に皺を寄せて困った顔をしている。

技術者というのは気になったらとことん調べるからね。特に博士と同類ならなおのことだろう。

予定より時間がかかるかもしれない。

この後はちょっとした雑談をしてからサーバールームに向かった。


ご覧いただきありがとうございます。


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毎日ぽつぽつと書いています。

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