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第131話 作戦変更


伯爵の執務室に呼ばれて来てみれば作戦の変更だった。

調査団の人選も終わり部隊を集めていたが、それも見直しとなった。


「今の部隊だけでは足りないと?」

「そうだ。今回の作戦はニルブルク星系の奪還作戦だ。今の数では足りない」

「え? 奪還ですか? 当初の予定では調査団を派遣し、ニルブルク星系の現状を調査すること。それにより違反があれば領主代行を拘束すること。他にもニルブルク星系軍の内偵調査も含まれていたと思いますが……」

「全部中止だ。それどころではなくなった」


ベルカジーニ伯爵は少しイライラしながら話している。

何か問題があったようだ。


「ニルブルク星系がドラギニス公国の手に渡った」

「はあ?……侵略されたのですか?」

「無条件降伏したそうだぞ、ニルブルク星系軍は。今は亜空間ハイウェーを守るために帝国軍が星系外に集結している。我々のやるべき事は帝国軍が参戦する前にニルブルク星系を奪還することだ」


聞いていた話しと違うことになっていて驚いた。

最初に聞いた話しでは代官代行が増税をし戦艦を勝手に作っていることだった。

それに軍の一部も手を貸していること。

その調査のはずだったが、まさかの星系奪還作戦になるとは。

今いる部隊では対応できない。


「我々の部隊だけでは足りません。増援を求めませんと」

「わかっている。だからバディス司令官には他の星系軍からも部隊を収集し、それを引き連れて奪還して貰いたい」

「総司令官と言うことですか?」

「全権を君に与える。速やかに部隊を集めて、早急に奪還して貰いたい」

「ですが議会の方は?」

「それは大丈夫だ。皇帝陛下からの勅命だ。議会を通さなくてもよい」

「こ、皇帝陛下ですか?」

「ああ。情けないことにこの話しは皇帝陛下から聞いた。私は何も知らなかったのだ」


伯爵は悔しそうに話す。

詳しく話しを聞けば、情報源は帝国軍で、ニルブルク星系の第3惑星に駐留している部隊から救援要請があったことでわかったそうだ。

なぜ、そこまで気が付かなかったというと、亜空間通信が使えなかったことで監視衛星が役に立たなかったことが原因だ。その隙を突いてきたという話で、第2惑星で作られた戦艦も関係しているとか。

それを見逃してきたことでここまで話が大きくなってしまった。

それで皇帝陛下の耳に入ったということだ。


「帝国軍が見逃していたとは……」

「今回は向こうの作戦が巧妙だったのだ。亜空間通信が使えず、警備の穴を突いてきた。それに戦艦というイレギュラーなもので注意を引きつけられた。その隙に侵攻したということだ。文句は言えない。その戦艦を建造したのは我が星系軍なのでな」


元をたどれば我が軍に責任がある。

文句を言うのはお門違いということか。


「了解しました。しかし、ニルブルク星系がドラギニス公国の手に落ちたとは、信じられないですね」

「うむ、私も当初話しを聞いたときは耳を疑ったが、帝国軍からもたらされた情報では、ニルブルク星系軍の司令官が裏切っていたそうだ。それで手を貸したのではないかと」

「え? まさか、司令官が裏切っていると? そんなはずは……」


そういえばニルブルク星系の司令官はザイラ・バーツ大佐だったはず。

なるほど彼か。それでは否定できない。

彼ならあり得る話だと思ったのだ。


「ザイラ・バーツ大佐ですか?」

「ん? 彼を知っているのかね?」

「ええ、会議で何度か顔を合わせましたから。それに自分が帝国軍に居たときに一緒に戦った仲間です。ですが、特別仲が良いというわけではなく、ただ、頭は切れる男だというのは知っています。彼が立てた作戦で戦場が引っ繰り返ったこともありましたから」


敗戦濃厚の戦場で、彼が立てた作戦で勝利したこともあった。

だが、当時の上司からは出過ぎた真似をしたことで反感を買い、後方に下げられていた。誰でも功績を上げたいものだ。彼は、そういった連中からは煙たがれていた。

そういったこともあり、軍に対して不満があった。

それだけが原因だとは言わないが、上層部に対し嫌気が差していたのも事実だ。

帝国軍の上層部は軍関連の門閥貴族で仕切られており、庶民の出自である彼は何かと馬鹿にされていた。そして邪魔者と言わんばかりに今の地位を与え、辺境に飛ばしたのだ。

司令官になったので見た目は出世のように見えるが、中身は左遷されたようなものだ。

帝国軍から星系軍に移動させられたのだから。

これで文句を言わない方がおかしいと思う。

だから裏切ったと聞いた時は納得したのだ。


「それなら話しは早いな。実は彼の捕縛命令も出ている。国家反逆罪で第1級犯罪者だ。捕まれば死刑は避けられないだろう」


第1級犯罪者ということは生死を問わずか。

ここまでしたのであれば仕方がないか。

こんな方法でしか自分の存在をアピールできないとは悲しい奴だ。

彼ほどの頭があれば、別の方法で返り咲くこともできただろうに。


「彼がどこにいるか分かっているのですか?」

「わからない。第2惑星にいるかも知れないし、もう逃げてドラギニス公国にいるかもしれない。何しろ亜空間通信が使えないので情報が集まらないのだ。我々が持っている情報も帝国軍から提供されたものだ。帝国軍は亜空間通信が使えるから我々よりも早く情報を集めることができる。こっちは2手3手後手を引いている状態だ。だから一刻も早くニルブルク星系に向かって貰いたいというのがある」

「ドラギニス軍艦隊の規模はわかっているのですか?」

「星系内の情報はまったくと言って良いほど上がってこない。恐らくだが亜空間通信以外にも超高速光衛星回線も落ちているかも知れない」

「規模がわからないことにはどれだけの部隊を集めればよいのか……」

「偵察部隊を先に派遣し、情報を集めるのもよいだろう。取りあえず、一刻も早く奪還することだ。遅くなれば帝国軍が介入してくる。それだけは避けたいのでな」

「はい」


帝国軍と星系軍はあまり仲がよいとは言えない。だからその前に終わらせたいのだろう。

それに、帝国軍の力を借りるということは領主にとって屈辱だ。統治能力を問われ、後で処罰されるかもしれない。いや、ここまで話しが大きくなっているのであれば処罰は確定か。それなら少しでも罰を軽くしたい。

そういう思惑が伯爵にはあるのかもしれない。




執務室をでると、領内に配置されている各星系軍の司令官と連絡を取り、多くの部隊を回して貰うことになった。

最初は渋い顔をしていたが、状況を説明し、皇帝陛下から勅令が出ていることを教えると、手の平を返したように協力的になった。

自分の部隊が戦場で活躍すれば皇帝陛下の耳に入ると思ったのだろう。

浅ましい連中だ。お互いの足を引っ張らなければよいが。


それから部隊を再編成し、足の速い艦を集め、先に偵察部隊を派遣することにした。

今回は皇帝陛下から亜空間ハイウェーの使用許可が下りている。移動に関しては問題ない。

後は手に入れた情報でどう動くか……。

まさか、あんな辺境で戦争になるとは。いや、辺境だからこそ付け込まれたのかも知れないな。監視が甘いと思われたのだ。

現に侵略されるまで気が付かなかったのだから、はっきり言ってこれはこちらの落ち度だ。

こうなる前にこちらからも調査団でもだせば気が付いたかも知れないが……。

こうなっては後の祭りだな。


「ザイラ・バーツ大佐か……」


全て彼の作戦で動いているのだろう。でなければこうも上手く行くはずが無い。

味方にいるときは頼もしいが敵になるとやっかいだ。

まさか彼と戦うことになるとは夢にも思っていなかった。



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