第12話 ショッピングモール①
朝起きると直ぐにチェックアウトした。
受付のおっさんに隣街の行き方を聞いたら地下鉄が走っていると教えられた。
街の中央広場に入口があるとのことで、そこを目指す。
「ああ、そうだ。携帯端末が必要だな。支払いは電子マネーなんだろうから」
基本、キャッシュレスだと思って行動した方が良いだろう。
カードが作れたら良かったのだが、この世界に戸籍も何もない身分なので作るのは難しい。審査とかあれば通らないだろう。
紙幣や貨幣も使えると思うが、昨日みたいに怪しまれる可能性もあるし、使えば目立ってしまう。取ったカードが使えれば良かったのだが、この惑星では使えないらしい。やはり携帯端末をどこかで手に入れなければなるまい。
「携帯端末を扱っているショップか……ショッピングモールがあればよいが」
街の中心部に向かって歩きながらお店を探した。
まだ時間が早いせいか、殆どの店が開いていなかった。
「うーん、まいったな。どこかで時間を潰すか……。そういえば朝飯も食べてないし、飯でも食べるか。でも、支払いが面倒なんだよな。硬貨や紙幣は使いたく無いし……ん? 付けられている?」
宿を出てから同じ服装の奴が俺と一定の距離を保って歩いている。追い抜くわけでもなく、距離が開くわけでもない。そして視線は俺をチラチラと見ていた。
「身に覚えがあるとしたら昨日の事しかない。俺の顔がバレたと思った方が良さそうだ」
意外と早かったな。いや、通信技術が発展していればこんなものか?
探知魔法を使い、人の動きを確認する。
一定間隔で付いてくる奴が3人いる。チラッと見たが普通の恰好の一般人で軍服などは着ていない。一見、監視しているだけにも見える。
このままずっと後を付けられるのも気持ちが悪いが、だからといって巻いてしまうにも問題がある。相手に気づかれていると知れると捕り物劇に発展しかねない。
しばらくは気付いていない振りをするしかないか。街の中でドンパチするわけにもいかなし。
中央広場に近づくと動きがあった。
軍服を着ている人が少しずつ増えている。
俺の目的先が地下鉄だとわかり、逃げる前に捕まえようとしているのだろう。逃亡犯になった気分だ。いや、逃亡犯か? 兵士と戦って全滅させたのだから。
「このまま進めば争いごとになるのは必須だな」
道を変える。
広場から離れるように街の外周へと向かう。
俺が方向を変えたことで兵士が一斉に移動し、先回りをしようと始めた。兵士が大型のレーザー銃を持って走って行く後姿が見えた。
「もし、昨日の戦闘が見られていたのであれば、あの重装備は当然の対応だな」
普通のレーザー銃では倒せないと判断したのか。このまま戦えば市民を巻き込んで被害は甚大になる。
ただ、向こうも市民がいる前で発砲するようなことはしないだろう。死傷者が出てしまえば市民を敵に回してしまう。だから誰もいないところに行くまでは手を出すことはしないはずだ。
指揮官が馬鹿でなければだが。
「ん? あの大きな施設は……」
10階建ての巨大な施設があった。
駐車場があり、市民の人影がチラホラと確認できる。
「ショッピングモールか……」
俺はニヤッとした。
敵を撒くには丁度良いところを見つけた。
中に入れば大勢で押しかけるのは困難だろう。特に軍服を着ていれば目立つしね。
それに市民がいればそこに紛れ込むことも可能だ。そうすれば俺の魔法が使えるということ。他にも俺が欲しい物も売っているかも知れない。
「さて、逃げ込むか」
先回りされないように急ぎ足で移動した。
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