第127話 今後の方針①
領都を出てから追っ手も来ず、何事もなく合流ポイントに到着した。
宇宙に出てしばらくしてグランバーからメールが届き、帝国軍と接触した旨が書かれていた。
詳細は会ってから話すとのことで、メールを読みしだい帰還するようにと指示が出ていた。
それは領主と面会できなくても、という内容で、早い話、中止ということだ。
どうしてそうなったかは分からないが、それを読んだ全員がビックリしていた。
もうちょっと早く言えよ!
と、思ったのは俺だけではないだろう。
それでもエミリーは美味しい物を沢山食べていたので、それほど怒ってはいない。それどころか「もうちょっと長く泊まっていたかったなあ」とぼやいていた。
そういうことはロズルトが居ないところで話して欲しい。青い顔して片腹を押さえていたぞ。
ホテル代が自腹だったらどうなるのか。
結構長い期間泊まっていたからね。高額請求は逃れられないな。
待ち合わせ場所に到着したが、戦艦ウリウスの姿が見つからない。
あれっと思い、ロズルトが宙域マップを見ながらメールを確認していた。
「メールの日付は昨日だったな。もう宙域内に到着していてもおかしくはないはず。俺もメールを返したし、返信ではこの宙域で待っているはずだが……」
指定された宙域は入管ステーションの近くで、しかも通信エリア内だ。見つかる心配をしていたが、それは帝国軍と話して解決したそうだ。
指名手配は解除され、探し回っている艦はいないらしい。
帝国軍に脅えることはなくなったということだ。
「レーダーに反応よ。識別信号を確認したわ……ウリウスね。ちょっと位置がずれていたみたいだけど合流できたわ。連絡をしてみる」
エミリーが向こうのオペレーターと連絡を取った。
「……長かったな」
ローズが疲れた感じでポツリと言う。
そういえば出発してから1ヶ月近くは経つのか。
諜報部の2人は若いからなのか、ニコニコして外を見ている。何だかんだ言ってもこの2人の働きが一番大きいのでは。
ハッカーと連絡がついたのも彼らのおかげだし、有益は情報を多く持ってきてくれた。彼らが居なかったらここまでスムーズに事が運ばなかっただろう。陰の功労者というやつだな。
一番働いていないのは一番楽しんだ人だと思うが、彼女の名誉のために言わないでおこう。
みんなもそれで納得しているようだし。
「着艦許可が下りたわよ!」
彼女はいつでも元気だ。
ロズルトはくたくたなのに。
「よし、向かおうか。ローズ頼むよ」
「了解した」
ウリウスに向けて舵を切った。
着艦して直ぐに分かったことは歓迎ムードではないってことだ。
任務は成功したとメールしておいたが、誰ひとり出迎えてくれる人はいなかった。それどころか視線を向けると全員が背ける。
何かあったとしか思えない。
俺たちは報告を兼ねてグランバーへ会いに向かった。
船長室に入るとグランバーは席を立って出迎えてくれた。
笑みを浮かべ歓迎してくれている。
ふむ、こっちは至って普通だな。
では、なぜ艦内があんなに暗いのか。
首を捻るしかなかった。
「任務ごくろう。上手くいったそうだな?」
ロズルトとグランバーが握手する。
この世界も普通に握手をする習慣はあるそうで、挨拶としては一般的なんだそうだ。ただ、人族だけの習慣なので相手を見てやらないといけないらしい。
種族によっては、体に触れることが禁忌とされることもあるので注意が必要だと。
でも、俺から握手を求めることはないのでその心配はしていない。
握手は苦手なのでね。
「それは何とか。最後はシューイチひとりに任せてしまったが、会って渡す物は渡した。現状も報告したそうだぞ」
「フ、まさか上手くいくとは」
「失敗すると思っていたのか?」
「難しい任務なのは分かっていたからな。手の打ちようがなく途方に暮れているかと思っていた」
「例の魔法を使った成果だな。俺たちだけでは無理だった」
簡単にどうやって侵入したか説明した。
「配送業者に化けたのか?」
「警備が厳しくてそれしか方法がなかった。でも、無事に会えたのだから成功したと言っていいだろう」
「どんな形にしろ会って話しができたのであればそれで良い」
グランバーには珍しくロズルトを褒めていた。
普段はあまり人を褒めないのだが、今日は全員を褒めていた。
「ところで話は変わるが、領主殿からは何か聞いていないか?」
「ん? いや、別に何も。気になるようなことは聞いていないと思うが」
ロズルトが俺の方を見るが、俺は首を横に振った。
何も聞いていないからだ。
「そうか……」
少し眉間に皺を寄せて考えている。
何かおかしい。
帰ってきたときから艦内の空気もおかしかった。
みんなも何か感じ取ったのか、不安な表情を見せていた。
「……何かあったのか? 艦内の空気がおかしいのだが」
ロズルトもその異変に気が付いたようで、グランバーに質問していた。
「ふむ、その感じだと領主殿も知らなかったようだな。帝国軍と接触した時に、ニルブルク星系がドラギニス軍の手に落ちたと聞かされた」
「えっ!」
全員が驚いている。
ローズに至っては口を開いたまま固まっていた。
読んで頂きありがとうございます。
話しが長くなり、編集に時間がかかってしまいました。
申し訳ございません。
ポツポツとアップしますので、気長にお付き合い頂けると嬉しいです。
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