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第120話 ベルンハルド・ベイロンとの対話③


『もう良いか? 何か聞きたいことがあれば答えるが』

「実は閣下。我々は仲間を待っているのです」


ロズルト達が領都に行っていて領主殿と面会を求めていることを話した。

そして無理矢理会おうとしていることも。


『なかなか無茶なことをする。会えるわけがなかろうに。それに捕まれば重罪だぞ。わかっているのか?』

「わかってはいますが、それしか方法がなかったのです」


下流市民が領主に会えないことは誰でも知っている。だが、どうしても会わないと内戦は終わらない。

だから多少の無茶も致し方がなかったのだと説明した。


『フ、やるのは勝手だ。止めはせん。だが、その者が会わなくてもこの件は皇帝陛下より直に連絡がいくだろう。会う意味はなくなるぞ。連絡は取れないのか? 無駄な努力になるぞ』

「やってみます」


あれから日数も経っているし、ここからミグラクス星系までは距離がある。間に合わないかもしれない。

取りあえず向こうに着いてからメールだけはしてみることにした。


『貴艦の協力には感謝する。もう会うことはないと思うが、無茶なことはしないように。我々の手で沈めることがないように頼むぞ』


そう言って通信が終了した。

話を聞いていたクルーから悲痛な声が漏れだした。


「グランバーさん。第2惑星が侵略されたとは本当の事でしょうか?」


ジャックが青い顔で聞いてきた。

他のクルーも気になるのか、全員が俺の方を見ている。


「本当のことだろう。帝国軍が嘘を言うとは思えないからな」


全員が言葉を失って呆然としていた。

中には泣いている者もいる。

この状況では艦を動かすことができない。

全員が落ち着くまで待つことにした。


外を見ると帝国軍の船が移動して行く。

ベルンハルド・ベイロンは約束を守ったようだ。

我々に何かするわけでもなく、撤退していった。




「我々はどうしたほうが良いのでしょう? 惑星に戻ってドラギニス軍と戦ったほうが良いのでしょうか?」


クルーの1人が聞いてきた。

だいぶ落ち着いたようで泣いている者はいない。ただ、表情は暗い。

こればかりはどうしようもない。


「戻ったところで戦艦1隻で何ができる? デブリが増えるだけだぞ」

「しかし……」


歯を食い縛って下を向く。

気持ちはわからないでもないが、我々が行ったところでどうにかなるわけでもない。

古代船とはいえ何十隻という船を相手に戦えるはずがない。それは誰でもわかっていることだ。

それでも行くのであれば、星系軍や帝国軍に付いて行くしかない。そして作戦に参加することだ。

向こうは一隻でも多く戦える船は欲しいはず。自分から協力を申し出れば断る事は無いだろう。

惑星を救うのであれば、それしか方法がない。


「取りあえずロズルト達が帰ってくるのを待とうではないか。その間に我々は情報を集めよう。幸い指名手配は解除された。通信エリアには入れるようになった。だから現在の状況を知ることができる。帝国軍の話しを信用しないわけではないが、星系内の実情を知ることがもっとも大切だ。それとドラギニス軍の動きも知りたい。それにどこまで星系内に入れるか知る必要もある。やることは沢山ある。悲しんでいる暇はないぞ」


クルー全員に聞こえるように大きな声で言う。

確かに我々の惑星が侵略され、帰るところが無くなった。残っている親族や友人の安否も気になるだろう。

だからと言って悲しんでいても状況が変わるわけでもない。

なら、やれることはやっておく。

何かあっても直ぐに対応できるように。




この後はミグラクス星系にある入管ステーションに向けて舵を切った。

情報収集と補給を兼ねて、というのもあるが、この船のIDを所得する必要があるからだ。

IDを発行しているのは宙船管理局になるのだが、入管ステーションにも出張所はあるので、そこで発行して貰えば良い。

ただ、審査に時間がかかるのでその間は移動も何もできない。

それと所有者を誰にするのか、という問題もある。

元々は略奪した物で元の所有者は星系軍になるのだが、向こうが略奪を認めていない。

略奪されたと公表すれば戦艦を建造していたのがバレてしまい帝国法違反になる。だから盗まれても公表はしなかった。

星系軍としては表にできない戦艦ということだ。


そうなると登録した者の持ち物となるのだが、この場合、誰にするのか。

誰でも良いという訳にはいかないし、俺はこんな物いらない。

管理が面倒だし金も掛かる。それにあのAI。面倒なだけだ。

となると、所有できる人物は限られてくる。

彼しかいないということだ。

そうなると外野が黙っていない。

星系軍と戦う戦力をタダであげるのだ。面倒なことにしかならない。


もう少し待ってみるしかないか……。


取りあえずはギリギリまで入港せず、近くで待機して彼らが帰ってくるの待つ。

向こうに着く頃にはロズルト達も何かしら進展しているだろうし、もしかすると領主殿に会って話しが終わっているかもしれない。

結局は無駄な努力になってしまうが、これだけ状況が変われば仕方がないことだろう。

船のことは彼らと合流してから考えることにした。



ご覧いただきありがとうございます。


時間がなくて毎日アップはできないと思いますが、気長に付き合って下さると嬉しいです。

毎日ぽつぽつと書いています。

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