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第11話 小さな食堂③


楽しい食事が終わり、支払いをするとき金貨を出した。

そうしたらおばちゃんに怒られた……。

こんな小さな店で金貨を出されても困ると。

俺が思っていたのと違うのか?

金貨は500円ぐらいの感覚で考えていたがその逆で、金貨が一番価値が高いらしい。1枚で100万円の価値があるとか。驚きだね。


「携帯端末は持ってないのかい?」

「あー、ちょっと壊れてしまって今は修理中だ」


携帯端末の事は分からないが、壊れたことにして誤魔化した。雰囲気的に持っていないのは不味そうだったので話を合わせたのだ。


「金貨を出されてもお釣りが無いよ。銀貨はあるのかい? そういえばカードを持っていたわね。ちょっと見せてみな」


使いたくはなかった、仕方なく出して見せた。


「ああ、ここあるカードは全て駄目だね。この惑星では使えない。通信ができないからね」


今使えるのは、この惑星で発行したカードのみ。他の惑星で作られたカードは決済ができないので使えないそうだ。


「通信が復旧すれば使えるが、今は駄目だね。他に持っていないのかい?」


今度は財布から銀貨を1枚取り出して渡した。


「なんだい、銀貨があるなら最初からそっちを出しな。金貨を見せられてびっくりしたよ。そんな物、持ち歩かない方がいいよ。強盗に襲われるかも知れないからね」


俺は戸惑いながら頷いた。

どうも貨幣についても調べないといけないようだ。


「お釣りは帝国の通貨でいいかい? 生憎と硬貨でのお釣りは用意してなくてね。両替所に行けば紙幣か電子マネーと交換してくれるから、今度はそこで替えてきな。硬貨を出されても困る店も多いからね」


そう言って1000と刻印されている紙幣が9枚返ってきた。

飯代がだいたい1000ニルなので、銀貨1枚で1万ということか。

まさか銀貨1枚と1万紙幣が同じ価値とは。

そう考えると、金貨1枚が100万。銀貨1枚が1万。銅貨は1枚は100ということか?

しかし、お札が使えるのであれば、そっちを出せば良かったか。

硬貨の価値を知るために出したのだが、裏目になったようだ。


「硬貨はあまり使わないのか?」

「嵩張るからね。それに重いし、計算が面倒だから扱う商店は少ないよ。それに普段は電子マネーで精算しているし紙幣すら使うことが無いね。私も久々にお札を出したよ。普段は引き出しの奥に仕舞ってあるからね」


それでも紙幣を使う人はいるのでいくらかは用意してあるそうだ。ただ、硬貨の方は、ほぼ使うことが無いので用意していないという。

それならなぜあの青年は硬貨を持っていたのか?

硬貨より紙幣の方が使用頻度が高いのであれば、硬貨は持って歩く必要はない。おばちゃんも言っていたように嵩張るし重い。

ふむ、理由が分からない。


「お客さん、その恰好で硬貨を持っているということは旅行者でなく商人だったのかい? それにしては硬貨のことや惑星のことも知らんように見えたが」


向こうで死んだときの恰好でこちらに飛ばされたので今の俺はスーツ姿だ。

ただ、ホテルを出るときネクタイだけは外して来たので、目立たないようにはしてきたつもりだ。それでもラフな恰好には見えなかったらしく、そう勘違いしたみたいだ。

でも、それもあながち間違ってはいない。

死ぬ前は貿易商社で働いていたのだから、商人といえば商人だろう。


「まあ、旅行者兼商人だ。今は仕事ではなく旅行中ということで」


適当に誤魔化した。

まぁ、誤魔化し切れてないと思うが。


「でも、なんで硬貨を持っていると商人なんだい? 硬貨は普通は使わないのだろ?」

「何言ってんだい。硬貨は全世界共通通貨だよ。自分の国の通貨が使えなくても硬貨があれば買い物はできるんだよ。それに硬貨しか使えない国もある。そのために持っていたんだろ? 商人なら当たり前さ」


ということは、あの青年は商人だったのか?

だから硬貨を持ち歩いていた。そういうことか。

でも、どうして商人が戦闘機に?

何か複雑な事情がありそうだ。と言っても調べる気は無いけどね。


「誤魔化したあたり、お客さんはこの惑星には商談かい? 今のこの惑星は閉鎖されているから来れるとしたら商人ぐらいしかいないからね。でも、違うなら長居はしないことを勧めるよ。いつどこで戦火に巻き込まれるか分からないからね。用が済んだら早くこの惑星から立ち去ることだね」


おばちゃんは食べ終えた食器を持って奥に消えた。

俺も聞くことは聞けたし、あまりしつこく聞くのも何なので食堂を出ることにした。



*****



ホテルの部屋に戻って来るとベッドに腰を下ろした。

テレビをつけると今日のニュースがやっていた。

内容は戦争のことばかりで、どこかの部隊が勝ったとか、市民をレジスタンスから守ったとか、そんなことばかりを放送していた。俺が全滅させた部隊のことは一言も放送されていない。

ちょっと不自然さを感じたが、軍が放送局を抑えていたらこんな感じになるんだろう。都合が良いところだけを放送して、市民の支持を得ようとしているのがバレバレだった。

しかし、来て早々紛争に巻き込まれたのはちょっと痛かった。

俺としては目立たずに情報収集したかったのだが、まさか送還先が軍事施設とは。

見つかった時点でアウト。敵の諜報員として間違えられても仕方がない。


「何も知らずに軍と敵対したのは不味かったかも知れないな……」


もし、俺のことが軍に知れ渡ったらお尋ね者。レジスタンスの一味ということにされてしまうだろう。

誰かに見られていなければバレる心配は無いだろうが、しかし、科学が進んでいるのであれば、あの戦闘シーンは録画・送信されている可能性が高い。あのヘルメットにはカメラ機能ぐらい付いていそうだからだ。


「取りあえず、この街を一旦離れた方が良さそうだ。他の街でもう一度情報収集だな」


まあ、バレたとしても奥の手があるから何とかなるだろう。

今までそうして面倒事から避けてきたのだから。

明日の予定を決めると、少し早いが休むことにした。



ご覧いただきありがとうございます。

ストックがある間は、小まめにアップしたいと思います。

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