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第107話 エルフ?


空港というだけあってロビーには色んな種族が集まっている。

肌が黄色い人や黒い人、青い人まで、「人か?」というような種族もいた。

そして初めて見た。耳が長い人、エルフ。

この世界にもエルフはいた!

女性のエルフで肌は白く超美人だった。


「人間じゃない人もいるんだな」

「人間じゃない?」


ロズルトが首を傾げた。


「ほらあそこ。エルフだろ?」


俺がその方向に視線を向けて顎で指した。


「ああ、彼女か。耳長族だな。エルフとは言わない」


耳長族は人より耳が少し長いという特徴を持った異星人で、ほぼ人に近い遺伝子を持つことから扱いは人と同じになっている。

特別な能力とかはなく、ただ老化が人よりも遅いことから長寿で、平均で300歳は生きられる。それと容姿端麗でどこにいてもモテているらしい。だからか、奴隷にされて高値で売られているとか。

この国は奴隷の売買を禁止しており売られることはないが、認めている国では人気商品で高値で取引されている。

そういうのがあって、母星から出る耳長族は少ないと言う。

こういうところで見かける方が珍しいらしい。


「どこでもエルフは売られるのだな……」


この話を聞いて、ふと思いだした。

他の異世界でもエルフは人気があり奴隷商で高値で売られていた。特に若い女性のエルフは人気で、1人で家が一軒建つほどの値段だった。

俺が奴隷商で出会ったエルフは違法奴隷で、身なりは綺麗だったが目は死んでいた。

この先のことを考えると失望していたのだろう。明るい未来が待っているとは思えない。

その国は奴隷を認めており、快楽を求めて平気で人が売買されていた。そして人権は認められていない。何をしても良いということだ。小さな子供が売られていく姿を見て、初めて異世界の闇を見た瞬間でもあった。

奴隷制度がなくなれば、と思ったが、奴隷は貴重な労働力として欠かせないもの。無くなればそれはそれで困る人もいる。

法が整備され、奴隷にも人権が認められるようになれば少しは変わると思うが。

人権保護団体でもなければそれは無理だろう。いや、あっても無理か。人権なんて言葉、貴族にしかなかったのだから。


「耳長族のように、人と違う種族というのは多いのか?」

「多くはないが、少なからずともどこかにいる。さっきの耳長族を初め獣人もいる。それとコボルト族。容姿は人間と同じだが肌が青いから一目でわかる」

「コボルト族?」

「獣人よりも人に近い種族だな。肌の色が違うだけ人とは変わらない。獣人は人によって獣耳や尾っぽがあったりする。それと毛深い。見た目で容姿が違うので直ぐにわかるはずだ」


獣人もいるのか。

さすが異世界といったところか。

でも、コボルト族は初めて聞いたな。他の異世界では魔物の部類に入っていたと思ったが、ここで人の部類に入るらしい。

もしかして定番のアレもか?


「ゴブリン族なんているのか? 緑色の肌をした背の低いやつなんだが」

「よく知っているな、ゴブリン族。今は人数が少なく、特別保護人種に指定されている。勝手に惑星外に連れ出すことは禁止されているぞ。だから見かけることはないはずだ」


特別保護人種とは絶滅危惧種と同じようなもので、奴隷の売買や、他の惑星へ連れ出すことを禁止されている種族である。


「あのゴブリンが絶滅保護人種?」


ほっといても勝手に繁殖していたあのゴブリンが?

耳を疑った。


「今では5000人もいないらしいぞ。だから惑星外に連れ出すことは禁止されている。だが、本人が望めば外には出られるらしいけどな」

「ゴブリンと意思疎通ができるのか?」

「当たり前だろ。でなければ特別保護人種には指定されないぞ」


あのゴブリンと意思疎通ができるのか?

見ただけで襲ってくるような奴と?

ちょっと信じられない話しだが、できるからそうなっているのだろう。

異世界といってもみんな同じだとは限らない、ということか。


「色んな人種がいるんだな」

「多くの惑星が存在すれば、何かしらの先住民はいるものだ。後はその種族と仲良くやっていけるかだな」


人に危害を加えるような生物は駆逐されるし、友好的な人種だったら国交を結んで交易をすることができる。

全ての種族が帝国と同じ技術を持っているとは限らない。中には地球と同じ初期文明の惑星もある。

そういう惑星には宇宙進出の手助けもしているらしい。


「全部の惑星が友好的とは限らないだろ? そういうときは滅ぼすのか?」

「そんなことはしないと思うぞ。あくまでも平和的に交渉し、それでも国交を結ばなければ無視するだけだ。脅威にならなければの話しだけどな」


宇宙進出してなければ帝国にとって脅威でもなんでもない。

だから無視するだけだと話す。

その代わり、他国に侵略されも救助はしないそうだ。

まぁ、勝手にやってくれということだ。それによって国が滅んでも知らんということらしい。


「国交を結ばない国なんてあるのか? 宇宙船を見れば誰でも結びたいと思うけどな」

「中には変化を恐れる国もある。色んな人が往来し、新しい文化が流れてくるのだから混乱はするだろう。それに良いことばかりでは無い。経済にも影響するし治安も悪くなる。そういうのを嫌って国交を結ばない国はある」


国交が結ばれ交易が始まれば異国の文化が流れてくる。それにより食生活などが変わり、近代化の波に流されるだろう。それこそ文明開化というやつだ。

それによって大切に守ってきた文化や伝統を失うことになりかねない。

今まで大事にしてきたものを失うのは怖いものだ。

その変化を嫌う者は必ずいる。そういった人が国交に反対する。

かなり揉めて、内戦まで発展したケースもあるとか。

帝国としては強制ではないので、その国の方針に従うのみ。

自分達の生活を守るために、結ばないケースもあるということだ。


「それもそうか。国交を結ぶということは、今までと同じ生活ができるとは限らない。中には職を失う人も出てくる。難しい問題だな。簡単に決められることではないということか……」


近代化が進めば人の代わりに機械が仕事する。

失業者が増えるのは道理というものだな。


「それだけでは無いけどな。惑星によっては国家間で戦争していてそれどころでは無い、なんていうのもあったそうだぞ。協力すれば国交を結んでやるとか。上から目線で、自分達の有利になるような条件を突き付けてきた国もあったとか。当然、そのような惑星は無視したそうだが、結局はその国は他国に滅ぼされたとか。国交を結び友好国となれる惑星は数が少ないと聞いた。なんせ文明の差があり過ぎて国交どころではない惑星も多いという話だし」


初期文明惑星は扱うが難しいと言う。

原始時代だと帝国の科学力はオーバーテクノロジーで宇宙船はオーパーツ扱いだ。

壁画に(えが)かれるような文明では宇宙進出は難しいだろうし、交易もできないだろう。国なんてものは存在しないわけだし。そうなると自分達で管理しなければならない。


空から来た人が原住民を管理する。


争いしか起きない。

いくらか教養があれば共存の道もあるかもしれないが、知識もなく本能で動く原始人を纏めるのは無理だろう。素直に従うとは思えない。反発しか無いということだ。

その惑星に有益な資源が眠っているのであれば、侵略して、国の監視下に置くこともできるが、そこまでする必要があるのか、という話になる。

帝国の技術力があれば侵略など一瞬だろうが、原住民を殺してまで奪うのではやっていることは海賊と変わらない。法治国家がやることではない。

だから扱いが難しい。

惑星全土が統一されていて代表者がハッキリしていれば国交を結べるが、そうでないと国家間のバランスが崩れ、戦争の火種になりかねない。一国だけに肩入れする事はできないということだ。

今の地球でさえ、一国に肩入れすれば他国の反発は免れない。自分だけ良い思いして、ということになる。

国交を結ぶのであれば全部の国で、ということになり、すごく面倒なことになる。

代表を決めて、なんて言ったら戦争一直線だ。どの国も自国を押すだろうし、他国に帝国の技術を学ばせたくはない。世界の軍事バランスが崩れる可能性があるから簡単には容認できない。

今の地球では国交を結ぶのは無理だろう。仲良し小好しというわけではないからな。


「帝国の版図にはそういった惑星は組み込まれているのか?」

「宙域マップには我々で勝手に付けた名前で載っているが、帝国の領地ではないので版図には組み込まれていない。初期文明惑星として扱われているはずだ。それと接触禁止惑星として指定されているはず。勝手に接触して惑星が滅んだ、なんていう事もあるらしいからな。注意が必要だ」


新しい惑星を発見しても、勝手に接触してはいけないらしい。

生命が存在しない惑星なら良いが、原住民が住んでいるような惑星は国が監視・管理する。

なので報告だけが義務づけられている。

それでも発見すれば報奨金が貰えるので悪い話しだけではない。


エルフの話しから逸れたが、文明に差があると国交を結ぶのは困難だとわかった。

そういう惑星は監視だけし、放置というのがこの世界のルールというか帝国の方針のようだ。

変に接触して混乱させても、というのが理由らしい。

そうなると、国交を結べる国なんて数が少ないだろう。そして国交を結べた国がこうして宇宙に進出して、空港で見かける、ということだ。

空港は世界の玄関口だからね。

この先も色んな種族が見られるのかもしれない。



ご覧いただきありがとうございます。


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更新頻度は下がると思いますが、気長に付き合って下さると嬉しいです。

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