第106話 空港
自動操縦で23番発着場に着陸すると、船が横に動き出した。
「船が勝手に動いているが?」
「ああ、格納庫に運ばれているんだよ」
離着陸できる場所は限られているので、直ぐに場所を空けなければならない。
だから着陸すると同時に格納庫に運ばれる。
「へえー、こうやって格納庫に運ばれんのだ」
外を見ると同じように運ばれている船が見える。
着陸した場所は大きなプレートになっており、それごと運ばれるシステムになっていた。
「宇宙船は地上で乗るには不向きだからね。小回りが利かないから」
宇宙船は垂直離着陸ができるため、車輪を取り付けていない。
だから一度降りると移動するのが大変になる。
1回浮上して自走で移動するか、全体を持ち上げてもらい車輪を付けて、けん引車で引っ張って貰うか、その二択しかない。
けん引車での移動は時間がかかるし人手を必要とするので現実的でない。
なので一度浮上して自走で移動することになるが、格納庫に入れるとなると低空飛行で飛ばないといけなくなり、事故を起こす危険がある。
なので、プレートごと運ぶことになっている。
この方式なら取り付ける時間もかからず、事故を起こす心配もない。
格納庫に運ばれると船が綺麗に並べられていた。その一角に運ばれて同じように並べられる。
出るときはその逆の手順で運ばれるというわけだ。
「船の展覧会だな」
様々な宇宙船がズラッと並んでいる。
長方形タイプから先端が尖っている三角錐タイプまで、色取り取りだ。誰かの顔をモチーフにした変なイラストを描いてある船もある。痛車ならぬ痛船か?
個性があるのは良いが、恥ずかしくないのかねえ。
まぁ、自分の船に描くのであれば文句は言えないが。
「こうやって見ると色んな宇宙船があるんだな」
「ベースになる船は何種類かあるが、元は同じ船だよ。それを自分の好みに合わせてカスタマイズしてあるのさ。だからどれ一つとっても同じ船はないはずだ」
基本となるベースは同じで、後は装甲や武装を変えてカスタマイズしてある。
中にはスラスターやジェネレーターをグレードアップしており、見かけよりも速くしている船もある。戦闘するのであれば速度アップは重要だ。
「この船もカスタマイズしてあるのか?」
「もちろんしてあるよ。俺たちは冒険者だから傭兵と違い戦闘特化にはしていない。未開宙域に行くと何か月も帰ってこられないから、普通よりも燃料や水を多く積めるようにしてある。レーダーを強化し範囲を広げて、鉱物探知機もつけてある。まぁ、探索特化だな。水も自給できるように浄水器もつけてある。時々宇宙空間には氷の塊が浮いているときがあるからね。そういったのも飲めるようにしているのさ」
戦闘よりも生存や探索に力を入れているということか。
目的が違うのだからそうなるよな。武器を増やしても探索の役には立たないし。
「それじゃ、停泊手続きをしてくるよ。ロズルト達はどうする?」
ローズが下船する準備を始めた。
全ての武装をロックし、ジェネレーターを落としている。
「俺たちは街に出て宿を捜す。宿が決まったら後は情報収集だ。個人で動くことになる」
「わかった。では宿が決まったら連絡をくれ。手続きには時間がかかると思うから」
船を預けるには港湾管理局に予定表を提出しなければならない。
何日滞在するのか、ということだ。
いつまで預けっぱなしというわけにはいかない。なので予定期間を過ぎても出航しなかったり連絡がない場合は、他の場所に移動させられ超過金が取られる。レッカー移動されるような物だな。
それでも取りに来なければ没収・廃棄となる。
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