第103話 空港ステーション①
「そういえば空港に入ってからどうするのだ? 何か考えているのか?」
「いや。俺は何も考えていないが。俺の仕事はお前達を無事にここまで連れてくること。そうグランバーから聞いたが」
近くにいるロズルトを見たが目を逸らされた。
あれ? さては何も考えていないな。
まさかと思うが俺任せになっていないか?
嫌だぞ。俺1人で行くのは。
「着いてから考えれば良いのではないか。地上に降りるまでは何できないし、状況が分からないことには計画も立てられないだろ?」
ロズルトが顔を指でボリボリ書きながら言い訳をする。
そう言われるとそうだが……。
「それよりも身分証はどうなっているのだ? シューイチは持っていないだろ。地上に降りられるか分からないぞ。申請しても直ぐに許可が下りるとは思えないし」
惑星に降りるには身分証が必要とか言っていたな。
そうなると持っていない俺は降りられないわけで、ここで待機となる。
「それは困るわね。どうにかならないかしら?」
エミリーがロズルトに問いかけているが、
「無理だな。降下前に船内検査がある。その時に身分証チェックも入るはずだ。持っていないと許可が下りないかもしれない。でも、こういう時の魔法ではないのか? 例の魔法で誤魔化すことはできないのか?」
おっと、また無茶振りしてきたな。
魔法は万能では無いと言っているだろ、まったく……。
認識阻害魔法インヒビションで気付かれなければ良いが、どういった検査をするか内容がわからないことには何とも言えない。
目視だけなら誤魔化せると思うが。
「検査方法がわからないと何とも。どういうった方法で検査するんだ?」
「この惑星は初めて降りるのでわからないが、検査員が乗船し、船内をチェックするはずだ。その時に身分証の提示を求められるので、申請内容と同じなら直ぐに終わる。怪しいと思われたら箱の中まで調べるだろう」
ローズが過去の経験から話しているが、惑星によって検査方法は違うそうだ。
「身分証の提示以外は入管ステーションと同じということだな」
実査に立ち会ったロズルトの話しだと、検査員が乗船し、格納庫や機関室など全部見て回ったそうだ。
箱の中身を聞き、中身を確認して問題なければ終わり。荷物がなければ直ぐに終わる。
機械で調べたりはなかったと言う。
目視だけなら何とかなるかもしれない。
「この船で地上に降りるのだろ?」
「許可が下りればその予定だ。わざわざ乗り換える必要も無いだろう」
惑星に降りられるのは小型の戦闘艦と商船のみ。それ以外は乗り換えて降りる事になっている。
「小型船はいいんだ?」
「それまで規制すると空港に船が保管できなくなる。地上に降りている間は空港に預かって貰わないといけないからね」
数が多い小型船まで制限すると、ドックの数が足りなくなる。だからそれ程脅威でもない小型戦闘艦までは降りられる様にしている。
何かあっても、それぐらいなら直ぐに鎮圧できるだろう、ということで。
「乗り換えなくて良いなら船の中に隠れていたほうが良いかもしれないな。認識阻害魔法をかけておけば気付かれないだろう」
「見つからないか?」
「わからない。機械とか使って調べられると見つかるかもしれないな」
魔法で存在自体を消すことは不可能だ。
赤外線探知機とか使われたら一発でアウト。いくら人の目を誤魔化せても機械は誤魔化せない。魔法の弱点だ。
「他に降りられる手段はないのか?」
「乗り換え用のシャトル便が出ているが、あれも乗るときに身分証がいるはず。気付かれずに乗り込むには搭乗用ゲートを使わずに乗るしかないが、監視が厳しいので無理だろう。至るとこに監視カメラはあるし、ゲート前には警備員が立って見張っているはず。魔法でも無理かもしれんな」
その他にも持物検査があるので、その時にバレるだろう、という話しだ。
搭乗用ゲートには検査用の金属探知機みたいなものが付いており、危険物を持ち込ませないために必ず通る必要がある。その時に人が通れば反応する。魔法で誤魔化せないということだ。
そこを通らずにシャトルへ乗り込めれば良いが、搭乗用ゲートは1カ所だけ。乗務員用搭乗口を使えれば入れるが、そういうところは監視カメラがあるので直ぐに気付かれてしまう。
そうなると、シャトルで行くのは無理だろう。
「面倒臭いことになったな……」
偽の身分証だけでも作っておけば良かったか?
惑星から出なければ必要ないと思って気にしていなかったが、まさかこんな事になるとは思わなかった。
「外へ出歩かないでくれよ。最初から5人しか乗っていないことにするからな」
「でも、入管ステーションで乗員登録をしていなかったか? 乗っていないと怪しまれると思うが」
「登録をしただけで乗っていなくても問題はないよ。惑星へ降りるときに誰が降りるか、それを調べるだけだからね。乗員名簿などは見ていない」
小型船に人を乗せ、タクシーみたいなことをする船もあるので乗員名簿は見ないらしい。
要は、誰が領都に降りるかで、身分証を持っているか、それと申請して許可を貰っているか、それだけしか気にしない。
不審者が領都に降りなければそれで良いらしいと。
「後は向こうがどういう検査をするかだな。誰も領都に降りたことがないのでそこから先はわからない。向こうの指示に従うだけだ。だから後は頼んだぞ、シューイチ。上手くやってくれ。俺たちは手伝うことはできないと思うから」
そう言われ、ロズルトにポンと肩を叩かれた。
要するに、俺に丸投げということだな。
「連絡が来たわよ。8番ゲートから中に入いれ、だって」
「了解。それではみんな行こうか。シューイチは見つからないようにな」
ロースの声に全員が頷いた。
ここまで来たら後は運を天に任せるしかない。
やれることはないのだから。
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