第101話 お食事会②
「元手が掛からないから利益は多いんだろうな」
「リスクはあるが強奪品とバレなければ利益は多いな。バレたら没収だけどな」
だからやめられないんだろうな。
ハイリスク・ハイリターンというやつか。
こういうのを無くすにはそういった所から荷を買わないのが一番だ。
でも、安いとどうしても手が伸びてしまう。
一度味を占めるとやめられなくなるからね。
「そういえば補給はどうしているんだ? ドック内でやってくれるのか?」
「それは専門の業者がいるので電話1本でやってくれる。専用の補給車が来てくれて、廃棄物の引き取りもしてくれる。ただ弾の補給はまた別の専門業者なのでそっちに頼まないとやってくれない。あれは危険物なので販売には特別な許可が必要なんだ」
ステーション内では、許可が下りた業者だけが武器の販売ができる。
誰でも売れるようにすると宇宙海賊に流す輩も出てくるので、実績があり信用できる商会にしか販売許可が下りないようにしている。
「面倒臭いという感じがするが」
「でも、そもそも弾の補給なんてするのは傭兵ぐらいなものだ。普通はレーザー砲だから弾の補充はない。ミサイルとガトリング砲でも装備していないと補充することはないな」
ガトリング砲は接近戦をするときに使う武器で実弾を使う。
1分間に何千発と撃つらしいが、金がかかるのと実用性が低いのであまり使う人はいない。
「その代わり威力はあるぞ。一点集中すればシールドに穴を開けることができる。でも、それが難しいけどな」
同じ所に集中して撃てばシールドのその部分が展開に追い付かず穴が開くと言う。
要はその部分だけシールドが損耗して無くなるということだ。
ただ、穴が開くと言っても一瞬なので連射を続けていなければ直ぐに塞がる。何秒間は同じ所に当て続けなければ船体に届かないということだ。
高速で飛び続ける戦闘艦にずっと当て続けることは至難の業だ。だから実用性が低く、使う人が少ない。
「止まっている船なら有効かもしれないな」
「そんな船が居ればな」
攻撃されて何もしない船はいないだろう。
そんなことはあり得ない話だ。
そんな話をしていると、食事の準備ができたとジャックが呼びに来た。
全員で食堂に向かう。
テーブルには既に料理が置かれ、白い湯気が立っていた。
「合成肉のステーキか……」
他にも野菜を茹でた物やコンソメみたいなスープもセットになっている。それと合わせてロールパンも付いてた。
「美味しそうだな。とても冷凍食品とは思えない」
見た目からして料理人が作った料理と一緒だ。肉も厚みがあって良い具合に焦げ目が付いている。合成肉とは思えない。
ちなみに合成肉とは色んな動物の肉を集めて液状化し、肉の形に再加工した物をいう。捨てられるような肉の切り端とかを使うので、安く買えるのが特徴である。
「さあ、頂きましょう!」
エミリーの掛け声で食事が始める。
それぞれが一口食べると表情が変わった。
「美味しい!」
エミリーが一言いっただけでみんな黙々と食べる。
誰も言葉を発しない。
今まで不味い食事をしてきたのだ。そうなるのも無理はない。
気が付くと完食していた。
「……美味しかったな」
諜報部のニクスが空になった食器を見て呟く。
自動調理器の味と比べると雲泥の差だ。
これは買ってきたエミリーを褒めるべきか悩むところだ。
「この味を知ったら自動調理器の料理が食べられないな……」
ローズもその味の違いを認め、頷いている。
この味を知って今後どうするか悩むところだろう。買い換えるのか、それとも冷凍食品を買ってきて食べるのか。
金があれば買い換えるだろうが、自動調理器は決して安くはない。
食べられればと割り切って取り付けたと思うが、食事が不味いとその日のパフォーマンスにも影響するし、仕事をした後は美味しいご飯を食べたいものだ。
どうするかは船長のローズに委ねることになるだろう。
「お代わりしてもいいかな?」
ジャックが格納庫へ向かう。それに釣られニクスも
多めに買って来ていたがお代わりまでは計算していないだろう。
不安顔になっているエミリーを見ると、俺は遠慮した。
ロズルトも苦笑いを浮かべているし。
足りなくなりそうだったら俺は調理器でも良いかな?
そこまで味に拘りはないのでね。
この後ワープを数回繰り返し、領都がある第1惑星に到着したのは、それから3日が過ぎたお昼頃だった。
買ってきた冷凍食品も食べきり、今日から自動調理器の食事に戻る。
エミリーが絶望した顔をしていたが、その前に着いたことは彼女にとって僥倖だったかもしれない。
俺はその前から遠慮し、自動調理器で食事をしていたけどね。
しかし、着いたからといって俺たちの仕事は終わりではない。これからが本番になる。
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