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世界に1人だけの魔物学者  作者: べるりん
迷宮案内人ローラン
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聖光


組合(ギルド)を出た俺は家で着替えを調達して神殿へ向かっていた。


(ドラゴン)…ね。」


もしその話は本当なら…いや本当なのだろうが、大変なことになる。


まずこの国にとっての話。この国は王都が迷宮の目の前にある通り迷宮に人の流入を強く依存している。

それもそのはず、あの迷宮「ギルドクライン」は国では一番、さらに周辺国を含めても一位二位を争う広さなのである。故に冒険者、および人の流入が多い。


そんな場所で竜が出没したとなると迷宮へ入る人はまず減るだろう。迷宮産の資源の採取量も減るし、国からしたら大ダメージだ。


だから討伐隊が組まれることになるだろうとは予想しているが、それも準備で一月はかかるだろう。


次に俺の問題。


竜が出たとなると確実に、いやもう既に魔物の生息域がおかしくなっている。

つまり生態系がぐちゃぐちゃになるのだ。

これでは仮に今俺がこの迷宮についての本を出版したとしても、嘘出鱈目だらけの書物になってしまう。


過去に俺が調査した中で迷宮の生態系が変わったことは二度あった。その度に苦汁を舐めてきた。


一度目はどっかのバカが、鉱物資源採取用に集めていた爆薬に火を放り投げたらしい。

結果、二~四層まで繋がる馬鹿でかい吹き抜けができた。

で、あまり干渉することのなかった二層~四層の魔物は互いに出会い争いだし、新種が生まれるだの絶滅だのをした。

馬鹿馬鹿しい。


二度目は数年前、「氷の勇者」と呼ばれる国賓にもなるような力強い冒険者があの迷宮に潜った時だ。その勇者は腕っぷしは確かに強かったのだが、後先考えないところがあって常時高出力の氷魔法を展開していたらしい。


結果、変温動物でひしめく第一層、二層の魔物が大体絶滅した。


一層にレッサーバットとスライムぐらいしか目立った魔物がいないのはこのためである。

実に馬鹿馬鹿しい。


そして今度は伝説上の生き物が生態系を変えて荒らしまわっていると。


ツイてない。ってレベルじゃないなこれは。


まぁそんなことは今考えても仕方がないか。

そう思い足取りを早めた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うわぉ、これはまたセクシーな…」


着替えと少量の食料を持って神殿に戻ってきた俺は開口一番そんな言葉を出した。


俺の瞳には非常に際どい格好をしたナタリアが。盗賊(シーフ)でもそんな軽装しないぞ。ってレベルの露出の多さだ。その上、ルナとナタリアでは体格差が少しあるのか、胸元に少しだけ隙間ができて色々なところが見えてしまいそうだ。


「じ、ジロジロ見ないでください!」


ナタリアが顔を赤らめて反抗を示す。


「あらあら、お似合いですよ??」


「…」


ルナがお褒めの言葉を出す。割と善意でやっているのだから一層タチが悪い。ナタリアも施しを受けている側なので何も言えないのだろう。


「そんなことだろうと思って、着替え持ってきたぞ」


俺はそう言い白いシャツを渡す。ズボンは多分俺のじゃブカブカすぎると思ったので持ってこなかった。


「あ、ありがとうございます!」


助かったという表情を浮かべたナタリアは早速腕を通す。


ナタリアは痴女から下さえ見なければ普通の可憐な女の子に進化した。


「それで、蘇生はいつ行うんだ?」


「今日の夜か明日の朝と言いましたが、この調子だと明日の朝になりそうですね。お二人は仮眠をとるなり休んでいただいて構いませんよ。」


そう言ってルナはどこかへ立ち去ろうとしていた。


「ルナも休まないのか?」


「私はこの後ペンタクールさんも含めて4人蘇生を担当しておりますので…ちょうど次の人の準備もできたようですし。」


4人。単純に見積もって蘇生には5~7時間ほどかかるだろう。ルナの目にはクマがある。てっきりペンタクールの時まで休憩を取るものだと思っていたが…


「…お前、最近いつ寝た?」


「…2日前に」


俺はため息をついた。

ルナはそう言うところがある。文字通り不眠不休で、体力回復はポーションに頼って働きづめる傾向だ。


本当はやめさせたいが、蘇生という仕事の都合上俺が好き勝手口出せるものじゃない。ならせめてと、昔栄養たっぷり、滋養効果のあるポーションのレシピを教えたことがあるのだが…それも裏目に出てしまっている。


「…そのうち死ぬぞ」


俺の言葉を聞いたルナは何も言わずただ微笑んで3階の祭壇へと消えてしまった。


俺とナタリアは顔を見合わせ、休息を取ることにした。



「ルナさん…寝てないんですね。」


ナタリアが乾パンを齧りながら話しかける。


「あいつはちょっとネジが外れてる。自己犠牲の塊なんだ。…そのおかげで助かっている人もいるし君も俺もそのうちの1人だ。だから止めろなんて言えない。」


俺が初めて死亡し、割としっかり腐りかけていた時に蘇生を担当してくれたのもルナだった。


「で、でも蘇生術を使えるのはルナさんだけではないんでしょう?勤務時間を徹底的に分ければ…」


「蘇生術を専門に扱える人物は珍しい。この神殿ではルナを含めて5人ほどいるそうだが、まぁルナのシフトが一番多いというだけでみんな多いそうだ。」



「人材不足は深刻だな」


俺はため息をもう一度吐いてその場で横になった。




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