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入国

「さぁ。見えてきたよ。」

真っ黒の巨大な円状の城郭に中央に聳える白い宮殿。

メヴィア王国の最盛部、王都メヴィア。

レイ・アーツ一行こと僕たち勇者パーティーは本日王都に現着した。


組合(ギルド)の依頼を受けてから10日間。その3日後に(ドラゴン)出現の一方が全国的に知らされてからたため、世間から見たら7日間か。アルテマからイングラシア州に入りようやく王都へ着くことができた。


「あぁ…疲れたぁ。全くメヴィアは横に広いんだからぁ」

レナが両腕を上げ伸びをする。

実際メヴィアは広い。5つの州からなるメヴィア王国は、僕たちの出身国アルテマから王都へ向かうとなると最短で5日かかる。あまり急いではなかったので7日かけて王都入りをしたのだ。


「竜退治に王との面会。やることは山積みですな。」

アルバはしきりに角を触っている。彼曰く、角を触っていると落ち着くらしい。仏頂面の彼だが案外王都で緊張しているのかもしれない。


「さて、王との面会は(ドラゴン)を倒してから。そして(ドラゴン)を倒すためにまずは組合(ギルド)と案内人と会わなきゃいけないんだけど…」


僕はパーティーメンバーを見渡す。7日間の疲れが溜まっているのかレナは覇気がなさそうだしアルバはソワソワしていた。


「今日はもう夕刻だし明日にしようか。宿だけとって自由時間だ」


「やったぁ。」「承知しました。」


2人とも同調し歩みを進めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


日が沈み夜が始まる。

僕はレナやアルバと別れて1人で街を歩いていた。



メヴィアに来るのは5年…いや6年ぶりか?僕が勇者に任命されてまも無い子供の頃に来たことがある。その時とはずいぶん様相が変わっているようだ。建物は増え、人々も増えている。それに今は(ドラゴン)出現により迷宮が閉鎖されたためより人が溢れている。


活気がある街は好きだ。僕の母国のアルテマはメヴィアやその周辺の国々の国境であるアルテマ教の総本山であり小さい国だ。聖職者が街に多いため、冒険者のような熱い活気はない。


僕は夜市を眺め、品物を物色した。回復ポーションなどの戦闘用品は需要が下がっているのかたくさん売れ残っているのを見つける。

イングラシアの不作に影響か小麦製品は消え、代わりに南方から仕入れたリソス米と呼ばれる穀物は陳列されていた。この穀物は名前の(リソス)からわかるように灰色でおまけに固い。

めちゃくちゃ美味しく無いこの穀物だが小麦の不足している今この堅物に頼るしかないのだ。


穀物は不充実な反面、魚介、肉、野菜、果物はさすが王都というだけあって色とりどりで美しかった。僕はクォーツアップルという透き通ったリンゴを3つ買い袋に入れた。


勇者が普通に買い物しているのに見向きもされない。メヴィアでの知名度の低さを少し感じたレイだった。


アルテマだと歩くだけで声をかけられる…こっちの方が楽だな。


しばらく歩いていると見覚えのある人物を見つけた。6年前に来国した時に宮殿で見かけたことのある人物だ。

その人は美しい桃色の髪の毛を束ねて簡素な杖を後ろに背負っていた。

その隣には褐色肌に白いパンツが特徴の騎士を連れている。…いや騎士ってより冒険者の装備な気もするが。彼女のことは面識がないな…


僕は少し迷ってしばらく後をついてみることに決めた。何せ6年前の記憶なので本当にその人なのか確かめたかったのだ。本当ならば挨拶をしないと無礼に当たる。

この国の伯爵家の長女、「ナタリア・メヴィア」かどうかを。


推定ナタリアは慣れた様子で路地裏をすいすい進んでいきある店へ入って行った。アンティーク調の雰囲気のある店で濃い茶色の木の看板には「夜々亭(ナルコティア)

」と書いてある。

 メニューの看板を見てその値段に驚く。冒険者の身分には高すぎるし、伯爵家としては少し安いと感じる絶妙な値段。やはり他人の空似というわけではなさそうだ。


身分を隠している…にしては店を選ばなすぎだけど。確かに最上流の店では無いかな。


ここまで来たら声を掛けようとのことで僕もその店へ入った。身なりには無頓着のレイだったが大体の服装はセンスの良いレナに選んでもらっている。それほど浮くことは無いだろう。


店は全体的に黒の壁紙で、暖色の間接照明が荘厳な雰囲気を醸し出している。広さは外から見るよりも広くなっておりどうやったかはわからないが空間魔法で拡張しているのだろうと感じた。


中でも目を惹くのは店の中央に鎮座する海霊馬(ケルピー)の剥製。幽霊のような青白い皮膚や、海のように深い眼に吸い込まれそうになる。

出来は凄くいい。が、…あんまり趣味は良く無いな。食欲が湧かなそうだ。


他にも細かく魔物や魔植物の剥製等が配置されており、ここの店主が変わり者であることは分かった。


なんとなくナタリアがここに来た理由を察する。この店は思ったよりも人が少なく、それも多分常連の人が多い。


ようは人が少なくて身バレしにくいということだ。

理由は知らないが身分を隠している、そう感じる僕だった。


僕はカウンター席に座るナタリア達の人席開けて隣に座る。そして横顔をチラリと見る。

やはり、見間違えでは無い。年月が経って大人らしくなっているが快活そうなその顔と綺麗な桃色の髪には変化が見られなかった。


「あの…どうかされました?」


急にナタリアが話しかけてくる。僕は突然のことに驚き声を漏らす。僕が何かを言おうとする前にさらに彼女が追求してくる。


「失礼ですがさっき大通りで見かけてから私の跡を追ってらっしゃいましたよね?ちょっとあなたの魔力が膨大で特殊というか…分かりやすかったので」


なるほどそういう事か。気づかれていたのは少し不味い。このままだと竜退治の勇者から、年頃の娘を追いかけるストーカーになってしまう。ナタリアの奥にいる従者の目が怖い。


「…申し訳ありません。(ワタクシ)、先程通りで貴方様を見かけた時に思うところがありまして話しかける機会を伺っておりました。ご紹介遅れました。私の名前はレイ・アーツ。聖国アルテマにて僭越ながら勇者の称号を拝命しております。以前6年前に貴方様に似ている人を宮殿で見かけまして、もし本物ならば挨拶をしない訳にはいけないと思い、追っていました。もしや…貴方はナタリア・メヴィア様では無いでしょうか。」


僕はカウンターの奥にいる店主に聞かれないようナタリアとその従者だけ聞き取れる声で小さく喋る。僕の言葉を聞いたナタリアは顔の表情こそ崩さなかったが、目を一瞬見開き、正体を見抜かれたことに驚いている様子だった。


話を聞いていた従者が口を開く。


「それでは貴公があの竜狩りに派遣された氷の勇者であられるか。てっきり美しいお嬢様にくっつく危ない虫かと勘違いしてしまいました。申し訳ない。」


「…宮殿にいた頃は毎日来客が来るものですから、あなたの顔を忘れていました。申し訳ありません。もう私は高貴な身分では無いので…砕けた話し方でお願いします。私も砕けた話し方をしていいかな?窮屈なんですよこの話し方。」


そうナタリアは口角を緩め、朗らかな笑顔を浮かべた。


僕はその笑顔に数秒引き込まれてしまった。


「それと隣にいるのは元従者で現パーティーメンバーのペンタクールです。」


そう呼ばれた従者は一礼をする。僕もそれに習い一礼をした。


「ははっ!ではお言葉に甘えて。それと僕の顔を覚えていなくとも無理はない。数分、お会いしたかしてないかですから。ナタリアさんはどうしてこの店に?行きつけ…というには少々変わった店ですが…」


メニュー表は、普通の酒場とはちょっと変わった料理が載っている。海霊馬(ケルピー)の馬刺しとか、宙魚(ホロネマ)の刺身とか。珍しい料理ばかりだ。

海霊馬(ケルピー)って魚なのか馬なのかどっちなんだ…?


「あぁ、私はある人を待ってて、なんでも私の魔法の一つを教える約束をしてるの。ここはその人の行きつけの店らしいですよ。」


それを聞いたペンタクールが付け加える。


「貴殿は迷宮の竜討伐隊でここへ来たのでしょう?それなら彼を知っているはずだ。彼の名前はローラン。組合(ギルド)によれば、(ドラゴン)討伐隊の案内役に任命された男だ。」


これが僕と奇妙な男との初めての出会いであり、僕の人生はここから加速することになる。







次回から主人公視点。時々勇者視点に変わります。

頭の中でキャラを動かしている時、レイくんのキャラデザがどうしてもヒンメルに侵食されます。

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