月と本
ペンタクールの蘇生は成功した。
ルナ曰く、彼女は一週間は安静にしていた方がいいとのことでナタリアが付き添って看病するようだ。
泊まるあてはあるのか聞いたら宿をとっていると言っていたので彼女らはそこへ泊まるらしい。
ナタリアには再三礼を言われた。ペンタクールも俺が蘇生に関わっていると知ったところ深く腰を曲げて感謝をされた。蘇生したてで動きづらいだろうに。
ナタリアがいいとこの出身だと踏んでそのツテを借りようと恩をうっただけなのでそこまで感謝されるとむず痒い。
俺の家の場所を教え、代わりにナタリア達との宿の場所を教えてもらい何かあったら連絡する。ということで互いに一旦別れることにした。
「あ、そういえば私ローランさんを雇ったんですよね。代金を支払わないと…」
「ん、あぁ今はいい。一個貸しってことで頼めるか。」
「わ、わかりました。ありがとうございます!」
「あ、お前らしばらく迷宮に潜るなよ。今、迷宮はきな臭い。次死んでも蘇生できるとは限らないからな。」
「ご忠告痛み入ります。」
ペンタクールが丁寧に返事をした。
「それでは!」
ナタリアが手を振りながら街へと向かう。
ペンタクールが一礼をしてナタリアを守るような動きで隣を歩き出す。
おそらくペンタクールはナタリアの従者だ。身分を隠しているようだが本当に隠す気あるの?ってぐらい従者とお嬢様オーラを放っている。
ナタリアはナタリアで財布の紐が緩すぎるし、ペンタクールはペンタクールでナタリアには対する言葉遣いが従者のそれだ。
ルナもきっとナタリアが貴族関連出身なのは気づいているだろう。だって、普通に高い蘇生代を何食わぬ顔で払ってったし。
蘇生費用はひと月ぐらいは暮らせるほどの値段がかかる。死んでもやり直せるのだから俺は安いと思うが、普通の人にとってはかなりの痛手だ。顔色変えずに即支払いは相当潤ってないとできない。
なんかあいつらカモがネギ背負ってるように見えてきたな。
俺が悪いやつだったら搾りとり放題だぞ。
まぁ、あの2人はさておき問題が一つある。
「コイツをどうしよう。」
俺の背後にはポーション切れかつ、睡眠不足、疲労困憊で俺に全体重を乗っけている瀕死の聖女がいた。
「おいルナ、仕事終わったんだろ…?帰るぞ」
2人を見送るまではなんとかシスターフェイスを作っていたルナだが、すでに顔には感情がない。多分半分寝ている。
「ローラ…ン、ごめっ、あとは頼むねぇ…」
それだけ言い残してルナはどさっと倒れた。ほぼ気絶だ。
「後は頼むね…ってお前、どうしろと…」
俺はルナを抱え起こし思案する。
俺はルナとそれなりに知り合いだが流石に家か宿までは知らない。つまりルナを家へ送り届けると言うのは俺には不可能である。
「おーい、ルナ、寝る前にお前の家を教えろ…運べないから…ってこれは起きないな。」
すでに彼女は心地よさそうに寝息を立てている。
となるともう一つの選択肢はルナを俺の家へ運ぶことぐらいか…
男が神殿から聖女を家に持ち帰る。うん、字面がやばいな。字面が。俺はともかくルナはそれなりには顔が割れているので誰かに知られたら大変なことになりそうだ。
ならばルナを宿へ置いて行くとか?
男が神殿から聖女を連れて宿へチェックイン。うん、アウトだね。アウト。別にルナと一緒に泊まらなくても、宿へ入ったと言う事実だけで詰むのだ。冒険者という界隈は。
奴らの情報網を舐めてはいけない。
となると前者か。
幸い今はまだ朝が始まったばかり。噂好きの奥さんも、飲んだくれだらけの冒険者も皆寝ている。
俺はルナをひょいと抱き抱え、風のように走り出した。
古代百足もびっくりの速さだ。
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「これでいいか」
俺はルナを俺の部屋のベットに投げ捨てて布団を被せておいた。
「もっと自分を大事にしてくれ」
俺は出かけてくる旨を机の上にあった小さい羊皮紙に書き残し、外へ出かける。
向かう先は王都の北部にある馬鹿でかい図書館「メヴィア王立図書館」だ。俺の家は南部の隅っこだからだいぶ時間はかかるな。
なぜ急に俺が図書館へ行こうとするかというと、竜について俺はあまり知らないからだ。
俺は魔物、特に迷宮の魔物に関しては非常に多い知識を持っていると自負している。なぜなら自分の目で見て調査したからだ。しかし、竜は見たことがない。空想上の生き物とさえ言われている。
なにか伝承モノでもいいので竜に対する情報を仕入れておきたい。そんなこんなで1時間ほど歩き続け、王都の中心部へやってきた。
王都の中心に構える白い宮殿。そこから大きな道路がバツ印を描くように4本引かれている。巨大な道路で仕切られたエリアをそれぞれ、北部、東部、南部、西部と呼ばれている。
俺は中心部に構えてあった適当な店でパンとコーヒーを買い朝食をとった。
朝が終わり昼の日差しが近づいてくる。
次第に通りには人が増え、活気が現れてきた。
2~30分歩き続けると、レンガ作りの3階建て、ドーム状の屋根を持った建物が見えてくる。
王立図書館だ。




