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4勇者と王

勇者レオンハルトは疲弊したロンダルギアを立て直すべく、魔王城で法改正に取り組む。

一部の部下を残し、参謀のヴァ―レンファイトを含めた4大将と軍は光の本拠地であるローザリアに凱旋。


圧倒的勝利は光の民を喚起させた。


しかし、憤慨する者もいたのだ。

ローザリア王ガイゼリックである。


闇を閉ざすと思われた戦いが、休戦するでもなく、闇を受け入れ同盟を結んだのである。

同盟は敗戦した闇の勢力を奴隷にしないための処置だが、ローザリア王の知るところではない。



ローザリア王は4大将の報告を聞き、ロンダルギアに留まったレオンハルトに反逆の意志ありと考えたのだ。

光と闇の戦いが終わったのにも関わらず、ガイゼリックは再度、ロンダルギアを滅ぼすべく軍を遠征した。


公文書には反乱軍の魔王レオンハルト討伐と記載されている。




_____レフガンディーの砦

ガイゼリック元帥(キング)王専属護衛(ロイヤルガード)グリルヴァルツァー中佐、参謀長ヴァ―レンファイト准将、総司令官ヴァルハーディン上級大将、シュターゼン上級大将、ガルフリード上級大将、ヴァランギース上級大将の7名が作戦本部に募った。


上級大将は勇者の階級であり、騎士団長の最高位は大将。

4大将は魔王軍を討伐した〝勇者〟となり、勇者の称号を得たのだ。


参謀の最高位は大佐だが、ヴァーレンファイトも反乱軍討伐の参謀長として異例とし、准将に任じられ伯爵の爵位を得る。

下位貴族から上位貴族となった彼には領地エスタミルと領土を守る騎士団も与えられた。

だが、これは彼の高い能力とは裏腹に裏切らせない処置でもあったのだ。4勇者の強い要望である。


この時代は後に『(law)混沌(chaos)の間』と歴史書に記された。朝廷が不明な時代として。



ヴァルハーディンは辛辣な表情で切り出す。


挿絵(By みてみん)

 (聖騎士ヴァルハーディ) (ン上級大将)

「無益です……陛下。アスガルドは既に光と闇が統一され、闇は影として一歩引いております。レオンハルトを王にし、姫を与えると申したのは陛下です。お忘れですか?エグゼクトは部下に腕を斬られ、幽閉されており、ローザリアで公開処刑する予定です。魔王軍の討伐を完遂したレオンハルトは国民の支持もあり、王としての器は十分。光があれば副産物の影がある……良いではありませんか?」


総司令官でありながらヴァルハーディンはこの戦いに反対だった。

彼はイシュタル決戦で引退する考えであり、そもそも死ぬ覚悟だったのだ。


だが、レオンハルトが勇者になる前はこの聖騎士ヴァルハーディンが幾度となく魔王軍の進軍を拒んできた。

勇敢な武勲、堅実で隙のない騎士団の団長として間違いなく、彼は勇者だった。


だが、反対ながらも受けるしかなかったのも事実。

平民よりも最下層のバラック小屋で暮らす貧乏貴族の若き日を送り、食うために軍人になった。

士官学校を卒業し、少尉に任官したばかりのヴァルハーディンは剣術大会で優勝。聖剣エクスカリバーを賜るだけでなく、ガイゼリック王子の妹であるリルニーナ王女を紹介され、二人は愛し合った。


王の娘を娶り、侯爵となり、聖騎士としての活躍は彼を勇者だけでなく、平民王とも称した。


ガイゼリックは義理の兄であり、王となった今はその発言に逆らうことなどできない。


引き受ける代わりに出した条件が〝軍権は元帥になく、総司令官にあり命令に必ず従う〟である。

これは3人の上級大将たるシュターゼン、ガルフリード、ヴァランギースは同序列となるため、命令違反する権限を王の名で奪うのが目的だった。

正確にはヴァルハーディンが先任だが、シュターゼンは大賢者の正式な称号があり、魔力は格段に高く、王弟である。

光人(フォースマン)ではないガルフリードとヴァランギースはそもそも主従でなく光の同志。



ヴァルハーディンの作戦は、兵力と補給に乏しい反乱軍がロンダルギアで籠城するには国民から搾取するしかない。

4上級大将とヴァ―レンファイトはレオンハルトの性格上、国民から徴発することはないことを知り尽くしている。


中継基地だったレフガンディーは必要なく、王城に実戦機能を集中しておく。レオンハルトは進軍し、疲労のピークとなる。そこを叩く、と提案した。




だが___________


「もっと有効な作戦がございますぞ」


シュターゼンの勝ち誇った声が、作戦室を制圧せんとした。

この作戦は王国軍の運命を決めることを誰も知る由がない。


「それはどんな作戦だ? シュターゼンよ」


王が促し、シュターゼンは不吉な笑みを浮かべてきりだした。

ぶっきらぼうな言い方は、賢者は兄より優れた弟であるからだ。


「総司令官殿の作戦を僅かですが修正をしたいのです」


ヴァルハーディンはフッとため息を吐き憮然と耳を傾けた。

グリルヴァルツァーは目を輝かせて父親を見つめる。


「王城戦は万が一にも民に被害がないとは言い切れますまい。なんといってもヤツらは卑怯な魔族なのです。実戦機能はレフガンディーに集中させ、国王陛下と総司令官殿は王都をお守りください。レフガンディーでは私が指揮を執り、反乱軍を率いるレオンハルトを捕らえてまいります」


「それでは、卿が総司令官ではないかッ!?」


ヴァルハーディンがシュターゼンに肩を掴むとその腕をガルフリードが掴み「素晴らしい! 続けろ」と賢者に促す。



シュターゼンはヴァルハーディンの手を払った。


「ふんっ、(わが)魔法騎士団は大規模な別動隊としてロンダルギアを制圧します。出兵しているレオンハルトは孤立し、そのままレフガンディーとロンダルギアから挟撃して反乱軍を殲滅します」


ヴァルハーディンとガイゼリックの約束はあっさりと破られることとなり、ヴァルハーディンの作戦案は消極的すぎるとして却下されたのだ。



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