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魔王エグゼクト

ハイウェルラインは青ざめていた。

イースレイ、ゴルダーク……各々が魔王より、知力、体力で勝る超一級の魔戦士。

2倍の兵力で既に約三分の二以上を失った。


その報告を本隊にいる魔王に伝えた。

ハイウェルラインは幕僚の所属で魔王であり、軍権を握る元帥エグゼクトの作戦案は何度も会議室で閲覧していたが元帥(エグゼクト)に敗戦の報をすることが皮肉にも初の謁見となった。


「ご無念お察しします……閣下」


「ま、まさか2倍の兵力でこうなるとは思わなかったが、引いて籠城し、国力を回復させたのちに再び出兵するしかあるまい。レオンハルトめ……次はこそは……」


魔王エグゼクトは就任してまだ半年。レオンハルトも勇者の称号が与えられてまだ二ヶ月ほどである。

この戦いは数で圧倒し、王国軍を引かせて自身の威厳を高めるためのものだった。


「……引くことはできません」


俯いたままハイウェルラインの口から洩れた。


「女兵士まで前線に送り無理に頭数を増やし、オーガ族とダークエルフィン族の大半を戦死させておきながら魔王の王錫を持つ閣下だけ、帝都(ロンダルギア)に戻れば反乱が起きます。イースレイ様は囮となり死に。ゴルダーク様は降伏を受け入れずに死を覚悟で総力戦に及びました」


「なんだと!」


「レオンハルトは女兵士を解放し、捕虜にしませんでした。辱められた者に訊くと陵辱した兵士を女に好きなだけ殴らせ、許しまで乞うたとのこと。魔族であっても民衆はレオンハルトに与するでしょう。魔王としてその首を勇者に差し出し、民の自由と理想を守ることを条件に降伏するほかありません」


「ふ、ふざけるな……俺が魔王になるためにどれだけの屈辱、理不尽に耐えて上りつめたと思っている! 反乱されたところでそんな奴らは返り討ちにしてくれるわッ」


だが、側近たちもエグゼクトに対して忠誠などない。

そして、こうしているうちにも王国軍の騎馬兵は迫っているのだ。


「さようでございますか……では、私は残るダークエルフィンの代表としてレオンハルトに降伏致します。私がやらなければいけないことは魔族ではなく、一族の永続でございますゆえ」


踵を返すハイウェルラインにエグゼクトは魔の王錫を向け、闇の呪文を詠唱し始めたが、その呪文が放たれることはなかった。錫杖を握る右腕が鮮血と共に宙を舞っていた。


実力のない覇者は淘汰される。

魔族の掟であった。



¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯


レオンハルト、4大将の5名の姿は魔王軍の本拠地にて帝都ロンダルギア王城にあった。

何百年と続いた光と闇の争いは魔王軍の降伏で幕を閉じる。王国軍の圧倒的勝利である。


エグゼクトは牢獄。

ローザリア城にて硫酸を飲まされる公開処刑が決まった。


魔王の王錫はレオンハルトによって民衆の前で折られるが、王錫の水晶球は聖剣の装飾として闇ながら燦然と赤黒に輝くことになり、聖剣は〝聖魔の剣(ラグナロク)〟として光と闇を一体化する意味で具現化した。魔族に対する勇者の配慮である。


レオンハルトは「古い時代が終わり、新しい時代のはじまりだ!」と民衆に伝え、王城の食糧庫を解放し、民衆に分け与えた。

法と秩序を重んじる光に、自由と理想を願う闇が統一され、光と闇が二度と争わない〝聖魔の盟約〟が、光と闇の間で締結した。




戦争は終わったかに見えた矢先であった______

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