勇者レオンハルト
光の軍勢3万vs影の軍勢6万。
アスガルド大陸の派閥を巡る天下分け目の戦いは〝イシュタルの決戦〟と呼ばれる。
両軍が向き合うその戦地はイシュタル平原だったことに由来した。
「迷宮に囚われた姫を救った者は次の王とし、勇者の称号を与えよう!」
王女を誘拐されたローザリア国王が放った言葉に国中の若者が歓喜した。多くの若き勇者たちが迷宮に挑み命を散らす中、姫を抱きかかえ戻る者が現れた。
勇者レオンハルトの誕生である。
そして、王は勇者に姫を妻とし、ローザリアの王にする約束をすると勇者に全軍を預け、魔王軍討伐を命じたのだ。
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王国軍を指揮する総司令官として、上級大将の刻印を施した鎧を纏う勇者レオンハルトは机上の地形図と自軍と敵軍を模したコマをじっと見いっていた。そこに王国軍参謀長ヴァ―レンファイト大佐が現れる。
「総司令官殿、偵察隊から敵軍の布陣について報告がありました」
ヴァーレンファイトは地形図上のコマを動かすと敵軍を三つの部隊に分けた。
「敵は約6万をおおよそ2万に分け、三方から我軍に接近。前後からの挟撃、あるいは包囲し、我軍を殲滅する作戦と見て間違いないでしょう」
中央から後方に位置するのが魔王軍本隊、右軍、左軍が両脇を固める陣形であり、魔王軍も総力を以って遠征している。
「敵軍は約6万か。我軍の2倍だな」
勇者は2倍を相手と聞いても狼狽している様子はない。
逆に魔王軍を一気に殲滅できるとばかりの余裕を漂わせる。
「はい、その6万が3隊編成で進軍しております。また、作戦に関して4大将が総司令官殿にお会いしたいと幕舎の前でお待ちです」