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聖騎士ヴァルハーディン

ローザリア王城は孤立し、包囲の中にある。


人々は信じられぬ思いに違いなかった。王国軍は魔王軍を倒し、この小さな大陸は統一されたはずなのも束の間、勇者と称えたレオンハルトを魔王と蔑み、賊軍として討伐する王国軍の三分の二が敗退した。


レフガンディーの要塞と軍事物資が奪われた以上、ローザリア城は棺と化そうとしている。

上級貴族たちはレオンハルトを恐れる。

各々の莫大な財産は没収されるに違いない、そしてそうなる前に徴発されるだろう。


レオンハルトとガイゼリックの全面衝突を回避しようとする者がいる。

聖騎士ヴァルハーディンだ。

レオンハルトを指示するためではなく、彼と戦っても勝算なし、とわかるからである。


「バカなことを言うな! ワシが大軍を率いて、正面から堂々とレオンハルトを撃ち破り、至高神レイアの名のもと、民の前でエグゼクトともども斬首してくれるわ!」


「陛下、レオンハルトは用兵の天才です。倍の兵力をもってして、勝ったとしても犠牲は大きく、民衆にも被害を与えることになります。ここはご再考をいただく存じます」


「貴様を司令官にしたのは、ワシの最大の誤りだ。シュターゼンが言うように全勢力をもってレフガンディーでヤツを迎え撃つべきだった!」


「そこまで言われるか……。私が申したいのは、この戦いの惨禍の代償を陛下では乗り切れません」


「な、なんだと……貴様……。グリルヴァルツァー! ヴァルハーディンからエクスカリバーを取り上げろ!」


「陛下! ヴァルハーディン殿からエクスカリバーを取り上げれば、レオンハルトのラグナロクに対抗できる手立てはありません。今までの功績を称え、お許し願いますよう」

グリルヴァルツァーは汚名返上とばかりに、聖騎士団で一戦交えてみることを推奨した。


ヴァルハーディンは了承し、出陣する。

王城から聖騎士団が出撃したとき、先方はハイウェルラインだった。

しかし、レフガンディーのときと違い、聖騎士団はたくみにコントロールされ、ハイウェルラインは敗走する。

続いて、オーヴェルシュダインが敗走する。

そしてレオンハルト本隊は凹陣形で待ち構えていた。

この追撃する聖騎士団を3方から迎撃するのだろうと考えたヴァルハーディンは追撃を中止する。

新生魔王軍はそのまま撤退したことで、レフガンディーと王城の間であるクジャララートの防衛は成功した。


凱旋した聖騎士団、ヴァルハーディンは歓喜する貴族たちから、あらんかぎり絶賛される。

だが、不自然な逃走にヴァルハーディンは違和感を覚えていた。

連戦連勝のレオンハルトがここにきてレフガンディーに敗走し、籠城したのだ。


「この過信は禁物です……まさか?」

ヴァルハーディンは思った。

わざと王国軍の士気を高め、城から出てこさせようというのではと。


そして王城の水晶球にレオンハルトからの通信が入る。

ヴァルハーディンは受ける必要はないと王に進言したが、勝ち戦の後でガイゼリックは「レオンハルトの降伏の話を聞いてやろうではないか」と受けてしまう。

レフガンディーでガルフリードは挑発にのってしまったことをヴァルハーディンは敗残兵から聞かされていた。

その罵詈雑言をガイゼリックが耐えられるはずはない。

ヴァルハーディンは最初にレオンハルトに「降伏するのであれば話を聞く。それ以外は聞かん」と強く伝えた。

更には先手を打って「姫は無事だ。戦いをやめて、姫の元に戻るのだ。私が責任を以って、お前の弁護をする」とまで言ったのだ。

ガイゼリックとレオンハルトが会話をすることはなく、水晶球の通信は終わった。


長期戦になるが、いつまでもレフガンディーに留まることはできないレオンハルトは必ず打って出る。

クジャララートの敗戦は演技。

その間に籠城戦の準備をしっかりとしておけば、この戦いは王国の勝利で終わる。


そうヴァルハーディンは確信したのだが――――


無謀な出撃を、ガイゼリック王に決心させたのは、やはり国政を担う上級貴族たちだった。

ローザリア、最後の勇者となったヴァルハーディンは黙々と従うしかなかった。

一部の若い青年貴族が少数の兵で数度出撃し、小規模の戦闘ながらも毎回敵を敗走させたのだ。

勝利で飾ったヴァルハーディンを臆病者だという噂を貴族は流す。


ガイゼリックの甥であるグリルヴァルツァーは城を固めるべきと籠城した。

これは遠まわしに王国軍が敗走すれば、民を危険に晒さずに降伏することを示唆していた。

ガイゼリックは怒り狂うが人心が離反し、レオンハルトこそ英雄王として迎えるべきという民の感情を肌で感じざるをえない昨今であり、勝利の自信もない。

留守を任せる名目で甥に城を託し、王国軍は最後の決戦に出撃した。



出撃した王国軍および聖騎士団は激しい中距離砲撃(モルダン)のあと、騎兵による突進にうつった。

力ずくだけが、彼らに残された作戦だったのかもしれない。


対して、レオンハルトは遠距離砲(カタパルト)で十分に騎兵を攻撃してから突撃に入る。


王国軍の戦意は低くなかったのはガイゼリック王と勇者ヴァルハーディンの2名が最前線にいることであろう。

損害を受けては後退し、隊列を整え、再度突撃し波状攻撃を繰り返す。


やがて、レオンハルトは温存しておいた騎士隊とともに出撃、レオンハルトの指揮する騎士隊は圧倒的な勢いと乱れぬ陣形で王国軍を討ち減らしていき、ヴァ―レンファイトがくわわり、勝利を確定させた。



精鋭の聖騎士団もヴァルハーディンの指揮が活かせない。

残存する兵力も少なく、王国軍本隊との間にはレオンハルトの騎士隊を挟み込む。

挟み撃ちできる形であるが、突撃しても少数の騎士では飛散するだけであろう。

そして帰路もない。


「流石だなレオンハルト。……陛下が退却する時間を稼ぐには私がでるしかあるまい」


王国軍の撤退の壁にならんとヴァルハーディンは名乗りを上げ、敵軍に特攻を仕掛ける。


「私が聖騎士ヴァルハーディンだ! この首を取って手柄とせい!」


この名乗りは敵の進攻を変えさせた。

だが、その先頭はレオンハルトではなく、ヴァ―レンファイトであった。


「お待ちください、ヴァルハーディン様!」


「ヴァ―レンファイト准将か!?」


「どうか投降してください。これからは皆が平等に助け合う平和な時代になります」


しかし、ヴァ―レンファイトの説得も虚しく、聖騎士たちの倒れる断末魔が数度と二人の会話を中断した。


「残念だが、私は敗軍の将となった。レオンハルトの聖魔の共存体勢から見れば、反逆者。私の生きる場所はない。降伏すればレオンハルトは私を殺すまい。だが、人生のほとんどを武人として生きた私は恥も知っている」


ヴァルハーディンは聖剣を構えた。

そこにレオンハルトが合流する。


「ヴァルハーディン! 」


挿絵(By みてみん)


「レオンハルト! この私を帝都最後の門と心得よ!」


満身創痍の勇者は退却せずに、聖剣を魔王に向ける。


「この聖剣エクスカリバーは相手の防御力を無効化する効果がある。貴様のイージスの盾といえども防ぐことはできん!」


「このラグナロク……見くびられては困る! 勇者ヴァルハーディン! 仲間にならないのであれば殺すしかない!何故に国王に忠誠を尽くすのだ?」


「騎士の一分としか言えんな!」


ヴァルハーディンの鋭い剣戟に対し、レオンハルトはイージスの盾を投げ捨て、両手に構えたラグナロクで応戦する。


ふたりの戦いにヴァ―レンファイトはふたつの正義を見る。

そして、ラグナロクがヴァルハーディンの胸を貫く。


「レオンハルト……アスガルドを、民を……頼む……」


静かに地に伏す勇者。

この戦いでローザリアは軍隊と総司令官を失った。

ガイゼリックの本隊もほぼ壊滅し、勝敗は決したのだ。


「英雄の最後とは……」


ヴァーレンハイトはヴァルハーディンを抱きしめ、跪くと涙を流す。


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