Rさんの詩が読みたい
静かな、とても静かな波音が
僕を攫っていく
寄せて、返す
寄せて、返す
その波の素が来るのは
どこか知らない
遠い水平線の向こう側
そこでは月が水面を照らして
深海魚たちを慰めているのかもしれない
僕は砂浜を愛して
白い貝殻を手に乗せて喜んでいる
その貝殻を耳にあてると
海の轟きのような風の音が聴こえる
それをあの人は確か
遠い異国の響き
そう言っていた
遠い異国に行きたい
その新しい街に着いたら
異邦人として暮らしたい
そうしたら誰も僕をこれ以上
追い払ったりしないだろうから
そんなことを思いながら貝殻を聴いている
これではあの人の世界に失礼だろ、と思いながら
東の水平線から
遅い月が昇ってきた
砂浜まで月あかりの道が通ったら
そうしたら僕は
その道を渡っていこうかな
足が消えていく
体が透けていく
そうしたら僕は天使にだって
なれるかもしれない
なんてね
ちょっと感傷が過ぎるかな
秋晴れなんだから
僕は砂浜をもう少し歩いて
そうしたら、どこに行こうかな
あの人の見ていた秋を
探しに行こうかな