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09.愛が重いのは知りたくないけど知ってる

 ゆっくり降ろされたベッドは、とても柔らかくて肌触りがいいシーツが使われていた。それを堪能してしまうあたり、言わせて欲しい。服を返して!


「かえ、し……」


「ああ、安心してくれ。この部屋には私と侍女のマノンしか入らないから」


 ほかの人に見られる心配はないよ。満面の笑みで、怖いこと言わないでよ。現時点で、私が身に着けているのは暗器が隠せるポケット付き下着のみ。ドレスやワンピース、寝着の類は一切なかった。幸いなのは、この世界で淑女の下着と言えば、コルセットタイプの胴衣とロングパニエだったこと。


 そう、パンティなんてお洒落な物は存在しない。太腿は卑猥な部位と考えられる時代を参考に作られた設定なの。だからブラジャーもない。外出して着替えた後だったこともあり、室内用の柔らかめコルセットだった。苦しくないのが唯一の救いね。


 その意味で言うなら、路上で太腿を露出した鞭持った女を、よく婚約者にしようと思ったわね。本物の勇者じゃないの!


「マノンは戦闘訓練を受けたプロだよ」


「……」


 どんな公爵家よ! 人の家のこと言えないし、うちもかなりおかしいけど。逆に考えたら、公爵家だからこそ侍女は戦えないとダメなのかも。高位貴族はあちこちから恨みを買うし、やっかみも激しいから。


「さあ、今日はもう休もう」


 微笑んだ美形黒髪騎士様こと、婚約者になったシルヴァンがカーテンを閉める。ほっとした。ひとまず一人になって痺れが取れたところで、この拘束具を外せば……。


「ふぁっ!?」


「手が冷たかったかな? ごめんね」


 いえいえ、そういう問題じゃありませんの。私は未婚の侯爵令嬢で、あなたは未婚の公爵令息、同室で寝るのは厳禁なはずでは? 間違いがあってからじゃ遅いのよ。じたばた暴れたい気分だけど、痺れが抜けかけた時のジンジンした辛さに身動きできない。


 痺れた足に血行が戻って、じわじわするあの感覚が激しい痛みとなって全身を支配する。何かに触れるだけで大げさに反応する状態の私を、彼は抱き締めた。腕の中に閉じ込めて、幸せそうに胸元へ引き寄せられる。この状態は地獄だわ。


 顔が良ければ何しても許されると思ってるでしょ! 半分は当たりよ。こんな状態でなければ、ご褒美だった。もちろん、あの父が認めた結婚だから、まともな相手じゃないと思ってる。ある程度覚悟はあったけど、まさか攻略対象だったなんて!


 シルヴァン・リュリ・ルーベル――王太子の側近で、公爵家嫡男である彼のルートは二つ。ハッピーエンドなら私は監禁される。バッドエンドに向かえば、病んだ彼に惨殺される未来だった。ゲームに友情ルートだのトゥルールートなんて温情はなく、バッドかハッピーか。


 選択肢はこの二つだけなの。私はどちらも選びたくない。


「レオンティーヌ、覚悟してくれ。俺の愛は重いぞ」


 知りたくないけど知ってるわよ! 呼び捨てにされた時点で、変な執着を感じる。ぶるりと震えた肩を抱き寄せた彼は、嬉しそうに笑った。美形って得ね、こんな状況なのに……ちょっとだけ「許せるかも」と思ってしまったわ。

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