6 魔法少女の衣装について本気出して考えてみた
「ゲームバグは絶対に許さないんだからっ!」
(って、何やってんのよ、私ぃぃぃ!?)
なぜかよくわからないけど、途中から身体が勝手に動いていた。なんだよ「魔法少女アクヤ☆クレイジョー!」って。ダサいネーミングにも関わらず、気が付いたらノリノリでポーズを決めてしまっていた。恥ずかしい決めセリフと決めポーズを全力でこなしてしまった。こんなところを誰かに見られたら羞恥で死ねる。
変身だけで精神の柔らかいところをゴリゴリと削られゲッソリとしてしまった私だけど。ここで更なる問題に気づいてしまった。
(この服、布地面積が少なすぎるんですけどぉぉぉ!?)
この世界では結婚前の女性が肌を見せることをあまり良しとしない。平民ならそこそこ自由な服装だが、貴族階級になると足元&手首まであるドレスが一般的だし、夜会のドレスだって未婚者はデコルテも背中も隠すもので、唯一の例外はこの学園の制服くらいだ。
貴族令嬢の中には膝下が見える制服のスカートをハレンチだと受け入れられず足首まで隠れるドレスで学園生活を過ごす者もいる。そのくらい貞操観念がお堅いのだ。前世の女子高生の記憶がある私からしたらこの学園の制服だって「お嬢様用のお堅い制服」と言った感じなのだけど。それは前世の記憶がある私だからであって、ハレンチだと感じてしまう令嬢の方が一般的なのだろう。
と、そのような肌の露出NG文化の中で、である。私が現在身に付けている魔法少女の衣装はというと………デコルテがハッキリ見えてるおへそ丸出しなオフショルダーに超ミニスカート+生足ハイヒールだ。さらに言えばボディーラインをハッキリ強調するようなピタッとしたタイトな生地である。これではまるで水着だ。
水着以外で例えるとアレだ。露出激しめのレースクイーンといった感じだろうか。なんてこった。どう見ても魔法少女要素が皆無だ。
「ちょっとレイン。公爵令嬢であるわたくしが何でこんな格好で戦わないとなのよ!これじゃ痴女じゃない!」
「お嬢様、魔法少女とはチビッ子だけのもこではありません。昨今ではむしろ大きな子供も楽しむもの。その衣装は大きな子供層へのファンサービスでございます」
またしても執事が意味のわからない主張を始めた。
だが、しかし。である。
その主張には意義を唱えざるを得ない。なぜなら………、
(↓↓以下、読まなくてもOKなカミーラの魔法少女衣装考察↓↓)
大人なチビッ子向け魔法少女の代表格といえば『某クロウなカードをキャプターしちゃう小学生』や『某良い意味でも悪い意味でも物議を醸したブラック魔法少女ま○マギ』だろう。
果たして彼女らの衣装はどうだっただろうか。スカートこそミニだったが、基本的にはニーハイ装備。露出は控えめでへそ出しなんてなかった。そもそも彼女らは小学生&中学生設定なので胸の膨らみもささやか。唯一巨乳キャラも1人いたが、その子の衣装も露出ではなく乳袋でオッパイ強調するデザイン。
そもそも「魔法少女は何歳までなれるのか?」という問題において、「何歳でも魔法が使えれば魔法少女を名乗っていい」という大らかな意見もあるが、「小学生までに決まってんだろ舐めてんのか?」という過激な意見や「ギリギリ中学生まで。異論は認めない」という厳しい意見もある。そこら辺も鑑みるに、魔法少女とは基本的に未発達な段階の少女がなるのが一般的。ゆえに魔法少女の衣装もロリータ調の物が多い。
となると、このように露出を強調する衣装は逆にアウト。大人なチビッ子達にもウケは悪いはず。ファンサービスになるかならないかで言えば、極一部の人間を除きならないと断言できる。となると………。
(↑↑読まなくてもOKなカミーラの魔法少女衣装考察ここまで↑↑)
私は執事の深い緑色の瞳を真っ直ぐに見つめ、辿り着いた結論を言葉にして発した。
「レイン。この衣装、アナタの趣味ね?」
レインの表情は変わらない。切長の目を揺らすことなく私を見つめ返す。緊迫した空気が流れる中、先に目を逸らしたのはレインだった。
「ちっ」
って、今舌打ちしたあぁぁ!今確かに聞こえたわよ!!やっぱりこの衣装はレインの趣味じゃないか。
「今すぐ衣装を替えなさいエロ執事ーーー!」
「私はお嬢様の魅力が一番引き立つ衣装を準備したまでです」
「何が私の魅力だ。ただの露出狂になっとるわ!!しかもよく考えたら顔とかまんま私じゃない。これ、知り合いに見られたら一発でバレるわよ!?」
「その点は大丈夫です、お嬢様。衣装には認識阻害の魔法が施されておりますので。例え誰かに見られても『露出狂のイカレタ女が1人で戦ってる』くらいにしか認識されません」
「大問題だ、バカ執事ーーーーー!!」
フィリア「あのー、早くしてくれませんかー?」
(↑木にしがみついたまま出番待ち中)