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5 己との葛藤が最大の戦い


「お嬢様、戦いの時間でございます」



自称神の使いで魔法少女担当役であるという妖精が大変圧の強い笑顔で言いやがった。

ちょっと待て、仮にも魔法少女を補佐する役どころの妖精がそんな顔をしていいのか。その顔、良い子のちびっ子達だって裸足で逃げ出すぞ。というか、できたら私だって今すぐ逃げ出したい。


「ちょっと待って。戦いの時間って言われても敵の姿なんて見当たらないじゃない」

「いえ、近くにいるはずです。悪の結社バグリゾーンはバグウィルスをゲーム内のどこかに侵入させ、重要なイベントを壊してしまうのです」

「つまり?」

「今回はフィリアとアレク殿下の出会いイベントを壊すつもりでしょう。早くバクウィルスを探し出し排除しなければ最悪フィリアと殿下が出会えません。そうなると………乙女ゲームであるこの世界が成立しなくなってしまいます」


確かにそれは由々しき事態だ。私はドキプリの全てが好きだ。主人公のフィリアも推しだし、アレク殿下ももちろん推しだ。この2人の組み合わせカップリングなんてヨダレが出るほど大好きだ。何度妄想でお世話になったかわからない。いや、それだけではない。フィリアと他のカップリングも好きだし、なんなら『殿下×レイン』とか『次期宰相×殿下』とか腐ったカップリングまで守備範囲だ。そう、私はドキプリ関連なら全方位で萌えに変えれる見境ない雑食系ヲタクなのだ!


ドキプリガチ勢として推しキャラの重要な出会いを台無しにするなんて許せたものじゃない。そんなことされたら、私は一体これからどこで萌えを補充したらいいのだ。今までドキプリイベントを生で見ることを楽しみに生きてきた。いわば、ドキプリは私の生き甲斐であり、大切な萌え補充機。


(萌え宝庫の出会いイベントがなくなるなんて………耐えられない!!)


なんとしてもフィリアと殿下の2人にはイベント通り出会ってもらう必要がある。私の萌えのために。

だけど、問題がある。


「レイン、魔法少女になる方法だけど………」

「お嬢様。昨夜、予備ペンダントを渡した時に説明したはずです。まさかもう忘れられたのですか?お嬢様の頭はミジンコですか?」

「覚えているわよ、失礼ね!それよりも本当にあの呪文であってるの!?」

「私が間違うはずないでしょう?お嬢様とは頭の出来が根本から違うんです」


執事の毒舌はひとまず置いておくとして。くっ………。やっぱりあのセリフを言わないとなのか。そりゃあ、私だって前世の幼少期は魔法少女に憧れた。昨夜だってノリノリで変身ポーズを決めましたとも。

でもよく考えたら私、前世は昭和Pー年生まれで今世の年齢も合わせたら結構な年齢だ。貴婦人通り越して熟女だ。見た目は少女、頭脳はオバサン。その名も転生悪役令嬢カリーナ!ってヤツだ。果たして熟女なオバサンがシラフで魔法少女になりきっていいものだろうか?もし誰かに見られたら………変態と間違われて通報されるんじゃなかろうか?そうなると私の第二の人生、国外追放の前に終わってしまうのでは?


私が自分の恥と『事案発生予備軍問題』で悶々と戦っていると………、



「きゃぁぁぁぁ!」



フィリアの叫び声が聞こえた。見るとフィリアがよじ登っていた木が、まるで意志でも持って暴れているかのように枝を右へ左へと揺さぶっている。暴れ狂う枝に子猫を胸に抱えたままのフィリアが必死につかまっているが、いかんせん枝の勢いが強すぎる。このままでは振り落とされるのも時間の問題だ。

しかも、ただ落ちるのでない。あの勢いで投げ出されるのだからフィリアも、小さな子猫もただではすまないだろう。


「お嬢様。バクウィルスはあの木の中です。魔法少女に変身し、戦ってバグウィルスを排除してください」

「わたくし戦いの心得なんてないわよ。どうやって戦えばいいの!?」

「大丈夫です。魔法少女になれば自動的に戦闘力が上がる仕様です。運動センス皆無の貧弱お嬢様でもワンパンでいけます」

「バグウィルスは?バグウィルスってどうやって排除するのよ?」

「必殺技です、お嬢様。魔法少女になると自動的に使えます。愚鈍なお嬢様でも問題なく扱えるレベルですのでご安心を」


(それって魔法少女役、私じゃなくても良くない?)


ってか、この執事は私を毎回ディスらないと死んでしまう病気でも患っているのだろうか。バグウィルスの前に自分の病気を治した方がいい。


そんな思いが湧き上がってきたけど、今は執事とくだらない言い合いをしている場合ではない。早くしないとフィリアと子猫が危険だ。


私がはレインから貰ったペンダントを神に祈るように胸の前で両手で握り締めた。昨日、ペンダントを渡された時にレインから教えられたアレをやるしかない。

正直、こんな頭が沸いたとしか思えないことしたくないが、今は緊急事態だ。私の恥1つ(もしかしたら通報もされて私の人生が終わるかもだけど)でドキプリヒロインのピンチを救い、乙女ゲームの世界を守れるなら安いものだ。


(見るがいい!これがヲタクの生き様よっ!)


私は右手と左手を合わせてハートの形を作り、腹の底から声を張り上げた。






♪ピンポンパンポーン♪


コレより変身シーンに入ります。

各自、脳内でイメージ補完してください。





↓↓↓変身シーンスタート↓↓↓



「 乙女のドキドキ恋心 」(←顔の左側でハート)




「 プリティハートで守ってみせる 」(←顔の右側でハート)




「 キラッとラブリー全力全開 」(←胸の前でハート)




「 ドキプリ☆ラブリーパワー!! 」(←ハートを前に突き出す)





ららら〜 らら〜♪ (←変身BGM)




らららら〜 ら〜ららら〜♪ (←ちょっとエッチな変身中)




らっらっら〜ら〜ら〜 ♪ (←変身完了)







「萌えたぎる孤高の魂 魔法少女アクヤ☆クレイジョー!」(←好きな決めポーズ)





「ゲームバグは絶対に許さないんだからっ!」(←好きな決めポーズ2)





カミーラ「燃え尽きたぜ…真っ白にな…」(←恥ずかしい変身シーンを全力でやりきった精神年齢P―歳)

レイン 「お嬢様、戦いはこれからです」(←恥ずかしい変身シーン考案者と思われる自称妖精)

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