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そのとき目の前に飛び出してきた人によく似た、いや、人の原型を保っているのかもわからない奇形の怪物であったが、俺がそれよりも驚愕したのはこの世界にどうにも似合わない・・・・
-----大型の黒いバイクであった。
瞬間、それの持ち主であろうライダースーツ姿の女性がまさしく「飛んできた」という表現が適正な様子でぶっ飛んできて、先ほどの怪物を蹴り飛ばした。
鳥山はというと、どうにも驚いていて声も出ないようであったし、俺もそんな感じだった。なによりもあの妙に文明的な乗り物がこの世界に存在していることが違和感でしかなく、とにかく変な感覚だった。
蹴り飛ばされた怪物は断末魔のごとく雄たけびを上げると、何とかしがみつくように右手で地面に傷をつけながら停止した。それからバイクを拾い上げると、女性に向かって投げつけるのだが、それをするりとかわす女性のさまは実に見事であり、惹きつけられる気がした。
女性が怪物の懐へともぐりこむ。体格差のありすぎる、というのも、まるでさながら象と人の対峙を目にしているような気分になるほどであったが、その巨体の腹部へと掌底をかまし、難なく吹き飛ばす彼女はその細い体のどこからそんな力を出しているのだろうか。
どうやら怪物はそろそろ力尽きたようで、青い血液をそこらじゅうにまき散らしい寝ころんだまま動かなくなった。
「どういうこと?」
ヘルメットをとった俺と同じくらいの年に見えるその女性は、我々が言うほうが自然な言葉をなぜか口にしながら美しい銀色の髪を頭を振って払いのけると、こちらに目線を向けてくる。
「あなたたち、どちらか魔術師かしら?そうは見えないけれど。」
何やら訳が分からないし、その上鳥山がお前、まほうつかいなのか?とか聞いてきたときにはどうしようかと思った。
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西暦678年 9月15日 城下町サンドルヴァン タバーリン刑務所でのこと
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