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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

天使と悪魔と僕の死二物語

作者: ザ・ディル


 悪魔は僕に囁く。

 

 「人生なんて損なことばかりだ。

 生きているだけで、死ぬより辛いぜ。

 なら死んだ方が多少なりともマシなんじゃないかって俺様常々思うわけよ」

 

 天使は僕に囁く。

 

 「駄目ですよ、悪魔さん。死んでもいいだなんて、言ってはいけません。

 人間は幸せになっていい権利があるのですから、それを行使して生きる価値観を見いだして生きなければなりません」

 

 「はっ! 破綻してんぜっ!

 そんな意見は個人の自由だ。個人の個人による個人のための自由だ。

 

 だからこそ――死ぬことさえ自由だ。

 

 それにな。結構難しいと思うぜ『死ぬな』、なんてコイツに言わせるのはよ。俺様、一応今まで億を超えるほどの人間を見てきたが……コイツは終わってるよ」

 

 コイツ、イコール僕。

 

 確かに、

 「僕は終わってるよ。お前の言うとおりだ、悪魔」

 

 「そりゃあそうだ。お前は終わってるぜ。それは天使でさえ理解していることだからな」

 

 「ま、待ってください! 私は一度も――」

 

 「心の中では思っても、口にはだせないなんて、天使って存在はつくづく面倒だぜ。悪魔よりも偏屈、悪魔より偏執。悪魔より頑固。

 

 それで、お前決まったか?

 

 お前は死ぬのか?」

 

 …………。

 僕が今、詰問が如く責められているのはもちろん理由がある。

 僕は――生きるか死ぬか、その権利を持っているからだ。

 

 僕は先ほど事故にあったらしい。

 重症……なのだという。

 

 しかしながら、僕はどうやら、異常なことに巻き込まれている。

 そして、無意識下では絶対不可能としか思えない選択を強制が如く突き付けられている。

 

 

 それは――生きるか死ぬか選択できること。

 

 

 今死ねば、苦痛はないと、悪魔は言う。

 今死ぬと、幸福なことは今後一切訪れないと、天使は言う。

 

 両極端。正反対。裏表。

 

 「聞いているんだぜ、俺様は。

 お前は死にたいか?」

 

 「……分からない」

 

 結論は未だに決まっていない。

 

 「おいおい、いい加減にしてくれよ

 ここまで、話を引っ張っておいて、どちらにも転ばないのは初めてだぜ?

 なぁ天使?」

 

 「……そうですね。

 早く、生きたいと口にしてほしいものですね」

 

 この二人、意味不明なところで同調する。

 正反対のようで、しかし似ている。

 存在は――近い。

 二人とも、強要している。

 生きろ、と。死ね、と。

 二人とも、それなりのロジカルに基づいて述べている。

 しかし内容は真反対。

 生きれば幸せと天使は言う。死ねば幸せと悪魔は言う。

 

 僕が思うにこの二人――どうもカタルシスを消化するために、人間という種族を弄んでいるようにしか見えない。

 

 「早く決めてほしいぜ、全くよぉ。

 死ぬ方が楽だぜ?

 なんたって存在が無くなれば、生きた心地も何もないからな。無っつうのは、思った以上に幸せと、改めて考えれば分かるだろ?」

 

 まぁ、一理ある。

 

 「生きた方がいいに決まってますよ。生きれば、それだけ幸福なことが待っている。たとえ艱難辛苦あろうとも、それらを乗り越えた幸せというのは素晴らしいことなんですよ。

 例えば、彼女ができて、愛を知る。慈愛を知る。純愛を知る。聖愛を知る。

 それらは死んで得られるものではなく、生きることでしか得られない幸福。

 だから、生きた方がいいことは明白だとは思いませんか?」

 

 一理ある。

 

 「だから生きて」

 「だから死ね」

 

 「…………」

 

 先ほどから、どうしてこうも二択だけを選ばなければいけないのかと、僕は不思議でならない。

 結局、悪魔も天使もやってることは人間と同じで、下らない。

 あまりにも下らない。人間の、悪い部分だけを抽出したものが人間以上の存在だっけか? そのように、僕ら人間は教わっているよな? ふざけてる。こんな奴ら、人間より上の存在なわけがない。

 ならば、僕が天使と悪魔の代わりをすればいい。天使と悪魔のオルタナティブに、なればいい。

 

 だから、僕は、

 

 「えっ?」

 

 手始めに天使を殺そうとする。

 この意味不明な世界観では、人間が受ける物理法則は無視される。

 だから、天使を殴る――それだけで天使はぶっ飛ぶ。

 僕は続けざま天使に攻撃を加えるためにテレポート。

 

 そして天使の頭に蹴りを入れる。ベクトル指数を上げて、よりぶっ飛ぶようにする。

 地面が無かったので生成した。

 天使は地面に激突して血がだらだらと流れた。

 僕は今度、テレポートで天使の目の前に。

 

 「どう……して……?」

 

 「分かりたければ、死ぬな」

 

 そう言いながら僕は、天使の眼球を抉り取る。

 僕はかつて人の眼球くらい取ったことはあるから別に気持ち悪いなんて思わなかったけど、

 「へー、人間と天使で眼球の感触、違うんだ」

 

 そして僕は眼球を食べる。

 

 「味は……まぁ不味いよね。それは人間とは変わらない」

 

 それにしても、眼球取り出したからと言って天使は泣きすぎだ。

 面倒だから、喉を切ろう。

 

 切った。僕の爪で天使の喉をかっ切った。

 

 まだ泣いてる。

 目障りだ。

 

 脳を破壊する。手で握り潰す。

 頑丈だったから、全ては破壊できなかった。

 押し潰して、原型を全て消せばいい。そして首も取ろう。

 ――ほら泣き止んだ――頭と首が丸々無くなったけど。

 

 死んで――しまったけど。

 悲しいのかなこの天使――いや、死んでいるから感情はないのか?

 それ言ったのって天使と悪魔、どちらだっけ?

 

 「てめぇ! ふざけんな!」

 

 悪魔が僕のもとに来て、そう言った。天使助けようとでもしたのか?

 天使を助けたかったのか?

 それなら、

 

 「君たち結局仲良しじゃん」

 

 「ふざけんなっ!」

 

 死神の鎌のようなものを取り出して、悪魔は僕に向かう。

 呆れた。

 天使のこの惨状を見ても、こっちに来るって相当馬鹿らしい。

 

 テレポートして、悪魔が持っている鎌を奪うために手を握り潰して、鎌で首を斬る。

 

 黙ってしまった。

 いや、死んだんだっけか?

 

 まぁ、いいや。

 これからは僕が天使と悪魔だ。

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