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「おまたせ」

作者: カミナ

夢を見ているとき、それが夢だと知らずにありもしない世界を体験する場合と、夢だと知っていて、存在しない世界だとわかっていても、ずっと見ていたい夢。この2種類を僕は21年間の人生で経験し、後者の夢を見た翌朝は、ベッドから起きる気力が無く、夢で見た出来事が現実だったらと、考えることが多かった。この日も夢を見た。ただこの日見た夢はいつも見る2種類に分類できるものではなく、実際の過去に経験した出来事が、頭の中で再生されるよるに突然進み始めた。夜の土手が目の前に現れた。それを見た瞬間すぐにいつ頃の出来事で、これから誰が来るかも理解し、途端にドキドキし始めていた。彼女と会うときは決まって夜の隅田川沿いで、当時中学生だった僕らにカフェやレストランに行くお金など持っていない為仕方なく、でも夜の土手の雰囲気が好きでいつもそこで会っていた。「今日もあいつの方が遅れてくるのか」と自然に考えている自分に驚き、同時に嬉しくもなり、悲しくもなった。あの頃の思い出が何故今更夢として蘇ってきたのかわからないが、僕は彼女の存在を完全に忘れたつもりでいた。もう2度と会わないはずの彼女がもうすぐ目の前に現れると思うと、心が乱れるのはどうしようもない。ポケットに入っている当時使っていた青いガラケーを開き時間を確認し、深呼吸をする。階段の上から誰かが降りてきていた。顔は見えないがポニーテールに結んだ長い髪が揺れていて、すぐに彼女だとわかった。体が熱く、喉が乾く。どんどん近づいてくる彼女と何を話そうか、なんと声をかければいいのか。もう6年も前に別れた彼女。大好きだった彼女。初めて自分から告白した彼女。初めてキスした彼女。階段を降り、僕の方へ歩いてくる。今の僕はどんな顔をしているのだろう。歩いてくる彼女を見つめながら考えていると声が聞こえた。懐かしい声だ。

「おまたせ」



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