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頼みごとがあるときは抽象的に言うのはやめましょう。大変なことになります。

サキョウside


 何となくは理解していた。

 貴族として公爵領に住む者達の平和を何よりも大切にしていた父、そんな父を影から支えていた母、父を尊敬し後を継ごうと努力していた兄、穏やかだった親類や領民達、全てが私と元婚約者の婚約破棄から狂いだした。

 今までなら公爵領の平和を第一に考えるならば、婚約破棄を受け入れるはずの父が頑なに婚約破棄を拒否し続けた。

今までなら父を止めるはずの母が父の行動に賛同した。

 今までなら義妹に恋人ができたのなら恋人の情報を集めるはずの兄は詳細な情報を集めることなく義妹を罵り始めた。

 領民同士が家族のような強い繋がりを持っていた領民達は幼馴染、義妹、元婚約者が勇者と婚約するという話を聞いた時の罵倒する声をあげた。

 婚約破棄から私の周りの人達は普段とは違う行動が目立った。

 いや違う、今ならはっきりとわかる。

 元々、私の故郷はおかしかったのだ、全てが。

 私の故郷での最大の違和感は犯罪(・・)が私が生活していた期間まったく起こらなかったということだ。

 現代の文明が発達した地球とはいえ、犯罪がまったく起こらない地域は存在しない。

 むしろ、犯罪はより複雑になり、増加しているのかもしれない。

 ただ、領民が万を超えている伯爵領でまったく犯罪が起こらないということはありえない。

 しかも、地域は辺境、盗賊団が出てもおかしくない地域なのだが出たという記憶がない。

 それに、故郷では派閥すらなかった。

 人が3人寄れば派閥ができると言われている。

 親族に父の弟である叔父、妹である他の家に嫁に行った叔母など多数いましたが、どの親族も派閥は作っていなかった。

 全ての人が父の政治に満足するはずがないはずなのに派閥ができない。

 ここまで思考が進むと故郷が何だったのかわかった。

 故郷は対立する要素が極力排除された私がスローライフを送るための箱庭だったのだと理解した。

 ホルティス神は私の願いをかなえるために箱庭を創るために領民達の思考を誘導し、箱庭の因果を歪め、土地を肥沃な大地に変えて作物の実りを約束し、盗賊などが侵入しないようにし、他にも様々な捜査して私がスローライフを送ることができるように創り上げたのだろう。

 無知は罪とはよく言ったものだが、知らないということは時に救いになる。

 私が安直に考えた願いによりとてもおぞましい現実を作り上げたが、知らなければ楽園だったのだろう。

 これではあの好き勝手していた転生者であるリーナのことを馬鹿にすることができない。

 自身はもっと最低なことをしているのだから。

 故郷で起きた悲劇の大元の原因は私が具体的にどのようなスローライフを送るのかをホルティス神に話さなかったためだ。

 そして、幼馴染、義妹、元婚約者はホルティス神が用意した供物だったのだろうが、ここがわからない。

 スローライフを送るのに複数の女性を囲む理由が私には見いだせないからだ。

 だから、私はホルティス神に聞くことにした。


「ホルティス様、質問をしてよろしいでしょうか」


「ああ、疑問には答えるぞ」


「なぜ、幼馴染と義妹を加えたハーレムを形成しようとしたのですか?」


「ああ、それのことか。簡単な話だなんだが、部下の神々と知り合いの神々、そして、自身の経験からなんだが、転生者はハーレムを求めるやつが多いからだ。しかも、ハーレムメンバーに幼馴染と義妹を加えてほしいと希望する奴がおおくてなぁ。気を利かせてつけてやったぞ」


 その言葉を聞いて、私は思わず天を仰いだ。

 確かに一定数そういった願いをする者がいることは予想していたが、自身がそういう願いを持っているように思われるとは思ってもみなかった。

 はっきり言って、余計なお世話だと言いたい気持ちを私は抑えた。

 私はハーレムを望むようなことはない。

 歴史好きな私としては江尾時代の大奥、オスマントルコのハーレムで如何に陰惨な事件が多発したのかも知っており、ハーレムを維持するのにどれだけ莫大な資産が必要なのかも知っている。

 また、中国の古代、秦の時代には二代目の皇帝になった胡亥が父親である始皇帝の妻と子供達を殺している。

 これは別に中国だけの話ではない。

 世界中で当たり前に起きた歴史の一ページだ。

 これが私の身に起きるとは確実には言えないが、起こらないとは言えない。

 こんなことを言い出したらキリがないのかもしれないのだが、知っている身としては確実に心労となるハーレムに希望を見出すことができない。


「まぁ、今ならお前にとって望ましい状況だってことはわかってるが、あの当時は計画を立てるのが楽しくてなぁ。やり過ぎたが、はっきり言ってばれることはないと思っていた」


 確かにセリティアフィス神が余計なことをしなければ、あの心地良い箱庭が崩れ去ろことはなく、心地良さの中で溺れてホルティス神の思惑道理にばれることはなかった思う。

 もっとも、ばれてしまえば意味はないが、ホルティス神としてはできる限りのことを善意で行っただけなのだろう。

 私としては今の現状を鑑みると間違いなく地獄の道を善意で舗装されたとしか思えないのは私とホルティス神にとって皮肉としか言えない結果となった。

 罪悪感で爆発しそうな心を静める必要が私にはあった。

 その相手として私は目の前の神に挑む必要に迫られていた。


「確かに私はハーレムに希望を見出していません。結婚するなら1人で十分です」


 その言葉に後ろから強い視線を感じましたが、今は気が付かないように装った。

 レティシアとリディアの間でどのような話がついているのかはわかりませんが、ここで反応すると自分の体にピンク色の鎖が絡みつきそうな気がするためだった。

 一度婚約破棄された身としては結婚には慎重になりたかった。


「その話はいいので少し胸を貸していただけますか?」


「ああ、いいぜ。ここから真っ直ぐ行ったところに岩場がある。そこでやるか」


「わかりました。向かいます」


 私が固定していた飛空艇の舵を解除して岩場に向かおうとした。


「ちょっと待って!どうして!そんなことになるんだ!」


「そうです!どこに戦う必要があるんですか!」


 レティシアとリディアの2人が止めようしてくれましたが、この戦いは私のとっては避けることができないものであり、ホルティス様にとっては筋を通すために必要な戦いなので2人の気持ちは嬉しかったが、互いにやめるわけにはいかなかった。 

 2人は私に傷ついてほしくないのだろう。

 その気持ちは純粋にうれしいのだが、私は今なれ合いを求めてはいない。

 私自身目の前の存在に勝つことができないであろうことはわかっている。

 だからこそ、私は意義を持つことができる。

 簡単に言ってしまえば、安直な願いを願ってしまった自身に痛みや苦しみなどの罰が欲しいのだ。   また、神々の行動による私自身が感じた怒りをぶつける相手も欲していた。

 両目標を達成する上で真の前のホルティス様ほどの存在はなく、そんな私の気持ちをホルティス様はくんでくれたのだろう。

 どちらの理由にしろ2人は納得しないであろうし、私にとっては自己満足の自傷行為でしかないのが何とも言えません。


「これはけじめの問題です。私にとっても、ホルティス様にとっても」


「だが!どう考えても勝ち目がない!」


「サキョウさんが傷つく必要なんてありません!」


「安心しな。この分霊ならばはかいすることはかのうだからなぁ」


 そういいながらホルティス様は右手の親指を自身に向けられた。


「し、しかし・・・・・・・・」


 それでも説得しようとリディアは言葉が出てこず、レティシアは悲しそうな顔をこちらにむけます。


「やらないと私は前に進めそうにありません。だから、わかってください」


 レティシアとリディアは顔を見合わせて互いにため息をついきました。

 私の頑固さにあきれられたのでしょう。 

 もっとも、頑固さについては3人共にいえるのでしょうが。


「仕方がない。ただし、死んで償うなんて絶対に許さないからな」                                                


「そうです。そんなことは絶対させません!」

          

 私は2人に礼を言ってから舵を握り、岩場に向けて飛空艇を移動させた。

 ホルティス様はさすがに星を破壊するほどの力を有する分霊を使用してくるようなことはないだろうが、それでもいったいどれほどの力を有するのか不安になる。

 だいたい、私自身がどれほどの力を有しているかもよくわかっていないのだ。

 昔、魔法の威力を確かめるために下級魔法を全力で放ったところ上級魔法並みの威力になり、それ以上確かめることができなかった。 

 それ以来、私は広範囲に影響が出るであろうモノは全力を出さないようにしてきました。

 ホルティス様の力次第では私のタガが外れることになりかねない。

 そのことに不安を感じ、私はホルティス様を見た。

 すると、ホルティス様は私の視線に気が付いたのか、私に視線を向けていった。


「お前が何を心配しているのか、だいたい、見当はついてる。それ程酷いことにはなりゃしねぇから安心しな。俺自身にを定めたルールをちゃんと守ってやるからなぁ」


「ルールてなんでしょうか」


「おっ、やっぱ気になるか。だが、それは戦う時のお楽しみにしてんだが、ヒントをやろう。このお前との戦いでは昔懐かしのRPGだ」


「はい?昔懐かしのRPGですか?」


「おう、そうだ。楽しみにしてな」


 実に楽しそうにしている言うホルティス様に色々な苦悩を抱える羽目になった私は怒りを感じました。


「わりぃなぁ。色々と真実を知ったお前がどんな行動をとるのか考えたんだが、戦いにはなるとふんで用意したんだ。最近は管理職ばかりでなぁつまらなかったんだが、こうやって計画することが楽しく楽しくてしかたねぇんだ。これも迷惑の一つとして勘弁してくれ」


 私の視線に気が付いたのか、ホルティス様は私にバツの悪そうな笑顔を向けて謝ってきました。

 その様子に私は大きなため息をつき前を見ると目的地の岩場に到着したようでした。

 どういう戦いになり、どのような決着になるのかはわかりませんが、自身へのケジメとホルティス様への心の整理をつけるために私は戦いに意識を向けた。


(しかし、RPGとはどういうことでしょうか?)

   

見ていただきありがとうございました。

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