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自身の行動の責任は自分にあります。ちゃんと責任を取りましょう。

 飛空挺内は惨劇の場となった。

 可憐な少女が豊満な女性のマウントポジションをとり、ひたすら顔面を殴り続け、拳についた返り血が少女と辺りを紅に染め上げる姿は一柱と2人にとって恐怖を掻き立てる光景だった。

事実、ホルティス神の顔色は青くなり、サキョウとリディアは親友と呼べるレティシアの豹変に互いに抱き合い恐怖に震えている。

 普段のレティシアならば、サキョウとリディアが抱き合っていれば阻止しようとしたはずだが、現在、彼女は セリィアフィス神を消滅させるために奮闘中なのでまったく気がついていない。

 彼女は先ほどの話から神を殺すには全てエネルギーを消耗させる必要があることに気が付いた。

 そのために、微笑を浮かべながら彼女は殴る、ひたすら、殴る。

 セリィアフィス神が何を言おうと気にせず殴る。

 最初、セリティアフィス神は「無礼者」や「天罰がくだるぞ」など悪態をついていたが、次第に「やめよ」という静止に変わり、それがすぐに「やめてください」という懇願に変わった。

 現在はもはや何も話さず、ただすすり泣くだけになっていた。

 それでも、レティシアは殴る。

 もはや、彼女は彼女自身が力尽きるか、外的要因がなければ殴り続ける事だろう。

 故にこれは必然だったのだろう。

 しばらくはレティシアの普段とは違う行動によって恐怖し思考が停止していたが、何とか精神を立て直し冷静になったサキョウは『看破』を使用しセリティアフィス神のエネルギー消費量に変化が見えなくなったことに気が付いたサキョウは舵を固定するとレティシアに近づき振り上げられた血塗られた右腕を優しく掴み、体を抱きしめて止めることに成功した。


「サキョウさん、止めないでください。必ず、消滅させて見せますから」


「それ以上はいくらやってもダメでしょう。もう、変化が見えませんから」


 そう、サキョウがいうと握りしめていた拳が緩み力なく下がった。

 リディアも近づき、時空魔法ディメンションゲートにより濡れたタオルでレティシアに付着した血液をふき取り始めた。

 その様子にサキョウはリディアにレティシアを任せて次に鋭い視線をホルティス神に向け言い放った。


「わかっていたのでしょう。なぜ止めなかったんですか」


「まぁな、そいつは腐っても認知度が高い神だからその嬢ちゃんにはまだ早い。だが、口で言ったぐらいでは止まらんのが感情だ。取りあえず、気が済むまでやらしてやるのが人情じゃねえか(もっとも、、マテリアル・オブ・ファンタジー内の武器タイプアーティファクトを使用すればできるんだが、どうやら渡してねぇみてぇだな、こいつ。確かに、強力なもんだが、低位もんなら問題ないと思うんだがなぁ)」


 そのホルティス神の言葉にも一理あるのでサキョウは一時矛を収めることにした。

  

「もっとも、オメェさんならそいつの新核を潰すことが可能なんだがなぁ」


 そう言って、ホルティス神はサキョウに視線を向けた。

 その視線に今まで全力を出したことのないサキョウはどれだけ化け物になったのか、不安に思いながら顔面が腫れ上がり無残になったセリティアフィス神を見ながらこの神を殺したらどれだけすっきりするのだろうかという気持ちを押し殺してホルティス神に今すぐ神殺しをしてレガリア神族と敵対関係になる気がない事を伝えた。


「この女神を殺したらレガリア神族はすぐにでも攻めてきそうなのでこの女神を殺すつもりはありません。戦うならば、出来る限りの準備を行ってから行いたい」


「お前ならそういうと思っていたが、今始めたとして勝つのはオメェだ」


「ホルティス様がおっしゃるのなら言われた通りなのでしょうが、その果てにせっかく持ち直す事が出来た王国が焼け野原になるところは見たくありません。ならば、準備を念入りに行わないといけないでしょう。だいたい、神を殺せるのは私だけなのならなおのこと慎重にしないといけません」


「クッククク、臆病なほど慎重だなぁ。だが、それでいい。お前のいう通りだ。クッククク、ヤツらの驚くさまが目に浮かぶぜ」


「そんなにお嫌いですか」


「ここの神共は大嫌いだ!とっとと間引きてぇ!いや、こいつらと似た奴らは全部消したい!なあ、テメーが此処を治める神にならねぇか。」


「私は中間管理になるのはまっぴらごめんです」


 そう言ってサキョウは青い顔をしてホルティス神から顔を背けた。

 サキョウとしては無駄に苦労しかなさそうなホルティス神の部下にはなりたくなかった。

 そんな会話をしていると、再び、セリティアフィス神が発光し、見るも無惨な状態だった顔が再生された。


「一度ならず二度もこのようなことをわたくしにするとは許しません。即刻、自害なさい」


 あれほどボコボコに殴られて「やめてほしい」懇願していたというのに先ほどと同じ自害命令に対してサキョウは心底呆れを抱きながら言った。


「ホルティス様、この女神には学習能力がないのですか?先ほどから状況判断がまったく出来ておらず、頭の痛いことしか言わないですが?」


 このサキョウの発言に対して、セリティアフィス神は憤怒の表情を浮かべ、レティシアとリディアは頷き、ホルティス神は頭を掻きながら言った。


「お山の大将でしかないこいつらはこんなもんだ。だいたい理解していやがたら文明を停滞なんかさせねぇよ。こいつらはただ威張り続けることができる環境を維持したいだけだ」


「典型的な老害ですか?なんならまとめて処分してはどうですか?」


「すげえー、魅力的な提案だがこちらにも色々ルールがある。この世界は別だが、ほかの世界まで手が出せねぇ。本当にやりてぇがなぁ」


 一柱と1人による自分をないがしろにする会話にセリティアフィス神は怒りのままに神力で光の槍を創り出し投げつけようとした瞬間、気が付いているのに動こうとしないホルティス神にため息をつきながらサキョウはスキル『神速』発動させアイテムコマンド起動すると『神刀叢雲』を取り出し、居合切りで容赦なく光の槍を生成し振りかぶっていた右腕を切り落とした。

 

「へっ・・・あ、あれ。どうして放てない。あれ腕が・・・・・・・ぎゃ~~~~~~~~!!!!!!!」


 素早く切られたことにより切られたことにより痛みに気が付かなかったセリティアフィス神は、光の槍を放つことができないことに不思議に思っていると遅れてきた痛みと噴き出す血に床に転がりもだえ苦しみ始めた。

 

「はぁ~~~。見苦しいぞ。愚か者が。攻撃しようとしたんだ。先に切られても仕方ねぇだろうが。だが、死なれるのはまだまずいか?とりあえず、これでいいか(それにしても、こいつの神核切り離されてやがる。もう右手は再生しねぇなこいつぁ)」


 ホルティス神はセリティアフィス神の背中を踏みしめて傷口を凍らし言った。


「おのれを!おのれ、!おのれ!よくもわたくしにこのような仕打ちを!許しません!断じて許しません!あなた達の住む国は聖獣と神聖ザハルート帝国の力!そして、レガリア神族の総力をもって、焼き尽くしてあげます!!何一つ残しません!!!!!!」


 その言葉にサキョウの影が激しく様々な形に変化する。


「ほぅ、聖獣とやらは我と戦えるのかや、我は楽しみじゃ」


 龍の形に変化した影が喜ばしそうに言う。


「フン、ドウセコケオドシヨ。ワレダッケデジュウブンダ。サァ、ワガ主ヨ!ワレニオーダーヲ」


 竜の形をした影が荒々しく声で言いサキョウの命令を待つ。


「ホッホホホホホホホ!国を崩すなら妾の出番じゃろう。妾が策をめぐらしゆるりと崩させてたもう」


 九本の尻尾を持つ狐の影が妖艶な空気をまとい言う。


「グッハッハッハッハッハ!戦じゃ!戦じゃ!楽しい戦じゃ!主よ!始めるぞ!」


 額に角が二本ある人影が祭りが始まるように言う。


「オレ、オサノテキヲクウ!!ヨウシャシナイ!」


 獣の影が獰猛な声威嚇するように言う。


「このような者たちに価値なし!我、疾走にて蹴散らすのみ」


 八本の足がある軍馬の影が宣告する。


「仕方がないの~~。少し面倒じゃが、守護ぐらいしようかの~~」


 亀の形に変化した影はめんどくさそうに言った。


「戦力ノ比較作業開始。ピィー・ピィ・ピィ・・・・解析終了。戦力ハコチラガ圧倒的。シカシ、物量ニオイテ不利、コノママデハコチラ側ノ被害甚大。デスガオマカセクダサイ。生産ヲ開始シスグニリョウガシテミセマス」


 四角に足のついた影が感情のこもらないきかい機械音で言う。


「フム、神聖な国と言っても不心得者などはいて捨てるほどいる。わたくしにお任せあれ。愚か者の結束など粉々にして見せましょう」


 山羊の頭をした悪魔のような影が宣言する。

 その様子にサキョウは頭痛に耐えるように片手を額にあて、今まで抑えていた力を開放し、強制力を発揮して影から漏れる力を抑え込む。


「落ち着いてください。貴方達が全力で暴れると私の心労が限界を迎えてしまいます」


 サキョウの言葉を最後に影から放たれる力が霧散した。

 異様な影の放つ力とサキョウ自身から放たれる力により恐慌状態となったセリティアフィス神がヒステリックを起こして言った。


「な、なんなのですか?いい加減になさい!わたくし達を超えるような者達など赦されることではありません!このグズ共が!クズ共が!!」


「オレが許可したからいいんだよ!もういい加減に黙れ!」


 ホルティス神はいい加減、精神的に限界がきたのか、セリティアフィス神を踏みつけたまま今まで抑え込んでいた神力を解き放った。

 その圧倒的な神力を感じ取り、セリティアフィス神は最悪な状況を想像させ顔色が真っ青になった。


「あ、あなた様はも、もしかしてじょ、上位神の方でありましょうか?」


「お前が考えているよりもずっと上位だがなぁ」


 セリティアフィス神はホルティス神の言葉を聞いた後、顔色が青を通り超え真っ白になった。


「こいつはよぉ、めんどくせぇ~、オレの頼みを二つ返事で聞いてくれた。スゲ~いいやつなんだが、どこかの誰かさんのせいで大変な目にあっちまった。それなのにロクでもないことしたやつは反省する気がまったくないときてやがる。しかも、こいつの事をレガリア神族は排除しようとしてやがる。さすがにオレの堪忍袋も切れちまった」


「し、しかし、そ、その男はわ、わたくし達の構築したち、秩序を破壊しようとしています。許されることではありません。それにこのような危険な力を所持するものを許す事が出来ません」


「オレが許可したんだからいいんだって言ってるだろう。それ以前にオレの通達を無視したのはお前だろうが!こいつの周りは干渉禁止だとま命じたはずだ!それを無視しやがったせいで何もかも無茶苦茶だ!どう落とし前つける気なんだ!こいつの為の褒美だったんだぞ!」  


「す、すぐに彼女達に与えた干渉を排除します。そ、そうすれば、貴方様の設定した因果に戻り、彼女達も彼の元に戻るはずです」


 その言葉に更にホルティス神の怒りのボルテージは上昇したが、レティシアとリディアには何かおかしいと違和感を与え、サキョウにはとてつもない悪寒を与えた。


「テメー!それはなにか!散々他の男に染め上げさせておいて!今更、こいつに返すってのか!オレをなめるのも大概にしておけよ!それ以前に女の話だけじゃねぇ!こいつがスローライフ送るはずだった土地が焼け野原になっちまったじゃねぇか!」


 更に不穏な言葉が出てきてサキョウは大体の事情が読めてきたのでホルティス神に冷めた目を向け始めた。


「そ、それならば、代替の土地を用意します。で、ですので、ど、どうかお許しを」


「オレが厳選に厳選を重ね選んだ土地よりいい場所があると思ってんのか!なめんなよ!」


 セリティアフィス神の胸倉をホルティス神は両手でつかみ倒れていたセリティアフィス神を持ち上げた。 

「だいたい、何でわざわざ通達の出していた奴らに手ぇ出したんだ!」 


「そ、それはその・・・・・・・」


(こりゃあ、何か隠してやがるなぁ。ちょっとアカシックレコードを閲覧するか)


 ホルティス神はセリティアフィス神が何を隠しているのかをアカシックレコードから調べだすと直ぐに探し出すことができたが、その理由に呆れしかもてなかった。


「何考えてやがる!たかだか、今代の勇者を自分の夫にするためだけにオレの因果律操作に手を出しやがったのか!!神の座に上がることができるように勇者の魂を強化するためにオレが与えた加護によって強化された生命力にあふれたエネルギーを供給させるためにこんなことしやがったのか!!!!」


 その言葉にセリティアフィス神はばれたことに驚愕の表情を見せる。


「この愚か者が!これが分霊でしかないといってもてめえらの情報ぐらい直ぐに手に入れるぐらいの権限ぐらいもってるにきまってるだろうが!!しかも、今回の魔王討伐にいつも以上に時間がかかってると思えば現地の勇者から力を奪って異世界から来た勇者に与えやがって何考えてやがる。本来なら2人の勇者が切磋琢磨することにより互いの技量を上げるためなはずだろうが!!!」


 サキョウはそういえば、勇者の称号を持ってるのに弱い奴がいたなと他人事に思いながら今までの会話で理解したことを整理して結論を出した答えが正解しているのかをホルティス神に聞くために近づいた。

 そして、持っていた『神刀叢雲』をぬ抜き、サキョウは迷うことなくホルティス神の首に当てた。


「聞きたいことがあります、ホルティス様」


「ああ、わかってるよ。これの始末がついたらじっくり付き合ってやるから待ってなぁ」


「わかりました」


サキョウはひとまず矛を納めることにして『神刀叢雲』を鞘に納めた。

その様子を見たセリティアフィス神は我が意を得たとばかりにサキョウの批判を始めた。


「ご覧下さい。このような野蛮な存在を許す必要はありません。わたくし達が断罪してみせます」


「いい加減にしやがれ!オレはもうテメーらの敵になったんだ!わかったか!!!」


セリティアフィス神はホルティス神の剣幕に再び黙った。


「まずは勇者は本来の形にする。現地の勇者である少女に全て返還し、彼女の努力にみやう成長のために異世界の勇者よりエネルギーを徴収する」


「お、お待ちください!そ、そのようなことをされれば魔王討伐に影響がでます!どうか再考を!」


「ダメに決まってるだろうが!」


「ですがこのままでは勇者リキトが・・・・・・」


 何となくセリティアフィス神の様子に違和感を覚えたホルティス神がさらにリキトの情報をアカシックレコードから引き出す。


「何とかなるだろう。もともと、あの勇者はスキルと相性だけの・・・・・・・。なんじゃこりゃ!おいおい、こいつ!もう死んでるはずじゃねぇか!向こうで死んでるやつを無理やり、現地の勇者の力を使って動かしてるじゃねぇか!テメーはどれだけ我儘をすればいいと思ってやがるんだ!」


 本来なら勇者は生命力のあふれた心正しいものを選ばないといけないのだが、セリティアフィス神は自分の趣味で選んだ。

 その弊害を抑えるために現地の勇者などにセリティアフィス神は背負わせていた。

 そのすべてをホルティス神は暴いた。

 このようなことを許すわけにいかないホルティス神はこの女神に責任を背負わせることにした。


「このままじゃ、確かに魔王討伐に影響が出るな。サキョウやるか?」


「こちらの準備が終わるまで時間を稼ぎたいのでやりたくありません」


 ホルティス神はサキョウが受けても受けなくてもどちらでもいいので尋ねたが、やはり、サキョウは拒否する。

 これはサキョウが受け入れて魔王を討伐するとレガリア神族のメンツを潰すことになるのでどちらでもよかったのだ。


「だったら、しかたねぇな」


 そうホルティス神は言って、いい笑顔をセリティアフィス神にむけていった。


「これから両勇者の魔族との戦闘での消耗はセリティアフィス、テメー持ちだ。わかったな。ついでにテメーの思い人に命も助けてやる。消費はテメー持ちだがなぁ」


「そんな・・・・・・」


「連れていけ」


 ホルティス神がそう言うと次元が割れて背広を着たホルティス神が現れセリティアフィス神をつれ連れて行った。


「待たせたな」


 ホルティス神はサキョウと向き合った。


「私の願いのせいですか、故郷が滅んだのは」


 2人の少女が心配しているなか、サキョウは単刀直入に聞いた。


「原因の一つだと言えるなぁ」




~スキル説明~


『神速』

 『忍者』のジョブをマスターした『忍神』のスキル。スキルを発動するとゲーム内では連続行動だが、転生した世界では自身のスピードを十倍になる。

読んでいただきありがとうございました。

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