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女神が言うことが理解できない。もっとも神様なんてこんなものなのでしょうか

 真っ黒な物体が激しく発光し、神力が逆巻き、一点に収束されていく。

 この顕現の方法が演出なのか、それとも、神力を無駄に消費するような顕現方法しかできないのかわからないが、その様子を一柱と3人は冷めた目で見ていた。

 普通の人々ならば畏怖によって頭をたれ跪いているだろう。聖職者なら感涙し喜ぶだろう。だが、此処にいるのは一般とは程遠い者達である。

 ホルティス神にとってはただ無様で演出力が皆無な顕現であり評価する価値がないものだった。

 サキョウ達にとってはあまりに弱々しい神力と制御法を知らないとしかいいようのない稚拙な制御をスキル看破により理解したことによりこの程度なのかという思いを抱いた。

 もっとも、サキョウ達はホルティス神が神力を奪い弱体化しているから参考にはならないと思い直し、レガリア神族の内情を見極める材料になればとセリティアフィスを見つめた。

 しばらくすると放出された神力が収まり、光の繭から光の女神らしく神々しい光をまとった床まで届きそうな長い金髪の豊満な美しい女性が現れた。

 もっとも、その美しい顔も忌々し気に歪んでいては台無しだったが。

 だが、サキョウにはそんなことを気にする余裕はなかった隣で見ているホルティス神の笑みがさらに鋭くなりセリティアフィス神の様子を見ていた。

 サキョウはそういえばなんかの本で笑顔とは威嚇の一つだと書かれていたなと精神が現実逃避することを求めたが、この場でホルティス神を止めることができるのは自分だけだと思いなおして涅槃に旅立とうとする精神を現世にとどまらせた。

 レティシアとリディアはそんな様子のサキョウに安堵していた。

 出るところは出て締まるところは締まっているセリティアフィス神の熟れた肉体は青い果実でしかない2人にとっては大いに劣等感をかきたてた。

 特に胸が薄く尽くしていた婚約者を奪われたリディアにとっては死活問題だった。

 もちろん、彼女達はサキョウのことは信じているが、どうしても不安を消すことができなかった。

 それがサキョウの様子で解消されたが喜ばしかった。


「どういうつもりですか!愚か者たちよ!わたくしにあのようなことしたばかりか!わたくしの神力を奪うとはなんとおぞましい存在なのでしょう!さっさとわたくしの神力を返し自害しなさい!さすれば死後わたくし自ら断罪し永遠の責め苦与えましょう!」


 その宣言にサキョウはあまりの状況判断の悪さに眩暈をを覚え、ホルティス神は予定通りである事を喜び、レティシアとリディアはこんなのを信仰していた過去を恥じた。

 セリティアフィス神は強者らしくいつも通り行動したのかもしれない。

 だが、この場では力を奪われた弱者でしかない。

 しかも、神力を奪うことができる存在までいるのだ。普通なら高圧的態度を取らずに怯えるだろう。

 賢き者なら冷静に情報を収集するだろう。だが、この女神は一柱と3人が予想した通り、もっとも、やってはいけない対応をした。

 全く勝負にならないがこの時点でホルティス神はレガリア神族に予定通り敵対すことを決めた。


 だが、ホルティス神にとって自害しろと言われることは意外なことだった。

 セリィアフィスを此処に連れて来るためにさらった際に彼女の神域にいた者達を半殺しにし、女神はじっくりと時間をかけて焼いたのだが、こえただろうと思っていたがその時は泣きわめいていたのにまったく堪えていなかった。

 これにはホルティス神も驚き呆れるしかなかった。


「なにを黙っているのですか!なるほど、恐れを抱いたようですね。後悔しても遅い。さっさと自害なさい。」


 一柱と3人はただ呆れていただけなのだが、セリティアフィス神は勝手なことを言い出し始めた。

 その様子にサキョウは眩暈が酷くなっていくのを感じさっさと話を終了しようとした。


「おや、あなたはわたくしの勇者に幼馴染、義妹、婚約者を奪われた情けない男ではありませんか」


 サキョウのことをセリティアフィス神は思い出したらしく馬鹿にし始めた。


「遠見で見ていましたが、婚約者を奪われたというのに抗議することもないとはそれでも男ですか!男として情けなすぎる!そこは勝てなくとも勇者リキトに挑むのが筋というものでしょう」


 確かに、サキョウは抗議することもなく、勇者に挑むこともなかった。

 それは事実なのだが、彼が社会経験をした大人だっただけだ。

 日本では恋愛経験がなかったが、日本という国は離婚することが世間では忌避されたものではなく、サキョウ自身携帯電話などがある日本でさえ遠距離恋愛の難しいとよく聞いていた。 

 そんな認識の持つ男に突然、婚約者が聖女に選ばれることにより遠距離恋愛するはめになった。

 もちろん、サキョウは多くの手紙や贈り物を送り、聖女に選ばれた婚約者の支えになろうとしたが、それらの努力は目の前の女神が手紙と贈り物を届かないように阻止した。

 結果的に婚約者は勇者との関係を望み、サキョウは遠い男より近くの頼れる男なのだろうと納得した。

 そのために、サキョウは気持ちの整理をする時間を必要としたとはいえ抗議などせずに婚約破棄を受け入れる覚悟をしたのだ。

 もっとも、この世界では一般的な考えではないのはサキョウも理解はしていたが、ここに貴族であることの認識の低さ、世界観の認識のずれ、そして、ホルティス神が行った余計なお世話により両親の暴走に繋がった。

 

「まったく、わたくしに八つ当たりをするは愚かなことをしましたね。わたくしより高位神から手出し無用とくぎを刺されていたのですが仕方ありません。どうせ、このような情けない男など処分しても気もされないでしょう。」


 その高位神であるホルティス神の前でとんでもないことをセリティアフィス神は言い始めた。

 もはや、サキョウは現実逃避を止めるすべはなかったが、セリティアフィス神のサキョウに対する身勝手な人生計画ほんの話は止まらなかった。


「せっかく、慈悲として早く亡くなってしまう勇者リキトの代わりに彼の子を育てさせるはずだったに本当に役に立たないですね」


(それは慈悲とは言わなねぇ)

(それは慈悲ではない)

(慈悲ではありません)


 ホルティス神、リディア、レティシアは似たようなことを思い。


(なんで私が見ず知らずの勇者の子供を育てないといけないんですか?何考えてるんですか?なんでこんなにわけわからないのが上にいるんですか?)


 事ここに至り、かなり混乱してはいたが、サキョウは現地神が役に立たないというホルティス神のいう意味を理解した。

 サキョウは神とはこんな存在だったのかと必死に様々な神話の神という存在について考え始めた。


(ギリシャ神話はダメだ。主神からしてロクな存在じゃない。無類の女好きだ。その妻は浮気する夫ではなく浮気相手はおろか子供にまで当たるヤンデレ。その弟の海神は他の神の神殿で地の女神とやる。その神殿の神はそのことを怒って海神には文句を言わず、地の女神を化物に変える。やっぱりロクなのがいない。インド神話はギリシャ神話に似たり寄ったりでロクなのがいない。ほかの神話は・・・・・・・・・・・・。

ロクなのがいない!)


 サキョウはこれからもホルティス神と付き合っていかなければならないことを考えて精神安定のために必死になりまともな神を探そうとするが、頭に浮かぶのは過激でマッチポンプな存在ばかりが浮かび絶望していた。

 そんなサキョウにセリティアフィス神は追撃をかけた。聞くに堪えない話を。


「あなたには荒れ果てた故郷を復興させ、その領地を勇者の子供に譲らせようとしていました。何十年かかるかわかりませんが、すべてを完遂すれば婚約者、幼馴染、義妹の心をあなたに戻して差し上げようと思っていました。もちろん、すべてを完遂するまでは如何なる女性を抱いたとしても子供ができるようにはしません」


 好き勝手言い続けるセリティアフィス神にホルティス神は我慢していた。

 サキョウはセリティアフィス神に怒りを覚えるよりもこれからも付き合わなければならないホルティス神のことを考えて達観の領域に達してしまっていた。様々な神話の神々に翻弄された人々のように自分はなるんだろうなとかんがえながら。

 リディアは頭痛で痛む頭を押さえながら貴族にもこんなのが居たのを思い出した。


(もっとも、今はそんな貴族はリグルベルト王国には現在存在しないのだが・・・・・・)


 リグルベルト王国を立て直す際にサキョウによって嵌められて一斉に処分されたからだ。

 リディアはこの当時、まだ公爵令嬢だったが大変な事件だったのは覚えており、さらにそれを主導していたのがサキョウだったことを思い出し頭痛がひどくなった。


 レティシアは冷静だった。怒りを感じていなかったのではない。怒りを感じすぎて180°周り逆に冷静ななったのだ。

 レティシアはこの時までサキョウとめぐり合わせてくれた神に感謝していた。

 彼女は男爵の妾の子として生まれた。もっとも、男爵はかのじょを認知せずに彼女と彼女の母を捨てたのだ。そんな彼女を彼女の母は必死になって育てた。

 だが、彼女が10歳になると無理がたたりなくなると男爵はかわいらしい容姿をした彼女を引き取ることにした。高位の貴族との交渉に使えるかもしれないと。

 彼女の生活はこのことで一変した。悪い方向に。今までは貧しいといっても母の愛情に満たされていたが、男爵に引き取られてからは正妻とこの子供にいじめれ使用人同然の暮らしになった。

 そんな過酷な日々が過ぎ、15歳になった時に縁談の話が持ち上がった。

 相手は60を過ぎる大貴族の後妻だった。

 彼女は嫌だったが、男爵には逆らえず学校に通うことができるようすることを条件として受け入れた。

 これで3年間は時間を稼げると喜んでいたが、とある転生者の暗躍で試験が不合格になり自殺を考えて街をさまよっている時にサキョウと出会った。サキョウの出会いは彼女の問題を解決させた。彼女は満たされた生活を手に入れた。

 彼女は今までは学ぶこと好きだったが、男爵によって制限されていた。それが無くなり好きなことを学ぶことができるようになった。今まで残飯を食べていたのに温かい美味しい食事が食べることができるようになった。多くのモノをくれたサキョウに感謝した。

 また、彼の境遇は彼女に共感を与えた。幸せな生活が突然崩れ、不幸になる部分が彼女に母を失ってからの生活に重なったからだ。

 だが、彼女は同時にサキョウに羨望を覚えた。自分と同じようにどん底に落ちながら這い上がった彼の努力に。確かに、あの状況を覆すことができる力を有していた。

 それでも、リグルベルト王国を立て直すなどどう考えても並大抵の努力ではできないことが彼女にはわかっていた。流されていた自分とは大違いだった。

 彼女は満たされた今を失うことを恐れている。母が死んだ時のようにどん底に落ちて這い上がる自信を持ち合わせていないからだ。だから、彼女はサキョウに依存しており、彼の存在を脅かす存在は許容できなくなっていた。

 そんな彼女から見た時、セリティアフィス神は間違いなく排除すべき敵でしかない。

 先ほどまでの話でレガリア神族は敵だと理解していたが、実際に確認したことにより自分たちにとってどうしようもない害悪でしかないことを知り殲滅すべきモノに彼女の中でなった。

 後はレティシアどう行動すればよいかを冷静に考えて、とりあえず、黙らせるために全身に闘気を循環させ始めた。

 彼女は複数のジョブをマスターした戦士である。『学者』を極めた『知聖』であり、『僧侶』を極めた『聖者』であり、最後に『格闘家』を極めた『拳神』である。

 現在の、彼女はあらゆる状況に対応できるようにジョブを外している。

 各ジョブのステータスアップは望めないが全てのアビリティとスキルを使用することができるようになるためだ。

 彼女はまずエアバックルを装備する。

 この装備は力が100を超えなければダメージを1しか与えることができない武器だが、それを超えると凶悪な一撃を放つことができる特殊な武器だ。

 さらに彼女は『拳神』のアビリティ『拳強化』により素手での攻撃力がアップし、スキルの『奥義』の『神拳極』を使用し、全身の闘気が右拳に集中させる。

 その拳を情け容赦もなく、神である敬意も持たずセリティアフィス神にはなった。


「まったく、役立たずな「もう聞くに堪えませから黙りましょうね」アギャ~~~~~~~~~~~!!!!!!!!」


 本来なら人の一撃など受けないはずのセリティアフィス神は油断しており、神力も低下し、レティシアが人の領域を超えていたこともありレティシアの拳は顔面に直撃して吹き飛ばした。

 その様子に慌ててホルティス神は壁を突き破らないように強化したが、突然のことにそれ以上のことはできず、サキョウとリディアはぼうぜんとするしかなかった。

 呆然とする一柱と2人をよそに儚げなイメージを持つレティシアはいい笑顔浮かべてマウントポジションとり、殴り始めた。




~スキル説明~


『看破』

 『学者』のジョブをマスターした『知聖』のスキル。スキル発動時、視界に入っていれば魔法によるパブ、デパブ、アビリティを解除する。


『奥義』

 『格闘家』のスキル『必殺技』が『拳神』になり強化されたモノ。能力が強化されている。


『必殺技』

 素手に特殊な技を繰り出す『格闘家』のスキル。


『神拳極』

 『拳神』の『奥義』の一つ。極限にまで高めた闘気を拳に収束し、放つ正拳突き。

読んでいただき、ありがとうございました。

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