ミッションクリア。だが、不穏な空気。
黒煙を上げる海上遺跡を空飛ぶ船が飛び立つ。船の名は高速飛空艇ストーム、嵐の名を持つ船でありとある転生者の所有物である。
持ち主の名はサキョウ・キサラギ。この世界で飛空艇を世に出し、様々な魔道科学という新しい技術を王国にもたらした。最も本人はとしては甚だ不本意なことだったが。
この男がこの世界に転生したのは複数の次元世界を管理する神様に性格に難がある転生者の監視とフォローする事を頼まれたためだ。
サキョウが依頼を受けたのはどんな願いも叶えてくれるという報酬の事もあったが、それ以前に神などという明らかな上位存在の不興を買いたくなかったからだ。
最も現在、あの時断っていれば良かったと後悔するほどの波瀾万丈の人生と過労死してしまいそうなほどの仕事を抱え四苦八苦しているからだ。
しかし、それも本人にとっては過去の話。このミッション遂行をもってお役御免となったからだ。
本人は舵を操作しながらすでに全ての役職を他人に押しつけてこれからのスローライフに夢を馳せていた。
そんなサキョウの耳に現在最も聞きたくない女の声が入ってきた。
「たく!もっと大切に助けなさいよ!」
問題を破滅一歩手前まで悪化させたクソ転生者である女が床に全身をすす塗れにして床に仰向けになりながらヒステリックに叫び声を上げる。
その叫び声に対して金髪の長い髪を後ろにまとめた女が顔に青筋を立て睨みつけながら反論する。
「助けもらっておいてなんて言い草だ!この女どこまで愚かなのだ!」
「あたしはヒロインなの!誰よりも優先的に助けてもらう必要があるの!それを一番最後にして!しかも、首根っこ持って運ぶなんてどういうつもりよ!」
「当たり前だろう!サキョウがお前のような汚物を触りたがるものか!だいたいここまで状況を悪化させておいて何がヒロインだ!レティシアに聖女を任せていればよかったのだ!なぁ!レティシア!」
話をライトグリーンの髪をセミロングまで伸ばした少女困った笑顔を浮かべ
「私、聖女になりたくないよ。縁起悪いから。」
本来、聖女になるべき少女は拒否した。
しかも、心の底から嫌そうに聖女という他のもの達が渇望する地位を。
最も事情を知るサキョウ達にとっては確かにと思ったが。
「はぁ~!何強がってるの!まったく良い子ちゃんわ!」
その言葉にレティシアはムッとして反論しようとしてそれはおきた。
突然、空間が割れて真っ黒な物体を引きずり特攻服を着た男が現れた。
それを見たサキョウ以外が突然の事に唖然とした瞬間、サキョウからとんでもない言葉がでた。
「ホルティス様、ご依頼完了しました。」
「すまねぇ~!こいつのせいでスローライフがダメになった!」
突然、真っ黒な物体をこちらに突き出しながら喋る男にそんなことを言われてサキョウは勿論の事他の3人も押し黙った。
ただ、サキョウだけは自分によくないことが起きたのだと自覚しながら。
(せめて詳しく説明してください、神様。)
現地の神が当てにならないからと複数の次元世界を管理する神様にとある転生者の監視とフォローを頼まれた過労死した男が成功報酬として望んだスローライフ。なんとか頼み事を果たしたが、スローライフは現地の女神のせいで駄目になった。
しかも、管理する神様に干渉するなと通達されていたのに干渉し、まったくフォローしなかったせいでその男は管理する神様の頼みをはたす為に有名になってしまいとてもスローライフを送れる状況ではなかった。
これは、約束を果たそうする神様と諦めて今生も過労死を覚悟した男の物語である。
初めてこのサイトに投稿させてもらう舞楽と申します。
よろしくお願いします。