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‘‘世界の終りを抱きしめたい。,,  作者: 花様月蝶
そうして世界は始まりを迎えるのであった。
4/6

‘‘戒とは何だ,,

 「戒___」

 無意識に呟いた。どこか懐かしい響きに光を失いかけた瞳がはっきりとしてきた。懐かしいと感じるのに憶えていない。どこかで聞いたのかと疑ったが、聞いた覚えがなかった。むしろあまり、外に出ないのでテレビの情報と言った方がいいのだろうか。だがニュースでもアニメでもドラマでも、戒なんて言っていない。ならば何故___。

 後ろで感じていた殺気がさらに鋭くなった気がした、ぎょっとする。おそるおそる後ろを振り向けば全貌が見えた。どす黒い胴体、牙がとても長く赤い液体を纏っていた、長い爪もあった。見ただけでとてつもない殺傷能力があることを察する。あれでやられていたら__生きてはいない。現にその長い爪を向けられている、これが絶体絶命ということであった。

 殺されてしまう。そんな状況であったにも関わらず榊の頭は『戒』で埋め尽くされていた。長い爪など忘れており、『戒』に没頭していた。

 戒。国語辞典では『いましめ』という意味であった、情報が頭を横切る。仏道を修める者の守るべきおきて。警告。その他の意味も横切る、つまりは引き締めるということ。何を引き締めるというのか、それよりも何故、赤ん坊の榊が『戒』を知っていたのか。謎が謎を呼ぶ、その謎が気になって仕方がない。

 結論が出た。

 「‥‥‥‥戒とは何なのだ?」


 「『戒』とは我らを咎めようとする善人である」

 どこからと聞こえた声、榊の質問に答えている。どこから聴こえてきたのだろうか、声は若い女の声、一体どこにいる。しかし質問の回答にさらに質問を重ねることにする。どこにいるとか、今はどうでもいい。

 「我らとは何だ」

 榊が気が付いたのは質問をした直後であった。恐怖が長い爪を榊に振り下ろしていた。時遅し、もうやられることは明白であった。

 

 ガギンッ。


 ……‥…‥‥。

 ……………‥‥衝撃が来ない…?

 未だに来ない衝撃に疑問を覚え、恐る恐る目を開く。そして目の前の光景に目を見開いた。

 自分の目の前に女が立っている、衣服は白いパーカーのみ。艶やかな黒髪が宙を漂っている、きっと衝撃波によるものであろう。

 恐怖の長い爪。それは榊には振りかぶっておらず、女に振りかぶっていた。いや、振りかぶっていなかった、防がれていたのだ。女の前にはられた神秘的な『盾』によって。華やかな装飾、黄金に輝きを放ち爪を防いでいた。

 「我の神眼しんがんは何もかもを見抜いてしまう、忌まわしき我が力である。だからお主の爪の弱点を見抜いた。お主の爪は真ん中が軟い、それはきっと先端に力を集中させている代償であろう。嗚呼あと、爪の付け根にもか。お主が爪に宿す膨大な力は鉄よりも固く強い。しかしその膨大な力を蓄えていない中心は軟く脆い。ぼろぼろと崩れていく。そこに榊から借り、ここの路地裏から借りた神気を集め、そこに神としての神気を持つ我を合わせると鉄よりも、お主の爪よりも固く強い盾が出来るわけだ。そこを中心に合わせれば…お主の爪はぼろぼろと崩れるわけだ」

 幼さを感じる声で冷静に詳細を語る女、そんな女に恐怖は憎しげに睨む。それに気が付いたのか女は苦笑を浮かべた。

 「本当はお前の、否、戒の致命傷の場所などはとうの昔から知っておる。しかし我は防御…つまり護ることしかできぬ。お前らを致命傷までの攻撃は出来ぬのだ。それに…」

 女は苦笑を、寂しそうな顔へと変え言葉を続けた。

 「戒は我らをとがめてくれる存在なのだ。我らが間違っていることを咎めようとしてくれている。しかし、殺すことしかしらぬ可哀想な存在。だから我らは応じるしか出来ぬのだ、正義のお主たちが悪い我らを止めることと知っている。だが…、分かっているだろう。それは無理なのだ、お主たちが殺すことしか知らぬから、我らは暴れ続けるのだ」

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