“勘が告げている,,
昔から勘が良かった、細かいことは分からなかったが単純なことは勘で分かってしまった。遺伝かと疑ったが、勘は遺伝で継がれるわけではないし、両親は勘が鋭くなかったので彼が生まれつき持っていると考えた。勘が鋭いのは大変だった。良かった点は話が『やりやすかった』。突っ込むのもボケるのも勘のお陰で得意だった。話の内容、状況によって使い分けた。周りからの評判も良かった。自然と人が寄ってきてその後友人となった。売れないながらもこうやって活動できるのは、友人の支えがあってこそだった。
……いやこれでは、俺が才能が無いみたいだ。俺は文才も構成もトップだ。まだ光が差さないだけだ。
と否定する、だが逃げる足は止めない。まだ追ってくる、しつこい奴だ。舌打ちをまた溢す。はっきり言って何に追われているか分からない。ただ、何か……恐ろしい『何か』が榊を追ってくるのだ。その“何か”が気になるのだが確認する内に追いつかれそうなので逃げることに決めた。追いつかれそうと分かるのは、やはり勘が告げていた。
息が荒い、足がもつれそうになる。だが堪えて逃げる。勘が告げている。
もし今ここで追いつかれたら待っているのは___死。
まだ、死にたくない。