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異世界に来た僕は器用貧乏で素早さ頼りな旅をする  作者: 紙風船


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第百六十六話 ウィンドドラゴン解体完了

 翌日、僕はダニエラを連れてギルドへと来ていた。昨日お願いしたウィンドドラゴンの解体から得た部位の精査と買い取りだ。

 今回も『換金』カウンターへと並ぶ。僕を見てビビる顔も見えたりしたが、絡んでこないのであれば何も言うことはない。僕は平和にこっそり生きたい系男子なのだ。


「なんだか静かギルドだな……」

「ん? そうだな。朝早いからじゃないか?」


 普通は朝こそ一番活気があるんだがな、とダニエラは呟くが、まぁギルドに寄るんじゃない?


「次の方どうぞ」

「はい」


 前の冒険者が捌けたので、カウンターの前へ進む。カウンターに居たのは昨日と同じ人だった。


「おはようございます、アサギ様」

「おはようございます。……えーっと」

「セーヌです。以後、よろしくお願いします」

「はい、此方こそ。こっちはダニエラです」

「よろしく」

「よろしくお願いします。では昨日の件ですが、無事に解体が完了し、部位分けをしてあるので確認の方をお願いします」

「分かりました」


 こういう事務的な手続きって滞りなく進むと気持ち良いよな……。ということでセーヌさんに付いていって重量物解体所へ足を運んだ。




 扉を開けると屋外になっていて、そこそこ広い。この重量物解体所は文字通り大型の魔物の解体を行う場所である。通常の解体所はそれこそ、大きくてオークくらいだ。2mくらいかな。モードレッドが2m半くらいあった気がする。それより大きい魔物は重量物扱いだ。レッサーワイバーンで4m程だ。翼を広げて、横にな。頭から尾の先まで入れれば6m位あったはずだ。半分くらい尾だが。


 そんな訳でウィンドドラゴンは重量物だ。横の最大が約10m。縦の最大が10mはあったそうだ。尾だけで6mはあるそうで、体に比べて翼が大きく感じるが、それこそがウィンドドラゴンの特徴らしい。ドラゴンなんて見たことないから、そう言われると『そうなんだ』と納得してしまう。やはり風ということで飛ぶことに長けているのだろうか? しなやかな尾というのも風っぽさと言われれば風っぽさを感じる。


「いや、尾だけで言えば水属性の竜種の方が長いらしいぞ。体の8割は尾だそうだ」


 とはダニエラ先生のお話だ。なるほどなぁ。


 まぁ今回はウィンドドラゴンなので、解体されたウィンドドラゴンを見てみよう。


 今回、僕は首を落とすことで絶命させた。これは解体する側に言わせれば、非常に状態が良いらしく、目立った傷もないので最高らしい。まぁボロボロの物を渡されてドヤ顔されてもうーん、って感じだわな。

 首の骨ごと寸断し、それが血抜きとなったので肉や内臓の状態も良かったそうだ。何よりも褒められたのは虚ろの鞄に収納したことで防げた劣化らしい。そのお陰で全ての保存状態が殺した直後のものとなったそうで、解体人曰く、『生きたまま解体している気分だった』とのこと。


 鱗や皮はギルド員総出で剥いだらしい。頭の先から尾の先まで丁寧に剥いだと聞いた時はお疲れ様と心の底から思った。

 翼の膜は高級な服や靴の素材になるらしい。爪や牙は装飾品だったり、武器になる。防具の飾りにも使われるらしいな。尾は何故か薬になるらしいが、どうやって使うのだろう……。

 内臓系もまた薬の素材になったり、魔道具の媒体になることもあるそうだ。目や心臓、肝臓は薬。ブレスの排出をするための器官は排気孔というそうで、その部分はそのまま武器に使われる。銃のようなものかな……僕が実際に見たブレスのままであれば、最早レーザー銃だが。


 他にも色々と使い途はあるらしい。聞けば覚えきれない程だろう。骨も使うのだから、まさに余すこと無くと言った具合か。

 僕達がもらうのはそのほんの一部分だけだ。ダニエラの服と防具。それと……お揃いの装飾品を作ろうと思ってる。ふふふ、ウィンドドラゴンの爪のネックレスだ。ダニエラのトラウマもだいぶ薄らいできたようだし、気に入ってもらえると思う。思う……。


「さて、アサギ様。此方が解体したウィンドドラゴンとなります。どうでしょうか?」

「どうと言われても僕は初心者なのでよく分からないですね」

「初心者に竜種は狩れないと思うのですが……」


 そう言われても、バラバラ死体を見ても思うところなんて『わぁ、綺麗にバラしたね』くらいだ。まったくもってサイコパスだ。


「アサギにはまだ分からないとは思うが、私に言わせれば見事の一言に尽きる。よくもまぁここまで丁寧に解体出来たものだ」

「分かりますか、ダニエラ様」


 セーヌさんとダニエラが頷き合う。どうせ僕は門外漢ですよ……。


「で、私達はこの素材の中から私の破れた服と防具の分だけ貰う。残りは換金だ。市場に流してくれて良い」

「畏まりました。ではそのように手配します。鱗、皮、翼膜、爪と牙をいくつか」

「あぁ、それでいい」

「今から回収させます」


 テキパキとセーヌさんが指示を出して解体人の方々が集めて回る。


「僕ちょっと見学してくるわ」

「ん? まぁなかなか見られるものじゃないしな。勉強になるだろう」


 ダニエラ先生は腕を組んでうんうん、と頷く。ちょっと失礼して解体人さんの傍へ行く。


「……あの、ちょっとすみません」

「ん? おぅ、竜狩りの兄ちゃんか。どしたィ?」

「実はちょっとお願いが……」


 セーヌさんとダニエラに背を向けて、素材のことを聞いてる風を装うと解体人さんが察してくれて肩を寄せてくれる。


「実はですね、彼女にちょっと贈り物をしたくて……」

「ほう? ほうほう?」

「でですね、少し素材をこっそり頂きたいんですよ」

「ほっほう? 兄ちゃんも隅に置けないねェ?」

「いや、まぁアハハ」

「おっしゃ、じゃあおっちゃんが持ってきてやるよ!」


 と、離れる解体人さんの後をついて行って、さも教わってる風を演出する。


「で、何を贈るんだィ?」

「首飾りですね。2人で下げれれば良いなって」

「なら鱗と牙だな! 爪をやりたいところだが、大きいし数が分かりやすいから無くなるとバレちまうからな……」


 と、おっちゃんは周りをさり気なく気にしながら尾の方の鱗と牙を数本分けてくれた。


「ありがとうございます、助かります」

「良いってことよ! 上手くやれよ!」


 おっちゃんが小声でサムズアップをするので頷いてサムズアップを返す。『ではこれで』と色々教えてもらいました風に頭を下げてこっそり素材をポケットに仕舞う。


「色々聞けたか?」


 ダニエラが戻ってきた僕を見て微笑みながら尋ねる。


「ん? まぁ、それなりにな」

「ふぅん?」


 なんだか微笑みに裏がありそうだが、僕は気付かない振りをした。



  □   □   □   □



 回収した素材の中に別口で革袋に貰った素材をこっそり混ぜて虚ろの鞄に仕舞う。セーヌさんが残った素材を競売に掛けてくれるそうなので、全て任せることにした。


「ウィンドドラゴンですからね。明日には全て捌けると思います」


 と、去り際教えてくれたので、ちゃんと明日、忘れずに来ることにしよう。


 ということで全て終わったので何をしようかとダニエラと相談した結果、まだ日も高いことだしクエストに行こうということになった。ダニエラの服と防具は明日、お金を受け取ってからということになった。クエストか……何だか久しぶりな気がする。


 2人並んでクエスト板の前に立つ。やっぱり朝一番のクエスト争奪戦後の所為か、それほど目ぼしいものは見つからない。


「ちょっと散歩がてらで良いんじゃないか?」

「それもそうだな。大金も手に入る予定があることだし」


 僕は一枚の受注表を手に取る。


「『アスク周辺の魔物調査』……これで良いんじゃないかな」

「ふむ……適当に狩れば何が居たか分かるということか。素材の量によって数も分かるし、役立つクエストだな」


 だが、如何せん地味なようで人気も無さそうだ。だけどこれくらいの方が気晴らしというか、手遊びに丁度良い。

 クエストも決まったので『クエスト発行』カウンターへ行く。時間も時間なので、待つこと無く発行してもらえた。滞りなく進むのは気持ちが良いね!


「さて、町の外はどっちだ?」

「あー……あぁ、あれだ。看板がある」


 『東門はこちら』と書かれた看板が電柱のような丸太の先からぶら下げられていた。やっぱり色んな所から人が来るから分かりやすくしないと迷っちゃうんだろうな。僕達みたいなのは特に。

 僕達は親切な看板を頼りに町の外へ向かう。さて、ギルドの資料室でチラ見したけれど、実際にはどんな魔物が居るのだろう。実に楽しみだ。

ヒョウモントカゲモドキを飼い始めました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公の装備は同じウィンドドラゴンとはいえ幼体だし新調しなくてもいいのか?
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