第百一話 アプデ、屋台、宿
「お待たせ致しました。ステータスカードのアップデートが完了しました」
「どうもです」
受け取ったステータスカードは見た感じ特に変わった所はない。ダニエラの物を渡して、自分のカードを裏返したりして見たが、何の変哲も無い、ただのカードだ。
「何が違うんですかね?」
「新式のカードには、以前の物より情報量が増えています。現在取得されているスキルのレベル、表示するまでも無かった基本的なスキル、二つ名が表示されます」
「スキルレベルですか!」
それは欲しかった情報だ。これは嬉しいな……!
「後ほど、確認の方をよろしくお願いします。短いですが以上で説明は終了となります」
「ありがとうございました」
「貴方の冒険に加護と運を」
そう締めくくり、説明は終わりとなったのでカウンターから離れる。ギルド内の端へ移動し、ダニエラと二人で早速ステータスの確認をすることにした。
「どうなってるんだろうな。ちょっとこれ久し振りに楽しみかも」
「私のスキルレベルか……気にしたこともないが、分かると言われると急に気になってきた」
「早速見ようぜ。ステータスオープン」
「ステータスオープン」
◇ ◇ ◇ ◇
名前:上社 朝霧
種族:人間
職業:冒険者(ランク:C)
二つ名:銀翆
LV:65
HP:632/632
MP:600/600
STR:308 VIT:305
AGI:684 DEX:331
INT:304 LUK:29
所持スキル:器用貧乏(-),森狼の脚(-),片手剣術(7/10),短剣術(6/10),槍術(2/10),弓術(2/10),大剣術(2/10),気配感知(6/10),夜目(3/10)
所持魔法:氷魔法(8/10),水魔法(7/10),火魔法(2/10)
受注クエスト:なし
パーティー契約:ダニエラ=ヴィルシルフ
装備一覧:防具
頭-なし
体-氷竜の軽鎧
腕-氷竜の小手
脚-氷竜の脛当て
足-黒瞬豹の革靴
武器-鎧の魔剣
-足切丸
-藍色の大剣
衣服-風竜のポンチョ
-風竜の腰布
-風竜のズボン
装飾-なし
◇ ◇ ◇ ◇
名前:ダニエラ=ヴィルシルフ
種族:白エルフ
職業:冒険者(ランク:B)
二つ名:白風
LV:79
HP:836/836
MP:751/751
STR:401 VIT:326
AGI:348 DEX:441
INT:427 LUK:31
所持スキル:新緑の眼(-),気配感知(8/10),片手剣術(8/10),弓術(8/10),短剣術(6/10),槍術(3/10)
所持魔法:風魔法(10/10),水魔法(6/10),土魔法(6/10)
受注クエスト:なし
パーティー契約:上社 朝霧
装備一覧:頭-森の民の面
体-森の民の軽鎧
腕-斑狼の小手
脚-灰鴉のレギンス
足-森蜥蜴の革靴
武器-死生樹の細剣
-死生樹の弓
装飾-森の民のケープ
-森の民のペンダント
◇ ◇ ◇ ◇
ふむふむふむふむ……なるほどなるほど……。
「情報量が一気に増えて目がチカチカするわ……」
「スキルレベルは10が最高なのか……」
さっきの説明以外にも変更点があることに驚いたが、その内容が装備名にルビが振ってある。今までなんとなく読んでいた文字がちゃんと読みやすくなっている。が、如何せんカード上の表記の為に目がチカチカする。多分、この世界の言葉だから他の人には読みやすいってだけだろう。だから、ざっと見た僕とダニエラの感想が食い違ってくる。ダニエラはルビを見ても何の感想も漏らさなかった。
スキルレベルに関してはMAXが10らしい。ユニークスキルはレベルの概念がないみたいで、《器用貧乏》はどこまで上げても《器用貧乏》なのである。《器用裕福》にはならない。
些細なスキルも表示されるとのことで、今まで使ってきた武器の熟練度も表記されるようになった。メインに使っていた片手剣はかなり上がっている。サブで使っていた短剣もだ。少し使った弓や槍はまだまだ低い。これからは大剣を上げていきたいので、せめて短剣並に使えるようにはなりたいな。
それくらいだろうか。確認出来ることは。
□ □ □ □
ステータスカードのアプデが終わった僕達はギルドを出て、大通りを歩く。ギルドの次は宿探しだ。今までは何だかんだですんなり見つけていたが、今回は縁らしい縁もなく、足で探していた。無料案内所もないし、見た限り武具屋が目立つ。あちこちからカンカンと金鎚の音と張りのある声が響いてくる。流石は冒険都市と言ったところか。
「なぁダニエラ」
「なんだアサギ」
「お腹空かない?」
「その言葉を待っていた」
歩き疲れ、流石に腹が減った。この町にはどうやら屋台街があるらしく、道行く人は軽食を手にしていた。これはチャンスだ。自炊する手間が省ける。料理スキル? ステータスカードに表記されないスキルなんぞに用はない。べ、別に悔しくなんかないんだからねっ!
「こっちから良い匂いがする」
「ダニエラが言うなら間違いないな」
「間違いはないが、馬鹿にされてる気がするな」
「褒めてるんだよ。ほら行こうぜ」
交差路を曲がり、大通りと変わらない道幅の通りに出ると、ダニエラの言う通り屋台が所狭しと並んでいた。様々な匂いが僕達の腹と鼻に突き刺さる。
「よし、じゃあ端から行くぞ」
「だな。向こう端まで見てから決めるか」
「何言ってるんだ? 端から買っていくんだ」
「お前は馬鹿野郎なのか?」
此奴は空腹になるとネジが転げ落ちるな……しっかり手を繋いで離れないようにしなければ財布がマッハでスッカラカンだ。
「これは旨そうだな」
「とりあえず肉だな」
「お、ねぇちゃん分かってるな? 1本銀貨5枚だ!」
「2本貰おう」
「まいどっ!」
早速買ってるよ。まぁこれ旨そうだしな。
「ありがとうな」
「うん?」
「え? だって、僕の分……」
「2本とも私のだが……そんなに食べたいのか。仕方ない奴め」
「ありがとよ!!」
やっぱ腹減ると此奴駄目だな! 残念美人め! くそ、旨いじゃねぇか……。
その後もやっぱりダニエラは残念美人で、僕は途中で買った果実水を飲みながら散策。夕暮れ頃に宿のことを思い出し、慌てて探すが見つからず、大通りの中央の噴水広場の大きな噴水の縁に腰掛けて途方にくれているとおじさんが話し掛けてきた。よく見ると最初に串焼きを買った屋台のおじさんだった。
「おぅ、さっきのカップルじゃねーか。どした、そんな暗い顔して」
「あぁ、いや……屋台に夢中で宿を探すのを忘れてて……」
「はぁ? なんだそりゃ……」
おじさんにも呆れられる始末だ。まったく情けない。
「そんならすぐに言えよ! うちは宿屋だ!」
「えっ!?」
ガバッとダニエラと僕はおじさんの肩を掴む。
「嘘じゃないよな?」
「勿論だとも」
「屋台のおじさんじゃなくて宿屋のおじさんなんだよな?」
「宿は息子が継いでんだ。俺が言えば一部屋くらいなら空くさ」
「マジか! 泊めてくれ! ください!」
「まかせろ!」
あぁ、神様……僕達は路地裏で寒い夜を過ごさなくて良いらしい。これも日頃の行いだな……特に何もしてないが。兎に角、僕達は苦労の末に宿を見つけることが出来た。
こうしてみると、縁というのはどこにあるか分からないものだな。どの町に言っても、縁に、人に救われている。
日々感謝することを忘れずに生きる。その大事な生きるコツを忘れなかった僕は、おじさんに感謝の言葉を告げ、3人で宿へと向かった。
久し振りのステータスです。ステータスはいつも見直し見直しやっていますが、『ここおかしいな?』と思うところがあったらすみません。




