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違うと思うけど乳母がこんな廊下に居たのもおかしい
目当てが縁談じゃないなら女は皆広間に居る筈だし、その為に来たんじゃないって言うなら尚更
「は?何自惚れてんの?私はせっかく来たから調理場にでも行って高価な調味料を戴こうかと…勿論どっかの王子の了解は得てるって言うつもりだけどね」
「あっそ、別にいいけど…取り合えず俺急ぐわ。乳母の説教なんてこれ以上聞きたくねーし」
嘘だな、調理場なんて反対方向だろーが
「可愛くないわねぇ」
「どっちがだよ……取り合えず有り難うな、金貨なら後で2人で持ってく!」
『大漁に!』とか『コイお姉さんだけ寄越しなさい!』とか叫んでたけど無視して広間に戻ると更に人は溢れてた
軽快な曲に合わせて踊る男女を2人を探す為に上手く掻き分けて中央付近に行く
「カイン王子!見つけましたわ!私と1曲…」
「煩ぇな…邪魔!!」
歩く度に掛けられる声に返事をするのも面倒だ
仮にも招待された身だし王子なのに最低な礼儀をしまくってるけど関係ない
やっぱり俺の面倒な性格はアイツに関して以外はあまり変わってないのかも知れない
「いねーんだけど…」
アリスが踊るなら必ず中央だ
でも2人が居ない
…まさかもう此処には居ないのか?
「王子様っ!私と1曲だけ!」
「いえ、私とよ!」
「身分違いの癖に偉そうな女ね!」
「………」
どこから沸いて来るのかそれとも着いてきてたのか面倒な女が増えてく
居ないなら此処に居るのか…と思ってると後ろから着てる服を引っ張られる感触がした
マジかよっ?
いくら何でも礼儀知らなすぎじゃね?
俺もだけどさ
「おいっ…!」
「………」
「え……」
「ちょっとっ!貴女!王子様の正装を引っ張ぱるなんていくら庶民の出でも許される事じゃないわよ?」
側に居た女が何か言って周りがそれに賛同してるけど俺は目の前の人物しか目に入ってなかったし、気付いたらその手を取ってた
「カイン王子様っ!その子!さっきアリス王子様と踊ってた…」
「煩い……だから?…行くぞ?」
よく見たらさっき俺を廊下まで追ってきたシンデレラって奴だ
さっさと位の高い相手見つければ良いのに
そいつこの反論なんて最初から聞くつもりないからコイの手を引っ張って俺は広間を急いで出て行く
何でアリスと一緒じゃないのか?
何で1人で居て、俺の事を見つけたのか?
そんな事考えながら強く手を握って元来た道を戻る
そんな俺達を広間の上からアリスが見てたのなんて気付かなかった
「良かったのですか?」
「ん?」
「あの…せっかく王子が心から求めた相手ですのに」
「別に諦めたわけじゃないよ、レラ」