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一瞬戸惑ったけど不思議と流れてくる曲に合わせて足が動く
嘘だと思ったけど…これが動く動く
まるで童話の『赤い靴』の女の子みたいに。
日頃の特訓の賜物ってやつなの?
「凄い凄い」
アリス王子がリードが上手いのか私は綺麗にターンも出来る
足も踏まないし止まらない
アリス王子と練習したのは少しだけだっけど…体はもうステップを覚えてる事に吃驚だ
『努力じゃどうしようもない事があるんだよ!』と昭和のホームドラマみたいな台詞を思春期には両親に吐いた時もあったけど…努力なくしては何とかだな。
でも…だから余計に感じる女の子達の視線と叫ぶ悲鳴
誰もが踊りたい王子様相手に踊ってる女を良く思う相手が居るわけがないし、その視線から逃れたくて私はダンスに集中した
でもこれが良くなかった…
「カイン取られちゃたけど良いの?」
「お前も煩い…おいっ、俺は誰とも踊らないからコイツに相手して貰え」
「おいおい口が悪いぞ。ごめんね?今はちょっと相手出来ないからまた今度」
明らかな不機嫌オーラのカインを横目に周りの女性達にウインクして宥める
はぁ~本当に好きなんだねぇ…彼女の事が
城に帰って来た時は1人だったから振られ たのかと思ったけど王妃と話しても意見は一致してた
『絶対に両想いなのに?』って。
カインは何も聞くなオーラが半端無かったし、戦争の後処理で忙しくてかまってあげれなかったけどセレナーデからの舞踏会の招待状がノクターンに届いた時からカインは不機嫌だったけどその反面早く行きたい顔をしてた。
ソワソワしてたりしてたから気持ちも焦ってて早く行きたかったんだろう
王国の戦争は終わった
俺自身もまだ夢なんじゃないか?と思う程終決は直ぐにやって来たから
きっと城の人間もまだ信じられないと思う。優勢になったからと言っても後数年は掛かるとアークとも話してた時だったから
長引く戦で何人もの兵士が亡くなっては機械の様に補充してはまた動かなくなるの繰返し
鍛えてた筈だけど身体的にも精神的にも疲れてた時
長い鉱山に先は見えなかったのに今、俺の目の前で綺麗な踊りを披露してる魔女が現れてから事態は急変した
姫探しに行ったカインが帰って来た時はどんな姫を連れて来たのか気になって直ぐに下まで会いに行くと…真っ黒なフードを持った怪しい奴を連れて来た
カインの奴、やっぱり期待を裏切らないと笑いそうになったけど女の子の顔は綺麗だったし黒い長い髪が印象的で…
だけど外見だけでカインが惚れるとは思わなくて暫く観察してるとまだカインの片想いってのも驚いたけど、どっかの姫でも無いしカインの独占欲は半端無いし…何より彼女は度胸が凄かった
いくら連れて来られたと言っても国の王妃相手に軍事の戦法を提案する女性を見たのは初めてだったから。
しかもその戦法は本当に役に立った
アークに聞かれて経緯を話すと『本当に預言の姫を連れてきたの?』といわれたけど否定しといた
カインは預言の姫じゃなくて…彼女がなんの力も無くても惹かれたって言ってたから。