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王妃の目の前で私に耳打ちしながら小声で会話するけど、この流れって何?
「正直、僕は本当の小石川さんの名前を言いたくないんだ」
『白雪』それが私の名前だ
強く『シンデレラ』に改名を希望したけど却下されまくった名前が本当の名前
「アリス王子…私は……」
「好きなんだ。本当に君だけをずっと……世界が違っても」
「………」
何、この壮大な告白
物語そのものみたいな……
「コイ姫ね?ちょっと変わってるけど直ぐに姫君って呼ばれちゃうわね!」
「そうですね、姫と言うよりは正妃ですね……僕は側室は誰も作らないから」
「…………」
完全に親子の会話が進んでる
こんなに近くに要るのに何も言えなくなってしまうのはあまりにも夢みたいだから?
私の理想の王子様
確かに若干黒いし計算高いけど純粋培養な一途な王子様
どっかの誰かさんみたいに面倒とか言わないし女の人なら誰でも良いとかじゃないし…それにさ年齢だって……
こんなに文句並べて、これが理想像だって言い訳しながら私はカインを見てるのに向こうは窓の外見ちゃってて
何よ
「…何で見てないのよ」
「コイ姫!ダンスは踊れるのかしら?」
「えっ?何か言いました?」
ヤバイっ、ちっとも聞いて無かったけど、私の呟きも誰も聞いて無かったみたいでセーフ
でもいきなりの王妃のドアップの迫力
くぅ…やっぱり綺麗ってお得だな
至近距離でも許されちゃう
「ダンスだよ、ほら舞踏会の話」
アリス王子が横で教えてくれるけど舞踏会は参加の前提なわけ?
「……小さい時にバレエは習ってたけど…ダンスはないかな」
シンデレラになりたかった私はイメージ的にバレエを習ってた時期がある
多分、白鳥の湖とかとゴッチャになってたのかも知れない
『姫になりたい』と言ってたから親は私がプリマドンナを目指してると思ってたみたいだが
そもそも舞踏会のダンスってワルツとか見た感じ凄く難しそう。
向こうの世界だと社交ダンスが有名だけどまだまだシニア世代の独壇場だもんね
社会人1年目のOLが通うにはかなりの情熱が無いと無理
それに成長と共に『シンデレラにはなれない』ってのも理解してたからそんな花嫁修行はやってない
「そうなんだ?だからいつも背筋が伸びてて綺麗な立ち方だったんだね」
「………」
「…ごめん、変な事言った?」
「違うけど…良く見てたんだなって」
一応、秘書課だから皆それなりに姿勢は良いと思うけど…
「ごめん…ストーカーみたいな発言したね…でも見てる事しか出来なくて…あ…やっぱりストーカーかな?」
「ふふっ…アリス王子がストーカーってなんか変なの」
思わず笑ってしまう。
だってメルヘンの国の王子様が自分を『ストーカー』だなんてさ
勿論、向こうの世界の知識だと解ってるけどやっぱりおかしい