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嬉しそうに頷くアリス王子が少し…ううん、かなり羨ましくなってしまう
「好きな人が出来たから」
「……」
「彼女は同じ会社の秘書課の小石川さん…貴女だ」
「……っ……」
頬笑む笑顔に胸が高鳴る
そりゃそうだでょ?
憧れまくってたシンデレラの王子様に好意があると間近で言われたんだもん
三宮有栖の時とは違う…あの時は『王子様ッポイ』だけだった
それくらい私は王子様しか見えてなかった
「でも振られちゃったけどね…でも振られた理由が引っ掛ってて…」
『ごめんなさい。私…シンデレラの王子様がタイプなので』
頭の中で思い出す言葉
「あれは…」
「僕はシンデレラって人は聞いた事有る程度で、自分は一応王子だなって…小石川さんがお伽話を好きな事は知ってるよ」
「え?なんで?」
「そんなの好きな人の事は知りたいでしょ?…確かに僕達のこの世界にに似た話が沢山書物として存続してたのは驚いたけどね…カインの事に似た話も読んだ、その時…小石川さんの名前を思い出して胸が痛くなった」
カインの物語は『白雪姫』
私の名前は小石川白雪だ。
好きな人の名前が物語に重なったら…そりゃ痛くなるよね。
幸い、私の日本には『王子様』って名前は存在もしなかったけど
「でも私は…」
「小石川さんの事はカインに聞いてたよ、名前が変だけど、下の名前は教えてないの?」
何だか焦る私にアリス王子様は優しく問い掛けて話を即してくれる
さっきまでアリス王子の方が慌てて言うとたのだけど、それが何だか今は有り難い。
「私は向こう…アリス王子で言う異世界の人間でこの世界の話を大体知ってる」
「物語好きだもんね?」
「…うん、だから自分の名前が白雪ってのはちょっと公にするのは躊躇ったの。だってちゃんと別に『白雪姫』は存在してるから」
「え?カインの相手は居るの?!」
あれ?
落ち着いてくれてると思ったのに今度は身を乗り出して聞いてくる王子に私も反射的に身体を後退させた
「あの……」
「ごめんね、取り乱した。てっきり小石川さんはカインの姫になる為に来てるかと思ってたから…カインも小石川さんが好きみたいだし」
「私は…」
どうしよう?
何て答えたら良いの?
取り合えず本物の白雪姫の話をして置いた方が良いよね?
「小石川さんはカインが好きなの?」
「あの…アリス王子、本物の白雪姫の話を先にしても良い?」
いくら質の良いソファでもこのままではコントの様に後ろにひっくり返っちゃうかも