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「あの、アリス王子様?」
「呼び方向こうのでも大丈夫ですよ?…と言っても多分小石川さんは僕の名前知らないですよね?」
どうやって呼ぼうか考え取り合えずフルネームと言うか王道の名前で呼ぶと笑ってお茶を飲む姿は凄く様になってる。
しかも私の変な呼び方をちっとも怒ってなさそう
「はい…ごめんなさい、名前もですが年齢も向こうだと一緒だけどこっちは違うかも知れないですよね?…もう何から話したら…どうやって話し掛けていいのか」
聞きたい事は沢山ある。
話の順序立てが見つからないんだよ
「えっと、同い年で合ってますよ?22です。それと敬語は無しでお願いします…向こうでも小石川さんは敬語じゃなったですよ?」
「それは…じゃあアリス王子も。それから向こうの名前も教えて下さい」
アリス王子は向こうでは三宮有栖と言う名前らしい。有栖なんて正にそのまんまだけど男の子の名前にしては珍しくきっと私も一度聞いたら覚えてただろう。
だが現実の男性に興味が無い私は『経理のイケメン』としか覚えて無かった。
きっと、梨子辺りが何度か名前を口にしてた筈なのに…
「じゃあ、向こうに行くようになったきっかけは縁談?」
「そう。ほら、22で僕が結婚してないってのはこっちでは結構由々しき事態なんです。小石川さんなら解ると思うけど」
確かに昔の話じゃないけどお伽の国の話は結婚とか早い
だから私はこの世界では行き遅れ扱いだ
アリス王子は昔から女性にあまり興味が無かったらしい。
カインみたいに政略結婚とか予言の姫とか無かったらしいけど、なんたって第1王子だ。
王妃の座を狙う女性が余計に恐くなったらしい。
近付いて来るのは自分を好きでは無く『王妃の座』だから
「僕はカインみたいに形だけでも女性と寝所を共にするとかも出来なくて…母上が余計に心配しちゃったんだ。異性に興味がないんじゃないかって」
「………」
アリス王子の当たり前の様な言葉にまた胸がチクチクする
『寝所』って…忘れてたけど、カインは色んな女性と
「小石川さん?」
「え?」
「気分悪くしちゃった?顔色悪いけど休んだ方が…ごめんね?寝所とか…僕…」
「ううん!でもアリス王子はしてないんだよね?」
あれ?私は何を確認してるんだ?
顔を真っ赤にするアリス王子を見れば一目瞭然なのに
浮気を確認する男かよっ!
「勿論っ!僕はそんな事は好きな人じゃないと……出来ないよ」
「………だよね」
「ごめん、こんな話からするべきじゃ無かったよね?この世界と向こうの世界の移動の話をまずしようね」
「う…うん!」
そうだ、今はそっちが大事だ
カインのハーレムの話にイチイチ傷付いてる場合じゃない!
アリス王子には弟がいるらしく、既に結婚してるらしい。
その相手のお姫様が『いつまでも王妃の座が空いてるのなら自分の夫が国を継いだらいいんじゃないか』と言い出したらしく、結婚話が本格的になって小規模な舞踏会やらを開くようになりアリス王子は段々疲れて来てた時、『結婚なんて決められた相手としなくて良い自由な世界に行きたい』と考えるようになったと言う。