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「母上…僕は何度も……」
窓辺から振り返った綺麗な顔は凄く整ってる
それになんだろう?
初めて会ったような気がしない
新手のナンパみたいな事を言いそうになって言葉を呑み込む
シンデレラの王子様を夢見過ぎて勝手に記憶をすり替え様としてたら恐ろしい女だ
それとも同じ黒髪が親近感なのかも
「アリス、起きてたんだな?」
「え?…あぁ…カイン。久し振りだね」
少し儚げだけど優しい笑み
「貴方が起きてない時も何度も足を運んでくれてたのよ?しかも今回は貴方のお相手まで連れて来てくれたのよ!」
「王妃様っ!」
王妃の発言に流石にちょっと声を張る
これでは私も芝居みたいになっちゃう
「何で…居るんです?」
アリス王子はさっきの表情とは変わって不思議そうに私をジッと見つめて尋ねてくるけど
どういう意味なの?
「あの…」
「僕の事覚えてないですよね?あぁ!でも本当に小石川さん?世界には似た人が3人居るって噂…と言うか異世界だから同じ顔の人間が居ても不思議じゃないのかな?」
今、なんて言ったの?
耳がおかしく無いなら聞こえたのは間違って無いよね?
アリス王子が私を『小石川さん』って…かなり早口で言われたけど
私の名前を知ってるのは岡本さんだけだ
同じ異世界から来た
「あら?アリス知ってる方なの?」
「アリス、コイツの事知ってるのか?」
あまりのアリス王子の変わり様に王妃は嬉しそうな顔をしたけど、カインは逆に王子の腕を掴む
私も気になってアリス王子は顔を紅くして俯いてしまう。
それを見た王妃は私を抱き締め言った
「あぁ!来てくれて有り難う!このままだったら大々的に舞踏会を開く予定だったのよ!」
「舞踏会…」
「えぇ、あまりにもアリスが伴侶となる姫を見つけないから身分等関係無しに国中の結婚してない適齢期は女性に招待状を出そうと爺やと相談してた所なのよ」
舞踏会がなんなのかは知ってる
そんなの本が擦りきれるくらい読んだもの
私の憧れのシーンだから
「でもそんな必要無いわね?この子小さい時から奥手でね?それに…好きな人を見ると話せなくなっちゃうのよ」
耳打ちされながらもアリス王子を私は見続ける
俯いてるから頭の天辺しか見えないけど…なんか思い出しそうだ
この人…アリス王子は私を知ってるのは確実だ
私が小石川白雪だって知ってるって事は…
『小石川さん!』
『はい?』
振り向くと何となく顔は覚えてる男性に声を掛けられた。
皆が騒いでた今年1番人気の経理の人だ